2014年8月19日 (火)

「悪いのは僕だけじゃない」 終戦の日に思ったこと

■終戦の日に思ったこと-自分の国が美しかったらいいよね。

インターネット上では、日本の中国戦争や太平洋戦争(第2次世界大戦)に関する様々な事件について、日本の正当性を主張する風潮が強まっている。「侵略戦争」という認識自体を「東京裁判史観」として否定する人もいます(戦後レジームの否定)。

従軍慰安婦問題については、「日本軍が一般女性を強制的に連行して慰安婦にしたという事実はないし、証拠もない。」と言う否定派が勢いづいています。朝日新聞が「日本軍の強制連行があった」と述べた吉田清治証言について誤りを認めたためです。

誰しも自分の国が過去に悪行をしたことを認めるのには抵抗があります。また、それを外国から責められると不快になります。私も、できれば、「日本人は清廉潔白で真面目な民族。日本は美しい。」と思いたいし、他人からそう言われれば良い気落ちになります。

しかし、だからといって、過去の悪行を客観的に直視せず、都合の悪い事実を否定することは、かえって自国の名誉を貶めることになります。また、外から見ると、それは一種の幼児的行いであり、滑稽にすら見えるでしょう。

高木惣吉海軍少将(終戦時の内閣副書記次長。今で言えば官房副長官)が、戦後次のように書いているそうです。

われわれ日本民族の毀誉さまざまな過去も、目を閉じて甘い感傷に耽るよりも、勇敢にその真実を省み批判することが今後の再建、歴的価値創造に役立つものと考えられるものであります。

■従軍慰安婦問題

慰安婦問題を否定する人々は、「現代的価値観では慰安所や慰安婦はもちろん悪だが、当時は売春は当たり前で、単なる商取引であった。他国の軍隊も売春制度を利用していたのであるから日本だけが責められるのは不当だ。」と主張しています。

彼ら・彼女ら否定派は、「日本軍が売春業者に委託して、日本軍用の慰安所を作らせ、慰安婦を集めさせて日本兵に提供させていた措置」自体は認めるようですが、「当時は公認されていた売春(公娼制度)の利用であって何ら問題はない」ということのようです。

しかし、この日本軍の「措置」自体が問題とされているのです。日本軍が直接的に女性を強制連行して慰安婦にしたかどうかだけが問題ではありません。

娼婦となる女性の多くは経済的に困窮するなどして、やむを得ず娼婦になった人です。日本でも、戦前、東北農村の若い娘が「身売り」されたという悲劇が広くありました。当時でも、「苦界に沈む」という言葉があったように、公娼宿や娼婦宿が道徳的に悪いこととされていたのではないでしょうか。

朝鮮や中国の場合、日本軍支配下の貧困や差別を考えれば、より過酷な状況にあったことは明らかでしょう。業者が困窮や無知につけ込むなども含めて不当な手段で女性を集めたことは想像に難くありません。「娼婦として働く契約」が「自由意思による契約」であるわけがありません。社会的に弱い立場の女性が、やむなく受諾させられたのです。

このように集められた朝鮮や中国などの女性を、日本軍は軍用の慰安所に確保して軍人の性欲処理のために「活用」していたわけです。

しかも、彼女たちは戦地近くまで連れて行かれ、1日数十人の兵隊を相手にさせられた。性行為を拒否することはできないし、また慰安所から脱出することもできないことは明らかです。この事態は「奴隷的拘束」にほかならないでしょう。報酬を受けていたからと言って、奴隷的拘束であること自体はかわりません。

このあたりの事実は、慰安婦問題が政治問題化する以前の1950年代の戦争映画(従軍経験のある監督たちがつくった「人間の條件」「兵隊やくざ」「独立愚連隊」等々)、水木しげる氏の体験に基づく戦争漫画で描かれています。

否定派の人たちが、「慰安婦は売春婦であり当時においては適法だった、」「他の外国軍隊も売春制度を利用していた」と声高に主張しても他者に共感されることはなく、かえって日本の名誉を傷つけ、戦前のように日本の国際的孤立を深めるだけです。否定派は、細かな枝葉末節の事実に拘泥して、大局的な判断をしようとしていないように思います(木を見て森を見ず)。

ちなみに、スマラン事件というオランダ人女性を日本軍が慰安婦にした強制売春事件があります。バタビア軍事裁判所で日本軍将校が有罪判決を受けています。否定派はこの軍事裁判さえ、復讐裁判だとか判決資料が公開されていないからとか言って認めようとしません。

結局、否定派の言い分は、「僕だけが悪いんじゃない」という子どものいいわけにしか聞こえないのです。

来年は日本敗戦70周年です。

日本の名誉を回復するためには、河野談話を再確認し、従軍慰安婦への謝罪の意思は変わらないこと、今後世界で戦時の性暴力の惨事が繰り返されないよう最大の努力をすることを表明するしかないと思います。

【追記】

この立場を明らかにして、初めて、他国(米国であろうと、韓国でろうと、どの国であろうと)の「戦時性暴力」を批判する道徳的な「資格」を日本は持つことが出来るのです。同じように、日本の侵略戦争の責任を認めて、はじめて米国の無差別空襲や原発投下に対して非難する資格を持つのです。

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2014年8月16日 (土)

読書日記「ノモンハン1939」スチュアート・D・ゴールドマン著・山岡由美訳

みすず書房 2013年12月発行 2014年8月読了

■著者

ゴールドマンはアメリカ人研究者。米国議会図書館の専門調査委員。現在はジョージタウン大学の教授。

ノモンハン事件は1939年5月に日本とソ連の国境紛争が大規模戦闘に発展した武力衝突。ロシアが、旧ソ連時代の公開した外交軍事資料をもとにして著者がヨーロッパと極東との関係から光をあてたものです。

「世界史は横に見ろ」と高校時代の世界史の教師が言っていたことを思い出しました。

■ノモンハン事件

日本では、ノモンハン事件は、関東軍が陸軍大本営の意向を無視して戦闘を拡大し、これに対して、ソ連の名将ジューコフが率いる戦車主体の機甲化師団に粉砕・蹂躙されて1万人を超える死者を出した戦闘として記憶されてきました。戦闘期間は1939年5月から同
年8月末まで。

関東軍を指揮した辻正信陸軍参謀は、この敗戦に何ら学ばず、その後も日露戦争当時の「大和魂」の白兵戦法に固執して、結局、ガダルカナルなど太平洋諸島での日本軍の悲惨な敗北につながっていった。関東軍のノモンハン現地指揮官の多くは、辻参謀らから責任
をとらされて自決させられている。

しかし、世界的に見れば、極東辺境地帯での、日本とソ連の単なる国境紛争にすぎない、と思われていた。

■ノモンハンは世界情勢に影響を与えた

著者は、公開された新資料に基づいて、次のように言います。

ノモンハン事件があったことが一つの要因として、スターリンは、1939年8月23日、ドイツとの「不可侵条約」を締結した。少なくとも、不可侵条約を締結するのに重要な影響を与えた。

ソ連(スターリン)は、ドイツと日本の2国を敵に回して攻められることは絶対に回避しなければならなかった。

1939年当時、ソ連は、英仏と軍事協力関係をつくって、ドイツに備えることも検討をしていた。しかし、社会主義・ソ連の「宿敵」資本主義の総本山・英国は、ドイツをソ連にけしかけるつもりではないかとの疑心暗鬼であった。

スターリンには、ぎりぎりまで英仏との反ファシズム同盟を結ぶか、ドイツとの同盟を結ぶかを決めかねていた。

ソ連が英仏と反ファシズム同盟を結べば、当然、ソ連はドイツと戦争となる。ドイツと防共協定を結んでいた日本が極東でソ連を攻めることになれば、ソ連は二正面戦線で戦わなければならなくなり不利となる。そして、現実にノモンハン事件で現実に日本が大規模な戦闘に出てきた。

ということで、スターリンが1939年8月に独ソ不可侵条約を締結した一つの要因、考慮要素として、ノモンハン事件があった。

■英仏とソ連の同盟の可能性について

この著者は、独ソ不可侵条約ではなく、英仏とソ連の反ファシズム同盟の可能性はあったとしているようです。これはビックリ。スターリンは、同じ独裁者ヒトラーと相性がよかったと思っていましたから。

著者は、公開された新資料に基づいて、ソ連は本気で英仏との同盟の可能性も探っていたと言います。要するに英仏とソ連の集団的自衛権ですが。

ソ連は、ナチスの台頭を見て、1935年7月に「反ファシズム人民戦線路線」に切り替えて、反帝国主義スローガンをトーンダウンさせた(対英仏宥和)。また、フランスもナチス台頭に不安を感じ、1935年5月に仏ソ相互援助条約を締結した。

1936年5月にフランスに人民戦線ブルム内閣が成立した。スペインでも人民戦線内閣が成立していた。

ところが、1936年7月、右派のフランコがスペイン共和政府に対して反乱を起こし、スペイン市民戦争が勃発した。

ソ連は、スペイン共和政府に本格的な軍事援助をしたが、英国やフランスは中立政策をとった。

英国は、反社会主義の立場から、スペイン共和政府を援助しないのは当然。ところが、フランスは反ファシズムを理念とする人民戦線内閣であったが、中立政策をとった。

スペイン共和政府は、1938年末には軍事的に壊滅。

それでも、ソ連は、1939年になっても、英国との外交交渉をすすめていた。並行して、ドイツとも交渉をしていた。同年2月の悪名高い「ミュンヘン会談」、そして、ノモンハン事件を挟んで、最後の最後、ソ連はドイツを選択した。

