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2006年9月28日 (木)

「労働者性」について

■論文について
ジュリスト 2006年10月1日号 【連載】「探求・労働法の現代的課題」の第12回)「労働者性について」に,論文を掲載しました。同一のテーマについて,学者,労働側弁護士,経営側弁護士がそれぞれの立場から論じるシリーズです。
http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/index.html
(このジュリストの表紙には論文題目は載っていませんが・・・。しばらくたったら,ブログに概要をアップします。)

労働者性については,労働法学者は皆川宏之氏,経営側弁護士は石嵜信憲氏,労働側からは私が,それぞれ「労働者性」について,「労働者性の判断基準」,「使用従属性基準についての評価」,「事業者と労働者の中間的な就業形態についての対応」,「労働契約法の適用対象」などの論点について論じています。以前に私が担当した新宿労基署長事件(映画カメラマン)事件も素材になっています。

■実際の労働者性をめぐる紛争
実際の紛争においては,残業代請求の成否,解雇権濫用法理の適用の有無,労災保険の適用の有無,団体交渉権の有無などの争いに関して,労働者性をどう判断するかが極めて重要な論点になります。

私は,現在,労働者性に関わる訴訟案件を4つ抱えています。経済のソフト化が進み,また非正規労働者が増えるなか,これから労働者性が問題となる紛争が多くなると思います。現在抱えている事件は,現代的雇用形態の問題から,いわゆる手間請け大工の労働者性のように伝統的な事件もあります。

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2006年9月25日 (月)

新聞各社の社説 予防訴訟東京地裁判決

東京地裁判決の評価で分けると次のとおりです。
幸いなことに,東京地裁判決支持が多数派です。

【東京地裁判決支持の社説】
  ①<毎日新聞> 国旗・国歌 「心の自由」を侵害するな 9.23
  ②<朝日新聞> 国旗・国歌 「強制は違憲」の重み 9.22
  ③<東京新聞> 国旗国歌判決 『押しつけ』への戒めだ 9.22
  ④<西日本新聞> やはり強制は行き過ぎだ 国旗国歌判決 9.23
  ⑤<中国新聞> 国旗国歌判決 「強制は違憲」明確に断 9.22
  ⑥<岐阜新聞> 処分や強制は行き過ぎ  9.22
  ⑦<新潟日報> 国旗国歌判決 「強制なし」が大原則だ 9.23
  ⑧<河北新報> 国旗国歌訴訟判決/「強制」はやはり行き過ぎだ9.23
  ⑨<信濃毎日新聞> 国旗・国歌 「強要しない」原点踏まえ9.23
  ⑩<愛媛新聞> 国旗国歌の強制 違憲判決の重みをかみしめよ9.23
  ⑪<徳島新聞> 国旗国歌判決 強制に「待った」掛けた9.23
  ⑫<高知新聞>【国旗国歌判決】教育に強制は要らない9.23
  ⑬<北海道新聞> 国旗国歌*違憲判決が鳴らす警鐘 9.23
  ⑭<琉球新報> 国旗国歌判決・異なる意見も認めるべき9.23
  ⑮<沖縄タイムス>[日の丸・君が代] 思想良心の自由は侵せぬ9.23
  ⑯<宮崎日々新聞> 国旗掲揚・国歌斉唱 権力による強制は行き過ぎだ9.23
  ⑰<熊本日々新聞> 射程  「教育再生論」にも影響する判決9.23
  ⑱<神戸新聞> 国旗国歌訴訟/「行き過ぎ」が指弾された9.23
  ⑲<中日新聞> 「押しつけ」への戒めだ .9.22
  ⑳<神奈川新聞> やはり「強制」はいけない 国旗国歌判決9.22

【東京地裁判決非難の社説】
  ①<読売新聞>[国旗・国歌訴訟]「認識も論理もおかしな地裁判決」9.22
  ②<産経新聞> 君が代訴訟 公教育が成り立たぬ判決 9.22
  ③<富山新聞><北國新聞> 国旗国歌訴訟判決 首をかしげざるを得ない06.9.23

