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2006年5月 1日 (月)

労働契約法 厚労省 急加速!

■いいよ登場 労働契約法・労働時間規制緩和

厚労省の労働政策審議会労働条件分科会にて、労働契約法制・労働時間法制の検討の視点が提示されました。今後、6月13日に素案が出され、7月18日に「中間とりまとめ」が発表される予定です。そして、秋に労働政策審議会の建議があり、来年2月に国会に上程される予定です。この問題については、以前、「解雇裁判の沙汰も金次第?」と題して、ブログにのせました。
              ↓
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2006/04/post_0238.html#more

いよいよ法案化に向けてスピードアップしています。
4月11日に発表された「検討の視点」では、相変わらず解雇の金銭解消制度があります。また、過半数労働組合と使用者が合意すれば、労働条件が悪く変更することができるような制度も提案されています。そして、自律的な働き方ができる労働者は、労基法の労働時間規制(残業代割増、週40時間規制)を適用除外とする新制度が提案されています。
   ↓
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/04/s0411-2a.html


■労働条件の不利益変更をしやすくする制度の導入

 労働条件は会社の作成する就業規則で詳細に定められます。今までは、既存の労働条件を会社が一方的に不利益に変更することは原則として許されませんでした。裁判所は、不利益の程度と変更の必要性、協議の経過、労働者への代替措置の有無程度などを総合的に考慮して合理的である場合にのみ、就業規則変更による労働条件の不利益変更を認めてきました。

 ところが、厚労省の検討の視点では、「過半数労働組合が使用者と合意をすれば、就業規則の変更は合理的であり、個々の労働者と使用者がその変更を合意したと推定する」ということにしようと言うのです。実際上、個々の労働者が反対しても、裁判上は推定を覆すことは実務上は不可能となります。

◎ 要するに、過半数労組が承諾すれば個々の労働者は同意したものとされてしまうということです。

 あなたは、あなたの会社の労働組合があなたの労働条件をまもってくれると信頼できますか?

 また、過半数労働組合がない場合には、労使委員会という従業員代表制度をつくってそこが合意すれば、やはり合理性と合意を推定しようとしています。
 労働者の代表委員が参加するだけでなく、人事部長や総務部長が参加する労使委員会で、労働者が会社の労働条件変更の提案を拒否できると、あなたは思いますか?

 この制度が導入されれば、過半数労組や労使委員会が承諾すれば、労働条件は不利益に変更されてしまい、労働者はあとで裁判で訴えても敗訴することになるでしょう。
 なぜ、このような制度がいま必要なのでしょう。おそらく、残業代を支払わなくても良い労働時間制度を導入するためには、こんな制度が経営者が必要だと思っているからでしょうね。
 
 検討されている労働契約法には、実は労働者にとって良い改善部分もあります(後述)。
 しかし、①解雇の金銭解消制度、②就業規則の変更の新ルール、③労働時間の新適用除外制度はまったく賛成できません。このような改悪部分を導入させないように、もっと批判の声をあげるべきだと思います。

 大マスコミももっと問題点を報道してもらいたいと思います。
    ↓
http://www.asahi.com/business/topics/TKY200604060101.html

■労働契約法の改良部分

「検討の視点」では次のような提案がされています。

(1) 整理解雇の4要素(人員削減の必要性、解雇の回避努力、解雇対象者の選定基準、解雇に至る手続)を法律に盛り込むこと。

(2)労働条件の変更の申入を拒否したことに、労働者が異議をとどめて承諾した場合には、解雇することはできないとすること。(社長が「賃金を減額する。承諾しなければ解雇する」というような乱暴な解雇はできなくなる)

(3)「有期労働契約が更新されて一定期間を超えて継続して働いている場合において、次の更新の際に期間の定めのない労働契約を締結するような方策をもうけること。

きっと経営側は大反対することでしょう。普通の働く人たちが声をあげなければ、削除されちゃいます。

■法案化のスケジュールは次のようなものです。

「06502.ppt」をダウンロード

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