■歴史の「イフ」

フランスやイギリスが、スペイン共和政府に積極的に軍事援助をして、ナチス・イタリアのファシズム同盟に対抗していたらどうなったでしょう。

英仏ソを援助した共和派が勝利したら、ナチス・ドイツとファシスト・イタリアの勢いはそがれた。

もし共和政府が負けても、スペインで英仏と協力したソ連は、もはやドイツと不可侵条約を締結できない状況になるのではないでしょうか。

それとも、これをきっかけに、英仏ソと独伊との全面戦争に発展したかもしれません。そうなれば、日本陸軍(関東軍)は、千載一遇の機会だとして、ソ連に攻め込むでしょう。

そうなると、いかに「大和魂」日本でも、ソ連とたたかいながら、アメリカに参戦することはできないから、1941年12月の真珠湾攻撃はなかったかもしれない。

ちなみに、イギリス労働党やフランスの左翼党派は、反戦主義(平和的反ファシズム)から、スペイン共和政府への軍事援助に反対した。ヨーロッパ左翼が、「平和主義」を「敗北主義」と同義とするのは、このような歴史経過があるから。

■ノモンハン事件の戦闘自体の評価

新しく公開された資料に基づいて、日本軍は惨敗したが、ソ連軍も大きな損害と犠牲者を出したことが明らかにされています。

ソ連軍の名将ジューコフは、ノモンハンで初めて本格的な戦闘で指揮をとり、機甲師団と機械化歩兵を一体として運用する戦術を編み出した。

そのジューコフは、ソ連軍の英雄となり、その成果を評価されて、独ソ戦開始後、ヨーロッパ戦線に投入されて、ナチス・ドイツ軍を打ち破った。それに比べて、日本軍の現場戦闘指揮官は敗戦の責めを負わされて自決させられた者が多数。

そのジューコフが「最も厳しかった戦闘は何か」と聞かれて、「ノモンハン」(ソ連ではハルハ河戦争)と答えた。それほど日本との戦闘は激戦だったようだ。

別の本で読んだが、ジューコフがアメリカ人にドイツ軍と日本軍の評価を尋ねられたところ、次のように答えたそうだ。

日本軍 兵士・下級士官は優秀。司令官・参謀は無能。

ドイツ軍 兵士・下級士官は優秀。司令官・参謀も優秀。

忘れられた「ノモンハン事件」だが、結構、大きな意味をもっていたようです。

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2014年7月21日 (月)

集団的自衛権 今後の予想

集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。私は、これが憲法違反であり、立憲主義に反していると思っています。

しかし、個人的には日米安保条約は憲法9条違反だと思いますが、日米安保条約がないと、中国は尖閣諸島を奪うというのは冷徹な国際情勢の現実でしょう。これは南シナ海の南沙諸島に対する中国の動きを見れば明らかです。

今後、自衛隊法などの国内法制が改正されて、さて、この数年から10年以内に何が待っているでしょうか。

■朝鮮半島有事への自衛隊派遣
中国からも見放された北朝鮮。
米国は北朝鮮の核兵器を放置することは絶対しない。北朝鮮が弱体化した段階で、一番ありうるのは北朝鮮が自己崩壊する中で、軍事衝突が発生して、北朝鮮の核兵器を確保するために米国が軍事介入するでしょう。中国と話しをつけたうえで。
そのとき、在日米軍が朝鮮半島に攻撃に出て、自衛隊は後方支援を行うことになる。
これが、一番あり得る事態です。
中国、米国の全面戦争にはならない。中国・米国が合意した上で、親中国の北朝鮮新政権をでつくるでしょう。
日本は、これに一枚かまないと、アジアにおける国家的地位が危うくなる。そのための集団的自衛権だと、安部首相は考えているのでしょう。
■そうならないために
6カ国協議で、①北朝鮮に対する先制的な武力攻撃を行わないこと、②北朝鮮の核兵器廃棄、③日朝国交正常化(拉致問題の日朝合同調査委員会の設置)、④北朝鮮の国連加盟に向けての交渉開始をセットで協議をする。
北朝鮮の国連加盟で、人道援助を行う。数年もたてば、独裁政権は民主化していくでしょう。そうでならなければ北朝鮮政権は人民が蜂起して崩壊するでしょう。


■中東紛争への自衛隊派遣
イラク周辺の情勢は流動的です。でも、世界の油田地帯ですから、このまま米国が放置することはあり得ない。
スンニ派のアルカイダ系過激派が油田地帯を押さえることは米国は許さない。
クルド民族は、イスラエルの支援を受けて、悲願の独立国家樹立を目指す。
シーア派は、イランの支援を受けてシーア派の地域支配を広める。
ということで、イラクは分裂する公算が強い。イスラエルとすればイラクの分裂は自らの利益になる。
米国は放置できないが、自国だけで介入はしたくない、ヨーロッパと日本と韓国を引き込んで介入することになる。日本政府が断れるわけがない。
これに一枚加わらないと日本の未来がないと安部首相は思っているのでしょう。

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2014年7月10日 (木)

読書日記「街場の共同体論」内田樹著

潮出版
2014年6月20日発行
2014年7月1日読了

おなじみの内田樹氏のご本。著者の評論は、現代の特徴を鮮やかに切りとって示してくれる。最初に私が読んだのは、内田氏の現代教育についての著作でした。そこで次のようなことが指摘されていました。

昔は、子供の初めての社会参加は、家の手伝いを含めて「働く」=「労働」であった。

しかし、現代は子供の初めての社会参加は、何かを「買う」=「消費」である。

現代の学校教育は、学校での子供の「学び」とは、教育というサービスの「消費」となり、親も子も教師が対価に応じたサービスを提供しているかどうかを値踏みしている。

確かに、そのとおり。目から鱗が落ちる思いです。
モンスターペアレント現象や最近の若者の言動を見ると、確かにそう思います。消費者としてサービス提供者にはどんな要求しても、その資格をもっていると思っているようです。

この「街場の共同体」でも、相変わらず見事な視点で現代社会を切りとっています。特に次の二つの評論に共感しました。

■格差社会と階級社会

格差社会と階級社会はどう違うのか。私なりに要約すると、、、

「階級社会」では、それぞれの階級ごとに価値観が違っている。例えば、貴族階級、ブルジョア階級、プロレタリア階級は、それぞれ価値観が異なっている。それぞれが別々の価値観をプライドをもって保持している。

他方、「格差社会」とは、社会の構成員が単一の物差しで格付けされる社会である。年収とか学力とか数値かされる一定の物差しで、格付けられており、その順位の入れ替えは、(実態がどうであろうかはともかく)原理的に可能だという社会である。

日本では、この「物差し」が「年収」であり、子供まで「年収」で人間を値踏みする社会である。その「年収」の差は、フェアな競争によってもたらされると思っている。個々人の能力や努力によって、フェアに「年収」という結果が決定される。

このフェアな競争による「年収」によって人の価値が決まるというルールが一応、社会的に合意された社会、それが現代日本社会。

日本の支配的な言説は、内田氏の言うとおりです。

普通に苦労して働いている人は、「カネで買えないものもある」、「カネだけで幸せになれない」とか内心はブツブツ言っているのですが、負け犬の遠吠えのようで、大きな声で胸をはって言えない(雰囲気がある)。

このような社会は、共同体そのものが壊れてしまう。その社会にとっての「社会的共通資本」を、「損得はともかく」、いちおう整備する人がいなければ、その社会は成り立たない。というのが内田氏の論説です。

今の雇用等についての政策の動きは、この社会的共通資を、自己責任論のもと壊しかねない。

■父親の没落と母親の呪縛

人類は、世界中に広がり、それぞれ色々な社会集団を構成しています。

中には、「父親が息子に尊敬される(とされている)社会」もあれば、「夫婦仲が良い(とされている)社会」もある。

父親が本当に尊敬に値するほど偉い人物かどうか。夫婦が本当に相思相愛で愛し合っているかどうかは別として、当該社会では、そういう規範(ルール)が支配している。

だから父親のことを、仮に軽蔑して憎んでいても、一応、外面的には敬意を払っていた。これが戦前の日本の家父長制だった。

現代日本では、このように父親を尊敬すべきという社会的規範はほとんどなくなったか、極めて薄まった。

団塊の世代以後の世代(戦後民主主義世代)は、この家父長制を批判してきた。そうなると、これが父親となれば、影が薄くなるのは当然であり、家父長制が壊れるのは正しい結末。

なにしろ、戦前の家父長制は、戸主が息子や娘の結婚相手の決定権を有しており、妻は財産的に「無能力」としていたのですから。もちろん女性に投票権もないわけですから。

そして、今や、家族の中で、親に代わり、家族(子供)を統御し支配するのは母親となった。しかも、母親は、子供のことは自分が一番熟知していると思っている。母親は「あなたのことは、私が一番、よく分かっているの」って自信満々に言う。

これが子供にとっては呪縛となる。いわゆる「グレート・マザー」って奴です。

現代日本の家族は、母親が強い支配力を行使し、娘はそれに必死に抗い、息子は未成熟なまま加齢してゆく。

「家父長制の打倒」が戦後の課題であったが、今後は、母親の呪縛からの子供の自立が最大のテーマになる。文学や社会研究、教育も、この新たなテーマ(いわば「結婚しない長女、働かない長男」)が課題となる。

これもなるほどと思います。家父長制の復権とか、男の役割を強化するという逆戻りでは解決できない。その課題を克服するのも、たぶん母親の呪縛から必死に自らを解放した女性たちなのだそうです。

古いタイプの親は、息子や娘たちに「良き伴侶を得て、幸せな家庭をつくって欲しい」との素朴な願いを持っていますが、もはやそれを望むべくもない時代になっているのです。

今や家庭は、子供がたたかうべき「家父長」もおらず、子供たちが「母性愛」という呪縛にのみ込まれるイメージなのですね。

父親としては、こういう家族・社会になったことを認識した上で、母親の呪縛から子どもたちがどう自立していくのか、が新たな課題となったことを理解して、見守るしかないのでしょうね。

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2014年7月 6日 (日)

首相官邸HP・防衛省HPと集団的自衛権

■首相官邸のHPが面白い
集団的自衛権などについてQ&Aがのっています。
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/anzenhoshouhousei.html
●徴兵制について

【問10】 徴兵制が採用され、若者が戦地へと送られるのではないか?