【参考:英字紙】
<New York Times>2006/9/22  
<The Japan Times>2006/9/22

社説集をアップしたいところですが,著作権法を遵守します。ただし,裁判には証拠としては提出させてもらいます。

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2006年9月24日 (日)

「日の丸・君が代」予防訴訟東京地裁判決と米国憲法判例

■読売新聞等の曲解
9月21日の東京地裁判決ですが,読売新聞,産経新聞は判決の内容を良く吟味もしていない代物です。まるで,東京地裁が「日の丸・君が代」が「皇国思想や軍国主義思想の精神的支柱として用いられてきた」から,原告ら教職員らに起立し,斉唱する義務やピアノ伴奏の義務がないなどと判断したかのように非難しています。しかし,東京地裁の論理はまったく違います。
東京地裁は,国旗掲揚,国歌斉唱を行うことの意義は認めています。ただ,それを拒否する者を懲戒処分などにより強制することは,教育基本法10条1項違反であり,思想良心の自由(憲法19条)があるから,許されないとしているのです。

■多様な意見の尊重こそ憲法的価値
東京地裁は,憲法が「相反する世界観,主義,主張を持つ者に対する相互の理解を求めている(憲法13条等参照)」として,少数者の思想信条を尊重すべきとバランスをとったのです。少数者も,国旗掲揚,国歌斉唱に対して,積極的な妨害をしてはならない。他方で,多数者の整然として卒業式等や国旗国歌を尊重したいという側の多数者も,起立・斉唱の拒否,ピアノ伴奏拒否する少数者の存在を許容すべきと言っているのです。

次の米国の憲法判決と同様の判断枠組みです(裁判の証拠に出した土屋英雄教授の意見書から)。

バーネット事件判決(1943年連邦最高裁),ティンカー事件判決(1969年連邦最高裁)
著名なバーネット事件判決は,生徒に国旗宣誓拒否の権利を認めました。
また,ティンカー事件判決は「憲法上の権利を生徒も教師も校門で捨てはしない」と述べて,また「学校は全体主義の飛び地ではない」との有名な判示をしています。

ラッソー事件(米国連邦巡回控訴裁判所判決 1972年11月14日)
NYの公立高校の見習い教師(ラッソー)が,毎朝行われる星条旗に対する忠誠の誓いを行わなかったことを理由に免職(契約更新拒否)された事件で,連邦裁判所は次のように判断して,その免職を違法無効とした。
控訴裁判所は次のように判断しています。
①「国旗敬礼のプログラムは正当である」
②「ラッソーは彼女のクラスを混乱させなかったし,生徒が誓いを唱えるのを妨害もしていない」
③「我々(裁判官)はラッソーの考えを共有しない。しかし,修正第1条は我々の憲法の権利のうち最も重要なものと位置づけられているが故に,自分にとって不快なものであっても,保護を要求することを我々は認識しなければならない。」
④「強制される愛国主義は,強制される忠誠が忠誠の反対物であるのと同様に,偽りの愛国主義である
」,

■揶揄を一言
以上は,読売新聞が大好きな自由主義の盟主「米国」の憲法判例です。他方,読売や産経が大嫌いな「中国」や「韓国」では学校での国旗尊重を義務づけています(文科省のHP参照)。

ねじれ現象ですな。

産経さんは,国粋主義(鬼畜米英・中韓必罰)でぶっ飛んでいるから矛盾だとも思わないでしょうけど。「親米」の読売さんは,さすがに「ねじれ現象」とは思うのでしょうね。どう答えるのでしょうか。

■東京地裁判決の論理
判決要旨を次ぎにアップしておきます。「hinokimiyoushi06921.doc」をダウンロード
以下,長文失礼。

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2006年9月22日 (金)

国歌国旗の強制は違憲・違法 「勝訴!」

国歌斉唱義務不存在確認等請求訴訟 06年9月21日東京地裁判決

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(判決報告集会 星陵会館にて)

