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2006年3月 6日 (月)

読書日記 「国家の品格」 藤原正彦 著

「国家の品格」 藤原正彦 著

     新潮新書   2005年11月20日発行
     2006年2月16日読了

奇書、怪著。あるいは、ブラックユーモアのきいたジョーク集。

新潮社から出された新書で、かつ書名が「国家の品格」ときますから、老ファシストの戦前へのノスタルジイ(2チャンネル風に言うと「右翼ノスタル爺」)かなと思って読みはじめましたが、中身はそれだけでもありません。著者は、世界的な数学者のようです。昭和18年生まれで、父親は新田次郎とのこと。以下、乱暴に要約して紹介します。

「私は米国に留学して、米国かぶれになり、帰国したときは論理を振り回し、改革を訴えてまわったが、浮いただけ。英国に留学すると同じアングロサクソンでも、論理を振り回す人は愚か者とされていた。そこで、論理だけでなく、情緒と形が大事と気づいた。

美しい論理の典型の共産主義は、結局、人類という種に適合しないということがソ連の崩壊でわかった。一方の論理の権化である米国資本主義も絶対間違っている。デリバティブという高度な数学を使ったものでもうけているが、あれは時限爆弾である。いつ何百兆円という損失を出す時限爆弾が破裂するのかわからない。市場原理主義は胡散臭いキリスト教原理主義の一派の薄汚い経済版にしかしぎない。

日本には、武士道精神という情緒と形があったが、近年、米国のような品格のない国に追従して、世界の物笑いになっている。戦前日本のアジアへの侵略行為は、武士道の観点からは卑怯千万な振る舞いだった。私は、弱い者いじめをするなと父からいつも武士道をたたき込まれたものだ。

愛国心とは、ナショナリズムであり、自分の国だけよければ他の国はどうでもよいという感情でよろしくない。しかし、祖国愛は、パトリオティズムであって、自分の国の伝統や歴史や習慣を誇りをもつことで、これは大切だ。

日本は、普通の国でなく、異常な国で良い。誇りをもって孤高を守れ。日本は、金銭至上主義と一線を画して、何十年不況が続こうと、武士道精神をとりもどして、国家の品格を上げろ。」

ちなみに、著者は奥さんからは「あなたの話の半分は誤りと勘違い。残り半分は誇張と大風呂敷よ」(著者筆)と喝破されているそうです。

この本はベストセラーだそうです。お暇な方は通勤の行き帰りに電車の中でお読み下さい。ただし、車内でにやにや笑ったり、吹き出さないようにご注意を。 

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