読書日記 『「関係の空気」「場の空気」』 冷泉彰彦 著
読書日記 『「関係の空気」「場の空気」』 冷泉彰彦 著
講談社現代新書
2006年6月10日 初版発行
2006年9月17日 読了
村上龍のメールマガジンの投稿者で有名な方です。
■「空気 読めよ!」
「空気 読めよ!」という非難というか,人を揶揄する言葉があります。
まあ,私も「空気の読めない奴」(=「世渡りの下手な奴」)がいることは認めます。(実は,私が一番そういう奴ですが・・・。昔から苦労してきました)
「関係の空気」というのは1対1の関係で醸し出される空気。
「場の空気」とは,3人以上の関係で作り出される空気。
『「空気」が猛威をふるう日本社会』という指摘は,「ナルjホド。」と思います。この「空気」には理屈も理論も,信条も通用しないのです。
■山本七平氏の「空気の研究」-空気で決まった沖縄への大和特攻作戦
この本が詳細に紹介されています。(私はお恥ずかしながら,この本を知りませんでした。アマゾンで注文しました)。
戦艦大和の沖縄特攻作戦。合理的に考えれば全く「愚かな軍事作戦」であり,多くの士官は皆その不合理性を知っている。でも,誰も「その場の空気」(その場が「参謀本部」であることが情けないが…)に抗することができなかった。それが「場の空気」と分かれば,すべて呑み込み,「無言実行」する男こそ「男らしい」と評価されるというエピソードが語られています。(正直に言うと,私もそのような「男」が好きです)。
日本人の集団が,このような「場の空気」が支配されるのは,右,左,中道の政治イデオロギーに関わりなく,また,組織の大小や,上流・下流問わず,特徴的ですよね。
■空気の読めない奴は,日本の組織ではつらい
高校で,部活,特に体育会系の奴って,この点では安心できる奴が多い。企業が,体育会系を評価するのは(もっとも,大学で体育会ってのは良く理解できないけど…),私も(今は)良く理解できます。「空気」の読めない奴は使いにくいよね。確かに…
「空気」の読めない奴は,「浮いた奴」とか,「水を差す奴」とかと言われる。(そういう人は,それはそれで,貴重な人材です。そういう人は「なーんちゃって」と言って(死語?),それを中和する「オマジナイ」をすることです。)
■日本的集団の特徴
日本の集団の特徴は,同調指向が強く,情緒的な一体感(心情的信念)を大切にします。「一生懸命」に「誠心誠意」に物事に取り組んでいることこそ,評価の基準なのです。結果をあまり問わない,優しい日本人なのです。(稲作水田を中心にした灌漑農耕社会だったからですかね?でも,中国大陸の人々は,そうじゃないですよね。もっとも他の国のことは留学もしたことがなく,知りませんが…。)
それが「場の空気」を大切にするということなんでしょうね。弁護士が依頼者を説得するときにも「空気」に気を配ります。弁証法は先ず「否」なのですが,日本的交渉は,先ず「おっしゃるとおりです」「なるほど。鋭いですね」から始めて,「でも…」から本論です。
この本では,この「空気」と「日本語」との関係を考察しています。業界用語の多用と「場の空気の関係」とか,面白そうな論点ではあります。でも,この点はまだ良く理解できません。
並行して,「論争 格差社会」(文春新書)を読みました(「行きの電車」と「帰りの電車」で違う新書を読むのが癖です)。この格差社会について論じるマス・メディアなんかにも,空気があるんだなあと思いました。この「論争 格差社会」の感想はまた別途,書きたいと思います。
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