■都教委の10.23通達
東京都教育委員会は,2003年10月23日,都立高校の校長に対して卒業式・入学式での国旗掲揚の際に起立し,国歌を斉唱することを教師に命じる通達(10.23通達)を発令しました。その結果,それまで都立校の卒業式等では国旗が掲揚され,国歌が演奏されても,教師を含めた参加者には内心の自由が保障されていましたが,一律に起立と斉唱が強制されるようになりました。この強制を止めさせるため,401人の教職員が義務不存在と差し止め,慰謝料を求めて提訴したのが本件訴訟です(「日の丸・君が代」予防訴訟)。以前の私のブログでもアップしています。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/03/post_1ed6.html#trackback


■強制は,教育基本法10条違反,憲法19条違反
東京地裁民事第36部の難波孝一裁判長は,103号法廷(傍聴席約100人の大きな法廷)で25分にわたり判決要旨を読み上げました。原告らが求めていた請求を全面的に認めました。

■判決言い渡しの法廷の様子
難波孝一裁判長が主文を一つ一つ読み上げました。傍聴席からどよめきが起こり,思わず,弁護団はガッツポーズ。原告弁護団の若い女性弁護士は判決要旨を聞きながら泣き出していました。原告団の多くも涙を流し,傍聴席から男泣きの嗚咽も聞こえてきました。

正直なところ,「主文で勝てなくても,判決理由中に,教育基本法違反との指摘があって石原都知事と都教委の暴走に歯止めをかける手がかりがあばOK」と思っていました。これほどの完全勝訴判決を得るとは予想していませんでした。

弁護士として感無量です。難波裁判長ら3名の裁判官諸氏に敬意を表します。

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2006年9月18日 (月)

読書日記 『「関係の空気」「場の空気」』 冷泉彰彦 著

読書日記 『「関係の空気」「場の空気」』 冷泉彰彦 著
 講談社現代新書
  2006年6月10日 初版発行
 2006年9月17日 読了

村上龍のメールマガジンの投稿者で有名な方です。

■「空気 読めよ!」
「空気 読めよ!」という非難というか,人を揶揄する言葉があります。

まあ,私も「空気の読めない奴」(=「世渡りの下手な奴」)がいることは認めます。(実は,私が一番そういう奴ですが・・・。昔から苦労してきました)

「関係の空気」というのは1対1の関係で醸し出される空気。
「場の空気」とは,3人以上の関係で作り出される空気。

『「空気」が猛威をふるう日本社会』という指摘は,「ナルjホド。」と思います。この「空気」には理屈も理論も,信条も通用しないのです。

■山本七平氏の「空気の研究」-空気で決まった沖縄への大和特攻作戦
この本が詳細に紹介されています。(私はお恥ずかしながら,この本を知りませんでした。アマゾンで注文しました)。

戦艦大和の沖縄特攻作戦。合理的に考えれば全く「愚かな軍事作戦」であり,多くの士官は皆その不合理性を知っている。でも,誰も「その場の空気」(その場が「参謀本部」であることが情けないが…)に抗することができなかった。それが「場の空気」と分かれば,すべて呑み込み,「無言実行」する男こそ「男らしい」と評価されるというエピソードが語られています。(正直に言うと,私もそのような「男」が好きです)。

日本人の集団が,このような「場の空気」が支配されるのは,右,左,中道の政治イデオロギーに関わりなく,また,組織の大小や,上流・下流問わず,特徴的ですよね。

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2006年9月16日 (土)

映画「ゲド戦記」

もう1ヶ月前になりますが,期待のジブリのアニメーション映画の「ゲド戦記」を夏休みに家族で見てきました。(ジブリの新作が出たら子供と一緒に見に行くのが、わが家の取り決め?になっています。)

大学生の頃、原作の第1巻「影との戦い」を読んだことがあるだけ。そこで、アニメ映画を見る機会に、全巻購入し、3巻、4巻、5巻、そして外伝の「トンボ」を読んで準備万端。アニメ映画を見に行きました。