【答】 全くの誤解です。例えば、憲法第18条で「何人も(中略)その意に反する苦役に服させられない」と定められているなど、徴兵制は憲法上認められません。

首相は、「徴兵制が奴隷的拘束に該当する」という解釈にたつのですね。
私は、徴兵制自体を奴隷的拘束という解釈にはたちません。ドイツや韓国の徴兵制が奴隷的拘束というのは常識に反しているように思います。そんなことを言ったら、懲役刑も奴隷的拘束ということになりかねない。徴兵制は、憲法9条に違反する余地があるだけでしょう。もっとも、この解釈も将来、閣議決定で変えるのは簡単でしょうけどね。
●石油のために、自衛隊は海外に派遣される。

【問15】 国民生活上、石油の供給は必要不可欠ではないか?

【答】 石油なしで国民生活は成り立たないのが現実です。石油以外のエネルギー利用を進める一方で、普段から産油国外交や国際協調に全力を尽くします。

【問16】 日本は石油のために戦争するようになるのではないか?

【答】 憲法上許されるのは、あくまでも我が国の存立を全うし、国民の命と平和な暮らしを守るための必要最小限の自衛の措置だけです。

上記二つの質問と答えの意味するところは?
要するに、石油が輸入されない場合には、国民生活が成り立たないから、石油のために自衛隊を派遣すると書いてある、としか読めない。ホルムズ海峡の機雷掃海ですね。
■防衛省のHP 憲法と自衛権
http://www.mod.go.jp/j/approach/agenda/seisaku/kihon02.html



(2)自衛権発動の要件
 憲法第9条の下において認められる自衛権の発動としての武力の行使については、政府は、従来から、
①わが国に対する急迫不正の侵害があること
②この場合にこれを排除するために他に適当な手段がないこと
③必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと
という三要件に該当する場合に限られると解しています。


(4)集団的自衛権
 国際法上、国家は、集団的自衛権、すなわち、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利を有しているとされています。わが国が、国際法上、このような集団的自衛権を有していることは、主権国家である以上当然です。しかしながら、憲法第9条の下において許容されている自衛権の行使は、わが国を防衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであり、他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とする集団的自衛権の行使は、これを超えるものであって、憲法上許されないと考えています。

閣議決定により解釈が変更されても、自衛隊法は変わっていないので、上記HPの防衛省の見解を変更すると、自衛隊法3条1項、2項及び同76条に反することになります。

憲法、法律、閣議決定の効力の優先関係は次のとおりです。
 憲法 > 法律 > 閣議決定
閣議決定で変更したとはいえ、国会で自衛隊法を改正しない限り、自衛隊は集団的自衛権行使の出動はできませんから。
では、防衛省は、いつこのHPの記載を、「集団的自衛権も憲法上許される」と変更するのでしょうか。
それは自衛隊法が国会で改正されてからでないと困難なのでしょう。もっとも、この憲法と自衛権のHP全体を削除するのかもしれませんが。
ときどき、この防衛省のHPを見てみましょう。

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2014年7月 4日 (金)

解雇金銭解決導入に向けての産業競争力会議・法務省・厚労省、裁判所の気になる動き

解雇金銭解決制度の導入に向けて、裁判所の労働審判記録や訴訟記録を、産業競争力会議の意を受けて、裁判所の協力のもとで、厚労省ないしその受託機関が閲覧調査をする作業が進められています。

■「日本再興戦略改訂2014年」雇用制度改革

2014年6月24日付けで「日本再興戦略 改訂2014年-未来への挑戦-」が閣議決定されました。この中で、解雇金銭解決制度の導入が打ち出されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/honbun2JP.pdf
 

この中で、「予見可能性の高い紛争解決システムの構築」を図ることが決定されています。「中小企業労働者の保護」、外国の「対日直接投資を促進する」ためとしています。

その内容は次のとおりです。

①「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析
 労働紛争解決手段として活用されている「あっせん」「労働審判」「和解」事例の分析・整理については、本年度中に、労働者の雇用上の属性、賃金水準、企業規模などの各要素と解決金額との関係を可能な限り明らかにする。分析結果を踏まえ、活用可能なツールを1年以内に整備する

②透明で客観的な労働紛争解決システムの構築
 主要先進国において判決による金銭救済ができる仕組みが各国の雇用システムの実態に応じて整備されていることを踏まえ、今年度中に「あっせん」等事例の分析とともに諸外国の関係制度・運用に関する調査研究を行い、その結果を踏まえ、透明かつ公正・客観的でグローバルにも通用する紛争解決システム等の在り方について、具体化に向けた議論の場を速やかに立ち上げ、2015年中に幅広く検討を進める。

解雇金銭解決制度の導入については、慎重な書きぶりですが、2015年中にも制度の具体化を目指していることは明らかでしょう。

そして、その前提として、「あっせん」「労働審判」「和解」の事例を分析して、1年以内に「活用可能なツール」を整備するとしています。 要するに、解雇事件について、労働局の紛争あっせんだけでなく、裁判所の労働審判事件や訴訟事件を分析して、実用的な金銭解決の水準を作るということです。

■産業競争力会議の動き

第9回産業競争力会議雇用・人材分科会(平成26年4月9日)では、解雇金銭解決制度についての、次のようなやり取りがあります。この分科会の主査である長谷川閑史(武田薬品会長)は、解雇金銭解決制度の必要性をかねてから強調していきた人物です。これが上記改訂2014年版に反映されたのです。

●中野厚労省労働基準局長
紛争解決について。現在都道府県労働局による個別労働関係紛争のあっせん事例の分析については、既に調査に着手している。・・・・

また、労働審判、和解の事例については、法務省を通じて裁判所にお願いし、今、具体的な調査の仕方、方法についてご相談している。調整次第、調査に着手する予定がある。

その際、長谷川主査からご指摘のあったように、企業の労働者のそれぞれの属性をうまく拾い出して、労働者の雇用上の属性や、賃金水準、企業規模、解決金額といった、事案の具体的な内容を拾い出して精査しないと、なかなかよい分析にならないので、そういう観点からの分析をすすめたい。

●長谷川主査
・・・中野局長からも良く勉強すると言っていただいた・・・変えていくという姿勢で考えていただくことが極めて重要。ぜひそういう方向でご検討いただきたい。

●西村内閣府副大臣
・・・法務省を通じて裁判所と調整中ということは、前向きに進んでいるという理解で良いのか・・・・

●萩本法務省民事局官房審議官
裁判所からは、今回の調査のために、可能な範囲で協力するという回答を得ている。概要としては、厚労省あるいはその受託者が裁判所を訪れて記録を閲覧し、必要なデータをそこから収集することは構わないというこである。現在、先程の厚労省の資料にあったとおり、具体的に、いつ、誰が、そこの裁判所を訪れ、どのような方法でデータを収集するかについて、調整をしている状況である。

要するに、裁判所の労働審判や民事訴訟の事件記録を、厚労省ないし受託機関が閲覧して、解雇事件の金銭解決水準を、属性等を含めて調査をするということが決まり、裁判所がそれに協力することを決めたということです。上記萩本法務省民事局官房審議官は裁判所から法務省に出向している裁判官ですから、裁判所とはツーカーなはずです。

■調査の問題点

●誤ったデータの分析になる可能性が高い

解雇の金銭解決水準については、解雇が有効か否かという判断が最も重要な要素です。解雇が無効と判断される場合には、金銭解決の水準は当然にあがります。解雇が有効の場合には、当然水準は低くなります。調停や和解の際に、解雇が有効か無効かという裁判所の心証をもとに双方が妥協して、金銭解決の水準が決まるのです。

訴訟記録をいくら厚労省が見ても、この重要な要素は判断がつきません。

したがって、この要素が抜け落ちたデータ整理は、極めてミスリーディングなデータになります。分かりやすく言えば、勝ちスジ事件も負けスジ事件も一緒にして解決金額の平均値を出すことになりかねません。当然、金銭水準は低くなりますよ

●中立公平な立場ではない者の調査

また、解雇金銭解決制度について中立公平な立場での学術的研究ならいざ知らず、解雇金銭解決制度の導入を推進する立場に立つ、産業競争力会議の意を受けた厚労省ないしその受託機関の調査は、信用性にかけるというものです。世界一、企業が活動しやすい日本を目指す以上、その金銭解決水準は低い水準が狙われる可能性が高いわけです。

●労働審判は非公開手続

訴訟記録は閲覧が可能です(民事訴訟法91条)。しかし、労働審判は非公開です(労働審判法16条)。したがって、産業競争力会議や法務省、厚労省とはいえ、労働審判記録は閲覧できないはずなのです。裁判所としては、産業競争力会議、法務省、厚労省であれば許可するのでしょうか。その場合の法的根拠は難でしょうか?

■慎重な対応を

以上のとおり、解雇金銭解決制度導入ありきのこの調査は、極めて問題が大きいです。この調査が最も労働事件が多く専門の労働部がある、東京地方裁判所労働部を対象に行われることは明白でしょう。

「最高裁の協力のもと東京地裁労働部で集めたデータ」となれば、一般国民には、「間違いない」ものとして受けとめられる可能性が高い。しかし、解雇が有効か無効の観点を落としたデータであり、重大な欠陥があります。

このような調査を安易に行うべきではありません。

(ご参考)
過去に解雇の金銭解決制度について論じたブログは次のとおりです。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/08/post-c2b9.html

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/04/post-d3cf.html

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-11e7.html

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2014年6月28日 (土)

「集団的自衛権」解釈改憲の現実的な訴訟リスク

■集団的自衛権の閣議決定案

内閣の憲法解釈変更の最終閣議決定案が報道されています。それによれば集団的自衛権は次の要件が備われば憲法上許容されるとしています。

①わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生、
②これによりわが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、
③これを排除し、わが国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないとき、必要最小限度の実力を行使すること

 憲法解釈としては余りに稚拙であり、合憲であることを何ら論証できていないと思います。それはともかく、今後、閣議決定に添って、自衛隊法、周辺事態法、国際平和協力法などが改正されることになります。

