フランスの「初期雇用契約」(CPE)と日本の「試行雇用契約」③(終わり)
フランスのCPEは街頭に繰り出した若者と労働者の勝利となりました。さすが王政を打ち倒し民主共和制を打ち立てた人々の末裔ですね。
ところで、一連のCPE関連報道で気になったのは、「解雇をしやすくすれば、企業は雇用(採用)を増加させる」という論理が正しいとされていたことです。朝日新聞や日経新聞は、「解雇しやすくすれば、企業は採用を増やす」ということをあたかも自明の理として報道していました。
確かに、「解雇ができないとしたら、新規採用に慎重になる」と言われれば、「それはそうかな…」と思わされます。でも、本当にそうなのでしょうか。・・・
■解雇が自由な時代はどうだったか?
日本でも欧州では第1次世界大戦以前はもちろん、第2次世界大戦前でも「解雇は自由」でした。米国は、現在でも「解雇は自由」です。米国では雇用は随意的契約とされ、使用者はいつでも自由に労働者を解雇できるのです。人種や性差別は禁止されていますが、それ以外は自由に解雇できます。
じゃあ第1次世界大戦前は、欧米、日本では失業者が少なくて、経済は順調に発展していたんでしょうか? とんでもありません。周期的な恐慌で大量失業と社会不安が当たり前の社会でした。そして、経済の行き詰まりの結果、世界大戦が二度も勃発しました。米国は今も昔も非自発的失業者が多い国です。
■儲からないから雇わない
解雇しやすくすれば、雇用が増加するという理屈はまったく証明されていないと思います。使用者は、雇用を増加すれば利益をあげることができると思えば、新に労働者を雇用します。将来、解雇できないことを心配して、みすみす利益をあげるチャンスを逃すような愚かな経営者はいるとは思えません。
雇用(採用)が増えないのは、技術革新や新しい成長産業がないから、雇用を増やす必要がないからでしょう。「解雇しやすくする」ことで雇用問題が解消できるとは到底思えません。政府がとるべき雇用対策は、産業政策や教育・訓練政策のはずです。
■厚労省労働政策審議会の動き
さて、日本の「試行雇用契約」がどうなっているか。厚労省労働政策審議会労働条件分科会は、4月11日に「労働契約法制及び労働時間法制に係る検討の視点」を発表しました。
↓
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2006/04/s0411-2a.html
この「検討の視点」からは「試行雇用契約」の用語はなくなりました。これはCPE騒ぎの反映かもしれませんね。また、「有期労働契約が更新されながら一定期間(又は一定回数)を超えて継続している場合において、労働者の請求があったときには、次の更新の際、期間の定めのない労働契約が締結されることとなるような方策が考えられないか。」という斬新な提言がされています。もし、これが実現すれば、有期契約から期間の定めのない労働契約(正社員)への道が法律が保障することになります。
ただし、「解雇の金銭解消制度」は維持されていますから、これが盛り込まれれば解雇しやすくする法律となってしまいます。今年、6月13日に素案が出て、7月18日に中間とりまとめが発表される予定です。
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