「脱『格差社会』の構想」(世界6月号)と労働組合
■「世界」2006年6月号の「脱『格差社会』の構想」
世界6月号の2大特集は「憲法にとって『国』とは何か」と「脱『格差社会』の構想-労働・雇用政策はどうあるべきか」です。両特集とも読み応えがあります。(「世界」を電車の中で読んでいる人は、最近はとんと見かけませんが…)「労働・雇用政策」の特集についての感想を書いてみます。
■連合会長と全労連議長へのインタビュー
連合の高木剛会長は、「世界」誌上インタビューにて、「非正規雇用の待遇改善が急務」であると強調しています。高木連合会長は、UIゼンセン出身であり、民間中小企業の労働運動のリーダーです。司法制度改革審議会の委員として、また内閣司法制度改革推進本部労働検討会の委員として、労働審判制度の制定のために大きな役割を果たした方です。その高木会長がインタビューの中で、労働組合が「怒りのオーガナイズ」をすると宣言しています。今後の連合の活躍を是非、期待したいところです。
全労連の熊谷金道議長もインタビューを受けています。熊谷議長は「青年層の組織化を」を自ら実践すると宣言しています。小ぶりのナショナルセンターとはいえ、闘争力があります。
■丸子警報器事件と光洋シーリング事件
高木連合会長は、インタビューの中で二つの争議(「丸子警報器事件」と「光洋シーリング事件」)に触れています。この二つの事件は現代の労働問題を代表する労働事件です。
「丸子警報器事件」は、正社員と同じ仕事をしているのに、パートの女性が8割以下の賃金とされるのは違法だとした長野地裁上田支部の判決を勝ち取って解決しました。東京高裁で和解で解決しましたが、この事件を高裁で和解で解決させたという事実が原告女性たちを応援して争議をたたかった労働組合の見識と力量の高さを証明しています。
「光洋シーリング事件」は、改正派遣労働者法に基づいて派遣労働者が派遣先の会社に直接雇用を求めたところ会社から解雇されたという徳島県の事件で、現在でもたたかわれています。
両事件とも、全労連傘下のJMIU(全日本情報機器労働組合)の争議です。(ちなみに、私はJIMU弁護団のメンバーで、丸子警報器事件の弁護団にも参加していました。ぷち自慢…になるか?)
■ナショナルセンターの垣根にかかわりなく
そんな労組の系統(ナショナルセンター)を気にせず、多くのパート労働者や派遣労働者の利益になる争議のことを指摘する高木連合会長の姿勢に賛成です。
今まで、連合と全労連は、相互に無視・敵視する関係が続いてきました。でも、日本では、民間企業で労組に入っていないサラリーマン、OL,パート、契約社員、フリーター、アルバイト、派遣労働者は全体の84%と圧倒的多数です。もはや、既存の労働者の中での少数派でしかない労働組合がいがみあっている状況ではないでしょう。
■熊沢誠氏の提案-組合員100円出して組織化活動資金を
「世界」の座談会にて、熊沢誠氏が「650万人の連合組合員が月に100円出せば組織活動資金は年間78億円」になると言っています。全労連も「100万人の組合員が月に100円出せば」年間12億円となります。
両ナショナルセンターが、そのくらいの本気になって若手の非正規労働者の組織化と権利擁護の活動に取り組んで欲しいと思います。
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