■自衛隊法はどう改正されるか

 
自衛隊法を考えてましょう。現在の自衛隊法は、防衛出動を次のように定めています。

(防衛出動)
第76条1項
 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃(以下「武力攻撃」という。)が発生した事態又は武力攻撃が発生する明白な危険が切迫していると認められるに至つた事態に際して、我が国を防衛するため必要があると認める場合には、自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる。この場合においては、武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律 (平成十五年法律第七十九号)第九条 の定めるところにより、国会の承認を得なければならない。

これは「わが国に対する外部からの武力攻撃」があった場合の個別的自衛権のことしか定めていません。集団的自衛権を認める閣議決定にそって、今後、「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」した場合にも、防衛出動を命じることができると改正されることになります。

■「防衛出動」には自衛官は拒否できない(刑罰)

そうなると集団的自衛権行使による自衛隊の出動命令も、「防衛出動」ということになります。自衛官は、防衛出動を拒否することはできません。この防衛出動を拒否した場合には、次のとおり自衛隊法123条で7年以下の懲役又は禁固で罰せられます。

第123条  第76条第1項の規定による防衛出動命令を受けた者で、次の各号の一に該当するものは、七年以下の懲役又は禁こに処する

一   (略)
二  正当な理由がなくて職務の場所を離れ三日を過ぎた者又は職務の場所につくように命ぜられた日から正当な理由がなくて三日を過ぎてなお職務の場所につかない者
三  上官の職務上の命令に反抗し、又はこれに服従しない者

四、五 (略)

 ちなみに、国際平和協力法の活動を拒否した自衛官を罰する規定は見当たりません。公務員としての人事上の懲戒処分を受けるだけのようです。

■自衛官は、韓国や台湾、米国の防衛のために戦闘するか

 集団的自衛権行使として、将来可能性がある事態としては、①第2次朝鮮戦争勃発した場合に自衛隊を機雷除去などで朝鮮半島に派兵する、②中国の台湾への武力侵攻に際して米軍とともに台湾を防衛するために台湾に派兵する、③中東での戦争に際して石油輸入を確保するために自衛隊を中東地域に派兵することなどが考えられます。

 こいう場合にも、内閣総理大臣が自衛隊法76条1項に基づいて、「防衛出動」を命じることになります。日本の防衛、尖閣諸島防衛のためには、自衛官は、当然、防衛出動するでしょう。そのつもりで、自衛隊に入隊し、専守防衛を誓ってるはずですから。

 でも、まさか他国防衛のため、例えば、「韓国」防衛のため、「台湾」防衛のため、「米国」防衛のために、海外に派兵されして戦闘するとは考えていなかったでしょう。もちろん、戦闘が大好きで勇んで出動する自衛官もいるでしょう。

■これを拒否した自衛官は起訴され刑事裁判となる

 しかし、「話しが違う」と考える自衛隊員もいると思います。自衛官が、「じゃあ自衛官を辞める」なんてことはできません。処罰の対象です。

 そうなれば、「集団的自衛権を規定した自衛隊法や内閣総理大臣の防衛出動命令は、憲法9条に反し違憲違法である」として、命令を拒否する人もでるでしょう。

 そうなれば、必然的に自衛隊法違反被告事件として、逮捕、起訴されます。そして、「集団的自衛権は憲法9条違反だから違憲無効だから、自分は無罪である」との自衛官の主張に対して、裁判所は憲法判断をすることになります。

■裁判所の憲法判断が出ることは不可避

 
 内閣法制局の皆さま、この裁判で「集団的自衛権行使は合憲だとして勝訴できる」と思いますか。前内閣法制局長官から最高裁判事になった方が、就任の際に、憲法改正が必要だとコメントしていましたよね。

 解釈改憲ですすめれば、大きな訴訟リスクを内閣も自衛隊も負うことになるわけです。

 イラク自衛隊派遣の差止訴訟のような違憲訴訟が提起されるよりも、こちらのほうが内閣にとっては脅威のはずです。前者のような訴訟類型は、裁判所が出す可能性もなく(変わった裁判官しか出さないでしょう)、また違憲判断も理由中の判断にすぎず、法的効果がありません。政府とすれば無視すればすみます。しかし、刑事裁判となればそうはなりません。違憲なら、無罪ですから。そうなれば、多数の自衛官が集団的自衛権への参加を拒否することになる可能性があります。

 下級審では一定の違憲判決が出される可能性が高いと思います。

 ただし、日本の最高裁判所は、「高度な政治的判断が必要だ」として、統治行為論によって、憲法判断を回避する公算は高いと思われます。 そのため、自民党政府は、今後、このような考え方の最高裁判事をたくさん任命していくことでしょう。裁判官に対する締め付けも、再び厳しくなるのではないでしょうか。

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2014年5月21日 (水)

大飯原発差し止め判決 福井地裁

■大飯原発 差し止め判決

2014年5月21日、福井地裁の画期的な大飯原発差し止め判決です。

全文がこちらで読めます。

http://www.cnic.jp/5851

この福井地裁判決はシンプルな判断です。判決文38ページから裁判所の判断部分です。印象に残る判断部分は次のとおり。

■人格権が最高の価値

「生存を基礎とする人格権が公法、私法を問わず、すべての法分野において、最高の価値を持つとされている以上、本件訴訟においてもよって立つべき解釈上の指針である」

■「原子力発電所に求められるべき安全性」

「安全性、信頼性は極めて高度なものでなければならず、万一の場合にも放射性物質の危険から国民を守るべく万全の措置がとられなければならない」

「具体的危険性が万が一でもあれば、その差し止めが認められるのは当然である。」

そして、具体的危険性があるかどうかを判断していきます。

■「冷却機能の維持について」

「大飯原発には1260ガルを超える地震は来ないとの確実な科学的根拠に基づく想定は本来的に不可能である。」

「基準値振動の信頼性について」は、「全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの間に到来している」

「地震大国日本において、基準値振動を超える地震が大飯原発に到来しないというのは根拠のない楽観的見通しにしかすぎない上、基準値振動に満たない地震によっても冷却機能喪失による重大な事故が生じ得るというのであれば、そこでの危険は、万が一の危険という領域をはるかに超える現実的で切迫した危険と評価できる。」

■「閉じ込めるという構想について(使用済み核燃料の危険性)」

「使用済み核燃料も原子炉格納容器の中の炉心部分と同様に外部からの不測の事態に対して堅固な施設によって防御を固められてからこそ初めて万全な措置をとられているということができる。」

「国民の安全が何よりも優先されるべきえあるとの見識に立つのではなく、深刻な事故はめったに起きないだろうという見通しのもとにかような対応が成り立っているといわざるをえない。」

■最後にもっとも印象的な判決文 「国富論」についての記述です。

「被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性、コストの低減につながると主張するが、当裁判所は、極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないと考えている。」(人格権はあらゆる法分野で最高の価値を持つとして優先されるべきであるから)

「コストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが、たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても、これを国富の流出や喪失というべきではなく、豊かな国土とそこに国民を根を下ろして生活していることが国富であり、これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている。」

 福井地裁の裁判長をはじめとした3人の裁判官に敬意を表したいと思います。

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2014年5月 9日 (金)

有期社員の差別是正を求める裁判提訴(労契法20条訴訟)

■労働契約法20条の施行

 2013年4月1日に施行された改正労働契約法20条は、有期を理由とした不合理な労働条件の格差を禁止しています。

(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という。)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。

この規定を使って、二つの格差是正訴訟を提訴しました。

■東京メトロコマース訴訟

http://www.labornetjp.org/news/2014/0501metro/newsitem_view

東京メトロコマース㈱は、東京地下鉄㈱の子会社、駅構内の販売店等を経営し、従業員約840人(正社員と有期社員の合計)、営業収入約169億円の会社です。
原告4名は、メトロの駅販売店で販売を担当する有期社員です。有期1年の契約を更新して、約7年から約10年にわたり勤務してきました。
販売店では正社員と同様に配置されて、正社員と同様に働いています。
しかし、労働条件は次のような著しい格差があります。

               有期社員(時給制)   正社員(詳細不明)

基本給   1050円(月例約17万円)   約25万円

住宅手当 なし               9200円

賞 与  約24万円(年間)       約150万円(年間)

退職金  なし              約300万円(10年勤務)

5月1日、全国一般東京東部労働組合に所属する同社の有期社員の組合員4名が労働契約法20条を根拠に上記労働条件の格差は違法であるとして、損害賠償請求を提訴しました。
誰もがよく知っている 地下鉄駅構内の販売店です。販売店での有期社員と正社員の労働時間は同一ですし、仕事内容も同一です。昇進は配置転換も販売担当の正社員と異なるところはありません。
にもかかわらず、上記のような著しい格差があるのは、労働契約法20条に違反するものです。

また、東京東部労組は、東京メトロコマースとの団体交渉の場で、同社の正社員の給与規程や正社員の実際の賃金について明らかにするように要求したにもかかわらず、東京メトロコマースは、東部労組は正社員の組合員がいないので回答しませんでした。しかし、労働契約法20条で正社員との労働条件の不合理な格差を禁止しているのですから、有期社員の労働条件に密接に関わることで、会社が回答しないのは、明白な不当労働行為(不誠実な団体交渉)です。労働契約法20条がある以上、会社は団交での回答を拒むことはできなくなっています。

■日本郵便訴訟

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140508-00000107-mai-soci

日本郵便株式会社の従業員は全体で約39万人、正社員以外の有期社員は約19万人で49%を占めています。有期社員には、時給制契約社員(約18万人)、月給制契約社員(約1万人)、エキスパート社員(約1400人)がいます。

原告となった3名は、時給制契約社員です。職種は、郵便外務事務(郵便の集配業務)、郵便内務事務(郵便局内で窓口、郵便の仕分け業務等)です。

それぞれの時給は960円から1500円です。
有期社員と正社員は同じ仕事に業務をしています。郵便集配業務であれば、正社員と有期社員が同じ郵便局の同じ集配部に配属されて、同じ班で同じ勤務シフト制で勤務時間が決まり、労働時間・残業時間・休日労働も同様です。