(あらすじ)
立派な父を持ち、厳しい母親にしつけられて自信がない王子アレン。そのアレンが父王を刺す。アレンは自分の影との葛藤を抱えて自立の旅に出る。旅の途中で、師(ゲド)と少女(テルー)に会う。紆余曲折のすえ、ゲドとテルーをたすけようと一人前の男に成長する。最後は、少女テルーがアレンとゲドを救う。アレンとテルーは男女の対等な関係をつくってめでたしめでたしの大団円。

いかにも普遍的な(かつ、宮崎駿好みの)少年の成長物語に仕上げました。

以下、ネタバレあり、ご注意を

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2006年9月12日 (火)

9/11 労政審労働条件分科会

9月11日午後5時から労働政策審議会労働条件分科会が開催されました。

厚労省事務方から「労働契約法制及び労働時間法制の今後の検討について(案)」ほかの資料が提出されました。従来議論されてきた各論点について,「検討を深めてはどうか」という内容です。

「rouseishin06911.pdf」をダウンロード

目新しいところは,総則部分で,「使用者は,労働者が安心して働くできるように配慮すること」という文章があります。安心とは,安全配慮のほか,いじめ,嫌がらせ,パワハラが含まれる広い概念ということです。

安全配慮義務を認めた著名な最高裁1975年判決は,(労働者が)「安んじて誠実に履行するためには」,(使用者が労働者に対して)「安全配慮義務を負い,これを尽くすことが必要不可欠」だと判示しています。「安んじて」とは「安心して」ということですね。

次回分科会は次の日時です。

平成18年9月19日(火)17時00分~19時00分

以上

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2006年9月10日 (日)

読書日記 「美しい国へ」安倍晋三著 文春新書

読書日記 「美しい国へ」安倍晋三著 文春新書
    2006年7月20日発行 文藝春秋
    2006年8月16日読了

次期自民党総裁,内閣総理大臣の安倍さんの本です。
帯には,格好いい渋い男ぶりのカラー写真です。ルックスにも自信満々。
話題になった本は,(どんなつまらなそうな本でも)すぐ衝動買いするのが私の癖です。

■改憲総裁,改憲内閣,「おぼっちゃま」
安倍氏の総裁選公約を見ると,「改憲」です。安倍内閣は改憲を宣言しています。
この本を読んで驚いたのは,第1章の「私の原点」で,70年安保の頃,安倍氏の通学している高校の教師は「安保廃棄」を訴え,クラスの友人もそんな雰囲気。自分が批判されているようで,安保擁護を主張したが,相手にしれもらえなかったことが強調されていることです。こんな「恨み節」から始まる。これが原点なんだそうです(ひょっとして,教育改革の原点もここ? サヨク教師を追い出したいのかな?)。

「お坊ちゃま」っぽいところが,どこかと言うと(下に続く)

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2006年9月 2日 (土)

読書日記「世界共和国」柄谷行人著 岩波新書

「世界共和国」  柄谷行人著 岩波新書
      2006年4月2日 発行
      2006年8月9日 読了

今は少数派になった「マルクス読みの社会哲学者」が私のような一般読者向けに書いた書物です。この本の「剰余価値論」と「資本への対抗」の論理を紹介します。懐かしの「労働価値説と剰余価値」を分かりやすくまとめています。その論理の延長から、生産点(個別企業)での「階級闘争」は無効となったとして、「資本への対抗」は消費者の「ボイコット」に鍵があると提案しています。

日本の労働者・労働運動は、「階級闘争」どころか、前近代的な「収奪」(サービス残業等の労基法違反)にさえ抵抗できていないように思いますが・・・。

それはさておき、今後は、企業の社会的責任(CSR)や消費者へのボイコット呼びかけは、確かに有効な対抗手段になりそうです。特に、インターネットを活用すれば、違法行為を行う企業への対抗する可能性を持っていると思います。ちなみに、最近、労働事件の和解の際に、インターネット上で会社批判をしないことを和解条項に入れるよう経営者が求めてくることが多くなっています。よほど嫌なのでしょうね。

同書の該当部分の展開は,と言います,・・・・(下の続きをどうぞ)

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