にもかかわらず、労働条件が異なります。
最も明白な労働条件の格差は諸手当です。 例えば、年末年始の繁忙期、年賀状などの配達で郵便労働者は、正社員、有期社員の違いなく、年末年始の郵便業務に従事します。 正社員には、年末年始手当が1日4000円から5000円が支給されます。同じく年末年始に働く有期社員には、この手当が支払われません。

そのほか、住居手当や外務手当も正社員とは異なり支払われません。
賞与も夏冬それぞれ月例賃金の3割が支払われるだけです。正社員は年間合計賞与は月例賃金の約3ヶ月です。 夏季冬季休暇や病気休暇も正社員にはとれますが、有期社員にはありません。

5月8日、この格差是正を求めて、病気休暇を取得する地位、諸手当の支払いを求めて提訴しました。

原告の3名は、郵政産業労働者ユニオン(組合員約2500人)の組合員です。 この諸手当の格差も労働契約法20条に違反する不合理な格差であり、正社員と同様の諸手当の支払い求めての提訴です。
郵政産業労働者ユニオンは、大阪でも提訴の準備をしており、全国的な取り組みになるでしょう。

■格差是正の大きな労働運動を

民主党政権が、労働者の権利をまもるために制定した改正法です。これが、民主党の唯一の(?)成果です。

施行1年経過後、有期社員とそれを応援する労働組合が立ち上がって提訴しました。 この2社ような格差が多くの職場にあります。でも、個人だと是正を要求したら、雇止めされるのではないかと不安になり声を上げられません。そのような相談も多く受けました。

企業側からは、「有期社員の労働条件を改善するなら、正社員の労働条件を下げざるを得ない」とのおどしがあると思います。しかし、正社員労働組合が、この企業の脅しにひるめば、労働組合は一層弱体化し、結局、自分の権利も守れないことになるでしょう。

全国の労働組合に、有期社員の労働条件是正の取り組みを強めてもらいたい。

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2014年5月 6日 (火)

憲法9条の成立過程について

古関彰一教授は、著書の「新憲法の誕生」(中央公論社・1989年)と「『平和国家』日本の再検討」(岩波書店・2002年)の中で、日本国憲法制定過程を実証的に記述されています。特に、憲法9条の成立過程は公開記録等に基づき極めて実証的で説得的です。これに基づいて憲法9条制定過程をまとめてみました。
なお、「日本国憲法の誕生」(岩波現代文庫・2009年、「新憲法の誕生」改訂版)が必読です。

■日本国憲法制定のスタート

1945年(昭和20)年10月にマッカーサーが近衛文麿に自由主義的な憲法改正を示唆し、当時の幣原首相は、近衛に先行されないように、10月25日に憲法問題調査委員会(松本烝治委員長)を設置しました。ここから日本国憲法制定がスタートです(後記年表)。

早くも、12月28日に、民間研究者(高野岩三郎、鈴木安蔵等)による「憲法研究会」が民主的・自由主義的な「憲法草案要綱」を発表しました。GHQは同月30日には、この憲法草案要綱の英訳を作成しています。この憲法研究会の草案が後のGHQ憲法案に大きな影響を与えます。

■憲法9条の発案者

1946年1月24日、幣原首相がマッカーサー(M)と面談しました。そのとき、幣原が、戦争の放棄が理想であると語ると、Mがこれに強く賛意を示しました。 そして、Mは、次のように述べます。

極東委員会(FEC)では天皇にとって不利な情勢がある。しかし、日本が戦争放棄を世界に宣言すれば天皇制は存続できるであろう。

幣原首相が、友人である枢密院顧問官大平駒槌に語った内容を、大平の娘である羽室三千子が、上記の内容を記録しています(羽室メモ)。


■憲法問題調査委員会の松本私案がスクープされる

2月1日、秘密裏に検討されていた内閣の憲法問題調査委員会の「憲法改正試案」(「松本案」)が毎日新聞にスクープされた。この松本案は、大日本国憲法(明治憲法)に少し手を加えたものにすぎませんでした。憲法研究会の憲法草案とは大違いです。

■マッカーサー三原則

2月3日、Mは、憲法改正の次の3原則をGHQ民政局長ホイットニーに指示しました。

①天皇制の維持。天皇は職務及び権能は憲法に基づき行使される。

②国権の発動たる戦争は廃止する。

③日本の封建制度は廃止される。皇族を除いて貴族・華族は廃止。

2月4日、ホイットニーは、GHQ民政局行政部に憲法改正案を1週間で策定することを指示します。

これほどGHQが急いだのは、2月26日には極東委員会(FEA)が発足して、この極東委員会が動き始めれば、ソ連・中国・オランダ・オーストリアらの強硬派(天皇制廃止・天皇戦犯訴追)の圧力が強まる。そこで、それ以前にGHQの下で天皇制を維持する方向の憲法をつくっておきたかったのです。

■GHQの戦争放棄条項案

当初、GHQ民政局は、戦争の放棄を憲法前文に書くつもりであったが、途中でMの指示で本文に記載することになりました。

GHQ案
第1条(後に第8条となる)
 国権の発動たる戦争は、廃止する。
 いかなる国であれ他の国との紛争解決の手段としては、武力による威嚇または武力の行使は、永久に放棄する。
 陸軍、海軍、空軍その他の戦力を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が国に与えられることもない。

■GHQ案の受け入れの閣議決定

日本政府は、2月8日、内閣の憲法問題調査委員会の「憲法改正要綱」(松本案)をGHQに提出しました。しかし、GHQは、これを無視して、2月13日、日本政府にGHQ案を手渡します。

2月21日、Mは、幣原首相と面談します。そして、Mは、戦争の放棄に不安を示す幣原首相を励まします。さらに、Mは、極東委員会は日本にとって極めて不快な問題を論じている。戦争放棄と象徴天皇制が要点である旨を述べます。

幣原首相は、翌22日、上記会談内容を報告して、GHQ案の受け入れを閣議決定しました。

要するに、天皇制を維持するためには、戦争放棄を呑むしかないとの判断です。この機会を逃すと、極東委員会が活動を開始して、天皇制廃止や天皇訴追に至りかねないと考えたからでしょう。この経過については、芦田均厚相(当時)のメモが残されています。

■日本案の作成

2月27日からGHQ案を日本側が日本語化する作業を開始しました。その日本語化作業は、憲法1条や憲法24条等々について、GHQと日本側との間で、色々なドラマというか、騙し合いというか、法戦というか、興味深いものがあります。9条についても紆余曲折をたどります。

■戦争放棄条項の紆余曲折

GHQの原案は次のとおりです。

GHQ案8条
 国権の発動たる戦争は、廃止する。いかなる国であれ他の国との紛争解決の手段としては、武力による威嚇または武力の行使は、永久に放棄する。
 陸軍、海軍、空軍その他の戦力を持つ権能は、将来も与えられることはなく、交戦権が国に与えられることもない。

これの日本案は次のとおりです。

日本案第9条
 戦争を国権の発動と認め武力の威嚇又は行使を他国との間の争議の解決の具とすることは永久に之を廃止す。
 陸海空軍その他の戦力の保持及び国の交戦権を之を認めず。

日本語案は3月2日に完成し、3月6日に幣原内閣が「憲法改正草案要綱」として発表しました。そして、4月10日に総選挙を経て、帝国議会での憲法改正を審議することになります。

■憲法制定議会の要求や総選挙の延期要求

3月14日、社会党や共産党、知識人が憲法制定には憲法制定議会を設けるべきとの声明を出していました。

他方、3月20日には、極東委員会(FEC)は、Mに対して、余りに早い憲法改正手続を憂慮して、総選挙を延期して憲法問題については慎重にすすめるようにと文書で要求しています。

ところが、Mは、極東委員会の総選挙延期要求を断固拒否すると回答しました。(もし、M のごり押しがなかったら、極東委員会が活発化して、天皇訴追、憲法制定議会の招集、天皇制廃止もあり得たかもしれません。)

■日本国憲法草案の発表

4月10日に総選挙の結果、幣原内閣は退陣して、吉田茂内閣に交代します。総選挙の後になって、日本国憲法草案が初めて全文が発表されました。

■帝国議会での「自衛権」論争

憲法9条について帝国議会での論争がなされました。次のような有名な自衛権論争があります。

●共産党の野坂参三衆議院議員
第9条は、我が国の自衛権を放棄して民族の独立を危うくする。侵略戦争のみを放棄する規定にすべきである。

吉田茂首相の答弁
第9条2項において、一切の軍備と国の交戦権を認めない結果、自衛権の発動としての戦争も、また交戦権も放棄したものであります。従来近年の戦争は多く自衛権の何において戦われたものであります。満州事変然り、大東亜戦争又然りあります。

現在はまったく真逆になっているのが皮肉です。

その後、9条はまさに内閣や内閣法制局によって「解釈改憲」されたのです。ちなみに、吉田首相の「完全非武装主義」の解釈は、一年前には鬼畜米英と言っていた保守派議員から理想的だとか素晴らしいとかで圧倒的賛成を得ているのも皮肉です。吉田首相の自衛権放棄論を聞いたうえで憲法に賛成しているのです。しかし、私個人としては野坂参三議員の意見が真っ当であると思います。

■芦田修正問題

帝国議会では、6月28日に憲法改正特別委員会(芦田均委員長)が設置されて、条文の審議が行われます。その結果、政府案は次の委員会案のように修正されます。

政府案
 国の主権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、他国との間の紛争の解決の手段としては、永久にこれを放棄する。
 陸海空軍その他の戦力は、これを保持してはならない。国の交戦権は、これを認めない。

委員会案
 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

「芦田修正」とは、委員会案の2項の「前項の目的を達するため」という条項を追加したことです。この修正の意図を、芦田氏は「国際紛争を解決する手段として」の場合にのみ戦力・交戦権を放棄したことを明示し、自衛のための戦争は放棄していないというのです。

■実は、芦田修正ではなく、「金森修正」という古関教授の指摘

しかし、古関教授は、この「芦田」修正は歴史的真実ではないと資料を駆使して論証されます。他方、この「修正」は「金森国務大臣」の意向だとされます。

特別委員会の憲法9条を審議する小委員会で、芦田の当初の「修正案」は次のようなものであったのです。

(芦田修正案)
① 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際紛争を誠実に希求し、陸海空軍その他の他の戦力はこれを保持せず、国の交戦権は、これを否認することを宣言する。
② 前項の目的を達するため、国権の発動たる戦争と武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

この芦田の修正案は現在の9条の1項、2項を入れ替えたものです。これだと、第1項で一切の限定なく戦力不保持、交戦権を否認しており、絶対非武装を定めることになります。2項の「前項の目的を達するため」も国際紛争を解決する手段に限定するものにはなっていません。

これに異を唱えたのは、金森国務大臣だというのです。小委員会議事録には掲載されていないが、入江法制局長官の記録では金森は次のように述べたとされています。

将来国際連合との関係において第2項の戦力を保持しないということについてはいろいろ考え得べき点が残っているのではないか。

結局、芦田は金森の提案を受け入れました。芦田自身は、「前項の目的」とは、「国際平和を希求」ということを指すものでどちらでも構わないと述べたそうです。

そしえ、前記のとおり委員会案が決まり、GHQ案と異なり、9条第2項に「前項の目的を達するため」が挿入されました。

当時、この修正の重大さに気がついていたのは、佐藤達夫法制局次長でした。修正後、GHQにこの案を示したら反対されはしないかと一抹の懸念を抱いたというのです。これは同氏の「日本国憲法誕生記」(中公文庫137頁)でも書かれている。

司令部(GHQ)は、こういう条文があると、前項の目的云々を手がかりとして、自衛のための再軍備をするとの魂胆があっての修正ではないかと誤解しやしませんか、ということを芦田先生に耳打ちした

■GHQも極東委員会(FEC)も修正の意味は気がついていた

このことに気がついたのは、内閣法制局の官僚だけではなかったのです。GHQのケーディス(民政局)は、占領終了後にインタビューを受けて次のように答えている。

修正によって、自衛権が認められることを知っていた。日本は、国連の平和維持軍の参加を将来考えているのだろうと推測した。

さらに極東委員会(FEC)の中華民国代表S・H・タンは次のように指摘していた。

この修正によって、9条1項で特定された目的以外の目的で陸海空軍の保持を実質的に許すという解釈を認めていることを指摘したい。・・・日本が、自衛という口実で軍隊を持つ可能性がある。

■「文民条項」を復活させた極東委員会

オーストラリア代表のプリムソルは、「文民条項」(大臣は軍人であってはならないと禁止する条項)の必要性を次のように強く訴えました。

将来必ず日本は軍隊を保持する。その際、日本の伝統で現役武官が陸海軍大臣に就くことになる。その際の歯止めとして文民条項は必ず定めるべき。

その結果、極東委員会がGHQに文民条項(現憲法66条2項)がの勧告によって挿入されたのです。いったん削除されていた文民条項が、極東委員会の勧告で復活したことになります。日本に被害をあった中国やオーストラリアは、日本を信用していなかったために、この条項を用いて、必ず日本が自衛のための軍隊を設けることを正しく見通していたわけです。

■憲法9条の意義

上記のとおり、憲法9条の制定過程を見ると、現憲法下でも、自衛のための戦力を保有すること自体は論理解釈としては成り立ちます。

もちろん、吉田首相が帝国議会で述べたとおり、完全非武装で、自衛戦争も放棄したと解釈することも論理的に可能です。

しかし、自衛のための戦力さえ完全に放棄する「非武装主義」は非現実的でしょう。野坂参三議員が指摘するとおり民族の独立を危うくするものだと思います。

そして、現時点においては、結局、国民の多くは、「専守防衛」という範囲で自衛隊を容認しているということでしょう。この法意識を無視することはできない。

ただし、現実の「自衛隊」が「専守防衛」の範囲内にあるかどうかは別問題です。
おまけに、「集団的自衛権」容認に踏み出すとなると、もはや「自衛権」の範疇を超えてしまいます。「集団的自衛権」は、他国の「防衛」のために戦力を行使する概念ですから。この点は、長くなったので踏み込まないようにします。

■「押しつけ憲法」論

上記の経過を見れば、圧倒的に占領軍(GHQ)の圧倒的影響下で、日本国憲法が制定されたのは事実です。そこで、「押しつけ憲法」という非難の声があがります。でも、現憲法には憲法研究会の民間憲法草案やワイマール憲法なども大きな影響を与えています。

他方、大日本帝国憲法は、伊藤博文が「ドイツ帝国憲法」を「猿まね」して、ごく一部の政治家・官僚が秘密裏に作成して、国民(=臣民)に押しつけた欽定憲法です。

当時、自由民権運動の中、民主的・自由主義的な「私擬憲法」がたくさんありました。有名なのは五日市憲法です。これらは一切、参考とされませんでした。

その意味では、国民にとって、迷惑な「押し付け憲法」は大日本帝国憲法の方でしょう。
今や押しつけかどうかが問題ではなく、その憲法の内容が妥当かどうかこそが問題なのだと思います。
戦後70年近く国民に支持されてきた現憲法に、今さら「押しつけ」との非難はもはや意味を持たないでしょう。

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2014年5月 2日 (金)

日本の労働時間-未だに長時間労働社会 日本

■労働時間規制撤廃と残業代ゼロ
産業競争力会議で長谷川氏は、またぞろ「労働時間規制の緩和、残業代ゼロ」の提言です。労働弁護団はこれに警鐘を鳴らしています。詳細は下記を参照下さい。

■日本の労働時間は何時間か-1800時間の嘘

ところで、労働時間の規制緩和を提言する政府は、日本の労働時間が1800時間を切って1700時間台になった喧伝しています。年間1800時間というと、「週40時間、残業無し、完全週休2日、年次有給休暇完全取得」という働き方です。日本の実態は全く異なるでしょう。特に正社員を中心にして長時間労働は変わっていません。1800時間はパート労働者を含めた平均労働時間であり、正社員の労働時間の実態を示していません。

■毎月勤労統計調査 サービス残業の集計なし

厚労省の労働経済白書では「月間労働時間」を発表しています。これを12倍すれば年間労働時間となります。厚労省「毎月勤労統計調査」に基づくものです。注意しなければならないのは、これは厚労省が事業者に問い合わせて回答された労働時間の統計ですから、サービス残業はカウントされていません。

【毎月勤労統計調査による年間労働時間】
年    総労働時間 一般労働者 パート
2010年  1754.4       2008.8      1095.6
2011年  1747.2       2006.4      1089.6
2012年   1765.2       2030.4      1105.2

■労働力調査が実態に近い
これと別に、総務省統計局の「労働力調査」では、全国で約4万世帯の約10万人に聞き取りをして、平均週間就業時間を発表しています。これは、月末1週間の労働時間を調査員が直接聞き取るものです。1年が52.14週ですから、大ざっぱに52倍すると年間労働時間となります。

【労働力調査による年間労働時間】
年      男女計   男    女
2010年   2106    2345   1778
2011年   2096    2340   1763
2012年   2096    2340   1768

上記は細かくみれば正確ではないのですが、大ざっぱな労働時間の実態を示している思います。詳細は、森岡孝二教授の「企業中心社会の時間構造」(青木書店・1995年)に解説されています。
■正社員の労働時間は年間2300時間を超えている

要するに、男性(正社員と非正規社員)は平均して年間2300時間を超えて働いています。正社員は、これ以上に働いているでしょう。
ですから、無限定正社員という批判が当てはまるのです。しかし、法的には、「無限定に長時間働かされる正社員」というのは違法にほかなりません。
今でも日本で求められているのは、特に正社員の「労働時間の短縮」(残業の禁止)であり、労働時間規制の撤廃や残業代ゼロではけっしてありません。
正社員の「時間短縮」を図ることで、「ワーク・ライフ・バランス」や「女性の活躍」(男女平等)、「少子化対策」に絶対必要な前提です。産業競争力会議の長谷川氏の案は、これに逆行するものです。


(追記)

森岡孝二教授の上記著書は、2013年8月に岩波現代文庫で新著になっていました。アマゾンで知って購入して、ブログ書いたあとに読みました。勉強不足でした。

「過労死は何を告発しているか」 現代日本の企業と労働

毎月勤労統計調査と労働力調査の調査方法の比較は、同書第二章に詳述されています。毎月勤労統計調査は、賃金台帳をもとにして労働時間が算出されており、事業者の回答は未払い残業は含まれていません。

労働力調査は、就業者ひとり一人に面談調査をして算出したものであり、サービス残業も含まれており、サービス残業も含めて実労働時間を反映している。

上記著書で、森岡教授は、日本の特徴として、労働時間の二極化が進んでいることを指摘されています。長時間労働者と短時間労働者が、砂時計の形のように二極化しているとのことです。その意味では、平均労働時間は余り意味は無い。

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2014年4月17日 (木)

日中の「衝突」は回避できるか-中国強硬派のインタビューを読んで

■「中国や北朝鮮は何するか、わからない」

先日、家庭裁判所の控え室にいたところ、調停待ちの時間に70歳すぎくらい上品そうな御婦人たちが「中国や北朝鮮は何するかわからなくて怖いですわね。」「なんとかして欲しいわ。やっぱりアメリカさんに頼るしかないわよ。」って話していました。

■安倍内閣の高い支持率

靖国参拝や従軍慰安婦をめぐる中韓や欧米との対立、集団的自衛権容認の解釈改憲が問題になっていますが、第2次安倍内閣の支持率は高い。
国民がアベノミクスに期待している結果ですが、中国の経済的軍事的な急成長と尖閣諸島の領有権対立に多くの日本人が不安を感じていることも影響していることは間違いない。

集団的自衛権についての各世論調査も調査結果は別れており、結局のところ「分からない」というのが多数派のようです。
この「分からない」派を、集団的自衛権の賛成派・反対派どちらが説得できるか、で世論の帰趨が決まるのでしょう。

■清華大学の当代国際関係研究院院長のインタビューを読むと

中国強硬派登場です。4月11日付け朝日新聞朝刊で、中国の清華大学当代国際関係研究院の閻学通院長のインタビューが掲載されていました。この人物は習近平指導部と非常に近い関係にあるそうです。

http://www.asahi.com/news/intro/TKY201212110762.html
(掲載期間終了でネットでは全文が読めなくなっています)

この閻学通院長は、中国と他国との外交関係を4つに区分します。1番目は味方(北朝鮮)、2番目は友好国(ロシア)、3番目は友好国じゃないが対立もしない(米国)。4番目が対立関係。4番目は「日本だ。」と言ってます。外交としては乱暴な物言いです。あたかも日本を仮想敵国と名指ししたも同然です。
周恩来以来の「政治指導者と一般国民を別けて考える」との方針はもはや放棄されたかのようです。

また「今後、太平洋に中国の海軍が自由に出て行くことは大国として当然の権利だし、日本もそれを認めなければならない」との趣旨の発言もしていました。

まさに「中華民族」の隆盛を追求する「傲慢」を絵に描いた人物です。「覇権主義」とか「大国主義」の批判がぴったり当てはまる中国共産党強硬派です。

■ジョセフ・ナイ「集団的自衛権をナショナリズムのパッケージで包むな」

何週間か前に朝日新聞に、ジョセフ・ナイ教授のインタビュー記事が掲載されていました。米国民主党のブレーンであるジョセフ・ナイ教授は「安倍内閣の集団的自衛権容認の政策は正しいが、それをナショナリズムのパッケージで包むことは誤っている」と言っていました。

米国は、日中が現実に尖閣諸島で武力衝突を起こしかねず、これを回避したいと考えており、安倍内閣には武力衝突も辞さないタカ派がいるとマジで心配、しているようです。

米国は日本に集団的自衛権を認めさせたいが、自らのコントロールからはずれて、日本が勝手に中国と武力衝突に突入することはやめさせたい。その危険な芽が、安倍総理の仲間たちの「歴史修正主義」と「ナショナリズム」にあると考えているのでしょう。安倍首相が覚醒させた日本のナショナリズムに米国も危惧を抱いているのです。

■中国との衝突をいかに回避するか

他方、上記の閻学通院長のような強硬派が中国共産党の主流派だとしたら、極めて危険ですね。中国共産党も強硬派で一枚岩になっていないことを希望しますが。この中華ナショナリズムが噴出すると、中国自身もコントロールできなくなるかもしれません。強硬派が尖閣諸島の占領しかねない。

このような事態を「絵空事だ」として無視することは、今やできません。

こんな深刻な対立が武力衝突までに至るのを回避するために、何が必要なのでしょうか。

安倍内閣は、次のように国民に訴えています。特に自民党石破茂幹事長は明確に述べています。

「集団的自衛権を認めて米国と双務的で強固な軍事同盟関係を構築すれば、中国に対する抑止力になる。そうすれば、中国は尖閣諸島に手を出せなくなる。」

■護憲派の対策は?

これに護憲派も対応することが求められています。
「中国は危険でない。」とか、「尖閣諸島なんかに中国は攻めてこない。」とか、「自衛隊は憲法違反だから、尖閣諸島に中国軍が上陸しても自衛隊は動くべきではなく外交で解決すべき。」などと言っていただけでは、多数派の国民からは支持されないと思います。

護憲派としての包括的で合理的、かつ防衛方針(自衛隊の活用)も備えた説得的な対案がないと、結局、集団的自衛権を、(解釈改憲であろうと、明文改憲であろうと、)国民が容認してしまうのではないかと危惧します。

で、素人なりに考えてみました。

○尖閣諸島については、先制的武力行使をしない、現状変更をしないと相互に約束しようと中国に提案する。
○政府間で不測の衝突回避のためのホットラインを設ける。
○ただし、これに反して中国が不正に侵襲した場合には自衛隊が対応することを明確にする。
○その上で、国際司法裁判所にゆだねると双方とも敗訴したら失うものが大きい。そのリスクを回避するために、双方領有権主張を棚上げして、漁業や資源での平等開発協定を結ぼう、水面下で、と呼びかける。
○日本は、アジアへの侵略戦争の責任を認めた上で、中国の大国主義と軍事的膨張主義を他のアジア諸国と連携して正面から批判する。

こんな考えは素人の非現実的夢想でしょうかね。

安倍首相が、武力衝突回避の現実的な方策を専門家を用いて検討させようとしないのは、この機に乗じて、集団的自衛権を国民に容認させ、ひいては改憲したいと思っているからなんでしょう

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2014年4月15日 (火)

ウクライナ情勢をみて北朝鮮問題を考える

■北朝鮮(朝鮮人民民主主義共和国)はどうなるか

北朝鮮については、遅かれ早かれ、「金王朝」が崩壊することは間違いないでしょう。今のような野蛮な独裁体制が現代にて継続可能とは到底思えません。

その独裁体制が崩壊するときに内乱が発生する可能性があります。また、可能性は低いとはいえ、北朝鮮が断末魔の瀬戸際で突発的に韓国に戦争をしかけることもあり得ないとは言えません。(窮鼠猫を噛む)。

そうなれば、北朝鮮と米韓との間での戦争になってしまいます。日本も、後方支援とかで、それに巻き込まれかねません(北朝鮮の特攻隊が日本の原発を急襲することは十分に考えられます。)。

そうなれば、北朝鮮の攻撃(原爆含む)による日韓の犠牲者が大量にでるでしょう。そして、北朝鮮が原爆を使用すれば、米国は報復で平壌に核攻撃をするでしょう。もし米国が報復核攻撃をしないと、核の傘(抑止力)理論が崩壊し、将来の米国と同盟国への核攻撃の抑止が効かなくなります。ですから米国の核兵器による反撃は必至です。結局、北朝鮮には勝ち目がない。(だから北朝鮮は普通は自分から戦争をしないはず、だが・・・、大日本帝国のような独裁国家は、客観的にみれば勝ち目のない戦に突入した例があるからねえ)

他方で、中国は、親米の韓国が朝鮮半島を統一して、中国と国境を接することを決して許しません。ちょうど今のウクライナでのロシアの立場と中国の立場は一緒になります

そうである以上、中国は、北朝鮮に軍事介入して、親中派の新北朝鮮政権をつくる可能性が十分にあります(もっと想像をゆたかにすると、金政権崩壊前に中国が介入して、親中・新北朝鮮政権をつくることもありえる。例の№2の帳氏が粛正されたのは、それを嫌った金政権が親中国派の芽を根絶やしにしたのかもしれない)。北朝鮮と米韓との戦争に中国が軍事介入したら、中朝VS米韓+日の、それこそ第2次朝鮮戦争になってしまいます。

■この悲惨な事態を回避するにはどうしたらよいのか

米韓日は、武力によって北朝鮮攻撃しないことを確約して、北朝鮮に核兵器を放棄させる。代わりに日米韓は北朝鮮に経済支援をする。なお、日本との拉致問題は、国交正常化して日朝合同調査委員会をもうけて全拉致被害者を再度調査することで解決する。

その上で、国連人権機関の監視の下、外国の情報や物資が北朝鮮の人々に届くようになれば、北朝鮮独裁政権は自壊していくでしょう。

遅かれ早かれ、北朝鮮も少しは民主化された体制に移行し、その新北朝鮮と韓国が統一朝鮮の連合国家を構成することになる(その経済効果は新たな成長国が登場する)。この北側の国家は中国と米国との間の緩衝地帯となるので中国もこれを歓迎するでしょう。

真の朝鮮統一国家は、この連合国家形成の後の課題となるのではないでしょうか。平和的に「民族分断」という朝鮮の悲劇が解消すれば良いのにと思います。

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2014年4月14日 (月)

ウクライナの「ナショナリズムの暴走」と日中のナショナリズム

ロシアが軍事的圧力をかけて、ウクライナからクリミアを独立させて編入させてしまった。

国際紛争において武力の恫喝や武力の行使を禁止した国連憲章のもとで、他の主権国家の地域を編入しちゃうって、21世紀になってはじめてのことでしょうね。これは国際法上、ロシアの行為が違法であることは間違いない。

でも、ウクライナの新政府側は、このことを予想していなかったのでしょうか。当然、クリミアの特殊性からロシアの行動は予想できたことだから、これをさけるための外交上の妥協をはかりたかったはずです。でも、できなかった。

ウクライナって、NATOにも加盟しておらず、天然ガスをロシアに依存して、ロシアの債務国であるくせに、ここまでロシアと正面衝突して、自国を統一国家として維持することなど、経済的に見ても、地政学的に見ても、軍事的に見ても、まったく不可能でしょう。

にもかかわらず、一応選挙で選ばれた前大統領をネオナチ連中と組んでクーデター的に追い出して、しかも、ネオナチ党派と一緒になって新政権を樹立するなんて。ウクライナの新政府側は、後先のことを考えていないとしか思えません。もはやナショナリズムの暴走状態なのでしょう。ロシアもそうだけど。

このままいけば、ウクライナは分裂して、西と東に分かれるのでしょう。

ウクライナ新政府のほうも政権を維持するには、反ロシアのナショナリズムに乗るしかない。もはや簡単には後に引けない。

ロシアはロシアで、自国のナショナリズムに応えるために、欧米(NATO)との緩衝地帯としてクリミアや東ウクライナを介入するしかない。

両国の政治家とも、タイミングを見て、どっかで沈静化と妥協をせざるをえないことは分かっているが、チキンレースをまだ続けている、っという感じです。

ウクライナはその地政学的な位置からして、本来、NATOやEUにも、ロシアにも、従属せずに、中立不干渉の国として、欧米とロシアとの間でバランスをとるしかなかったはずです。そうでないと国の分裂を来すのは明白だった。

でも、ウクライナでは、その統一をはかるような政治家がいなかったし、もはや噴出したナショナリズムをコントロールすることができなくなったということです。

ナショナリズムは、その国の政治家や政府指導者も、コントロールできない魔物ということのようです。ウクライナは、自ら呼び出した悪魔に翻弄されるファウストのように、自らのナショナリズムの暴走によって、自国の分裂を招いてしまったことになります。

ナショナリズムがアウト・オブ・コントロールになる悪夢は、他人事ではないですね。日本と中国も、双方その兆しがあらわれています。

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解雇規制緩和 再論

■ジュリストの「解雇規制緩和」特集

ジュリスト2014年4月号で特集が組まれて、私も論述しています。

http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/019075

【特集】厳しい? 厳しくない?解雇規制      
◇解雇規制・規制改革の問題点――雇用安定の原則を崩すことがもたらす影響●水口洋介……39

この原稿を書く中で、あらためて「解雇法制を考える-法学と経済学の視点」(大竹文雄・大内伸也・山川隆一編/勁草書房2002年第1版)を読みなおしました。特に、民法学者である内田貴教授の「雇用をめぐる法と政策-解雇法制の正当性」との論文があらためて面白いとおもいました。

■解雇規制緩和論者曰く

厳しい解雇規制があるので、企業は容易に労働者を解雇できないことから、正社員の採用を抑制する。よって失業率が上がり、正社員雇用比率が下がる。

規制で守られる企業内の労働者(大企業正社員)と、守られない企業外の労働者(非正規労働者や中小企業労働者)との間に利害対立が生じており、厳格な解雇規制は中小企業労働者の犠牲の下に、大企業の労働組合の利益を擁護するもの。

つまり、日本の企業別に組織された労働市場においては、「厳格な解雇規制」は、既に雇用された正社員の雇用を保障するが、他方、景気が上向いても正社員の採用は抑制され、労働条件が低く雇用が不安定な非正規社員を増加させるだけとなり、成熟産業から成長産業への労働力の移動も円滑に進まず、日本経済の成長をも阻害する。

この論者に対して、日本国憲法の「生存権」や「労働権」を根拠として反論してきたのが伝統的な労働法学です。

内田貴教授は、そのような観点からではない批判を展開しています。

■内田貴教授の「切り口」

厳格な解雇規制が企業の採用行動に影響を与えて、正社員雇用を抑制し、その結果、失業率が上昇し、非正社員が増加しているということは、経済学的モデルのなかではそのように言えるかもしれないが、現実がモデル通りであるかどうかの確証はないのである。

中小企業においては、現実には解雇は相当に自由に行われており、むしろ、日本の雇用法制の問題点は、解雇権濫用法理が労働者を保護しすぎている点にではなく、強力な労働組合をもたない中小企業においては同法理による保護がおよんでいないという不平等にある、とも言われている。

企業が正規従業員の採用を躊躇しているから、非正規従業員が増加している、と言うわけである。しかし、日本では非正規従業員の給与は、同じ仕事内容の正規従業員より低い。企業が非正規従業員を雇用する理由は、解雇の容易さとともにこの人件費の節約という理由も大きいと思われる。そうである限り、仮に正規従業員の解雇を自由にしても、企業はなお非正規従業員の雇用を続けるだろう。

■内田教授の指摘を読んで

解雇規制を緩和すれば、雇用量が増加するとか、非正規労働者が減少するということは何ら実証されておらず 、机上の市場経済モデルの想定でしかないのでしょう。

現実社会では、解雇規制を緩和しても、成長産業に労働力が移動するとは限らず、成熟(衰退)産業の被解雇者が増えて失業者が増加するだけかもしれません。そうではないとする確証はありません。

また、非正規労働者が増えるのは人件費が安いからであり、解雇規制を緩和しても、企業は正社員を減らして非正規労働者に置き換えるだけかもしれません。これを否定する確証もない。

経済学者の多くは、日本には現時点で存在もしない非現実的な諸条件(例えば、外部労働市場が十分に整備されているとか、転職しても不利益を被らない制度があるなど都合の良い諸条件)を前提として、希望的観測を述べているにすぎないのでしょう 。

現実社会での解雇は、労働者とその家族に対して、時として回復不能なダメージを与えます。それは子供の進学断念等の悪影響をもたらし、家庭を破壊し、長期失業など社会的な損失が増加します。

失業というマクロ的な現象は、解雇法制という制度よりも、景気の好不況や為替の変動など経済の大状況によって左右されるものでしょう。

解雇される労働者を犠牲にして、社会実験のような解雇規制緩和策を実施すべきでとは思えません。

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2014年4月 6日 (日)

「原発再稼動」の政府方針に思う

■エネルギー基本計画

 政府は、石油や天然ガスの輸入によるコストアップという経済的な必要性を強調して原発再稼動を推進しようとしています。エネルギー基本計画が近々閣議決定されるそうです。安全神話への反省のない基本計画ですね。

http://newclassic.jp/archives/11438

 原発再稼動には、「厳格な安全性審査に合格した上で」との枕詞がつけられていますが、その「厳格な安全審査」がまったく信用できません。

 福島第1原発事故は「想定外」の大津波という極めて例外的な事故であり、今後は原発が再稼動しても事故は発生しないという「最善のシナリオ」に依存しているとしか感じられません。「最悪のシナリオ」を想定していないようです。

■「最悪のシナリオ」の巨大火山噴火は想定外?

 例えば、再稼動の「有力候補」である川内原発や玄海原発は、九州にあります。阿蘇山の巨大噴火が発生した場合、火砕流が原発に到達する危険性があります。「超巨大噴火なんて、およそ発生しない。想定するのがおかしい」なんて言えないでしょう。
 2011年3月11日の東日本大震災のM9.0の超巨大地震と大津波は、それまでは、まさに「想定外」だったのですから。

 阿蘇山の巨大噴火はけっして「想定外」なんかではありません。阿蘇山の巨大噴火が起こることを想定して原発の安全対策を審査すべきでしょう。

日本にあるいくつかの原発では、起こりえる場面だ。その原発とは、泊原発(北海道)、伊方原発(愛媛)、玄海原発(佐賀)、川内原発(鹿児島)の4つ。

東京大学地震研究所火山噴火予知研究センターの中田節也教授がこう警告する。「4つとも、過去に超巨大噴火の影響を受けたと考えられる場所にあります。火砕流が過去に到達したと思われる場所に建っているのです」

http://dot.asahi.com/wa/2013021200006.html

 このような巨大噴火がいったん発生したら、原発はどうしようもないでしょう。防ぎようがありません。火砕流域内に入った原発のメルトダウンと放射姓物質の大量放出は防ぎようもないでしょう。

■原発破壊攻撃は想定外?

 朝鮮半島有事による北朝鮮との戦争や尖閣諸島を発端としたに日中戦争も現実的に発生する可能性は十分にあります。特に、北朝鮮による突発的な軍事行動は遺憾ながら十分に有ります(戦前大日本帝国が米国の石油禁輸措置に反発して真珠湾攻撃を敢行したように)。

 この場合には、特殊攻撃部隊(特攻)による日本の原子力発電所への急襲は十分に有り得ます。これは「想定外」とは言えないでしょう。これに防戦できる対策は何もとられていない(戦争必至の情勢になってから警戒しても遅いのです)。 原発に重武装した警備部隊はおかれる対策もとられていません。そもそも戦争になった場合に、原発を敵方の攻撃からどのように防護するのかという作戦も安全審査もないように思います。

■繰り返す「敗戦」

 本当に再稼動推進派は、この地震活動期に入った日本で原発事故が二度と起こらないと本当に信じているのでしょうか? これが安全神話なんでしょうね。

 1941年12月、客観情報を無視し、軍部の目先の利益と政治指導者の自己保身のために、精神論だけで無謀な対英米戦争を開始した大日本帝国指導部を思い起こします。対米英開戦を決定した御前会議でも大本営でも、「最善のシナリオ」だけが検討されて、不都合な「最悪のシナリオ」を無視したのです。

 これと同じことを、日本はまた繰り返すとしか思えません。
 第三、第四の敗戦が待ち構えているようです。
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/08/post-3c5b.html

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2014年3月30日 (日)

国家戦略特区 福岡市は「解雇規制緩和」特区を提案していた

■2014年3月28日、政府の国家戦略特区審問会議の決定

諮問会議は、戦略特区を6地域(東京圏、関西圏、新潟市、養父市、福岡市)を発表しました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai4/siryo3_2.pdf

福岡市の部分には次のように記載されています。

<雇用・労働>

 創業後5年以内のベンチャー企業等に対する雇用条件の整備【雇用条件】

この「雇用条件の整備」の内容は不明ですが、この福岡市は、平成25年9月6日に国家戦略特区ワーキンググループに、ヒアリング資料を提出しています。このヒアリング資料は次に公表されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/8-fukuoka.pdf

これを見ると、福岡市の特区は、「新たな起業と雇用を産み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」と銘打っています。

新規事業の開業率を10年後に20%(現状6.4%)に向上することを目標としています。そのために福岡市は起業教育や起業支援を行い、国は「スタートアップ期に限定して、解雇規制の緩和」を行おうというものです。

これを諮問会議が認めたとしたら、福岡市の「ベンチャー企業等に対する雇用条件の整備」の内容は「解雇規制緩和」を意味していることになります。

つまり、高島宗一郎福岡市長は、企業の起業率向上や外資導入するために、創業(スタートアップ)時期に解雇規制緩和を実施するように求めたのです。

■国家戦略特区法では全国共通労働規制は緩和できないはず

国家戦略特区法制定の過程において、特区内で解雇規制や有期労働契約の規制緩和を行うことは強い批判が加えられました。

その結果、有期労働契約規制(無期転換ルール)については、特区での例外を定めることは断念されて、同法附則にて、全国共通の特例法を制定することになったのです。特区内での労働規制緩和はできないと「抵抗」したのは厚生労働省でした。

したがって、解雇規制を全国共通の規制を解除して、特区内だけで解雇規制を緩和することは、国家戦略特区法の制定経過にも反することになります。

だから特区諮問会議は「ベンチャー企業等に対する雇用条件の整備」という表現にしているのでしょうか。そうであれば、ごまかしです。

私は東京で学生生活を送っていましたが、転勤族の父親らが福岡市に住んでいたこともあり、大学時代に良く福岡に行ったので親しみをもっています。

その福岡市が、新たに新規事業拡大、起業率向上の施策を充実させることに異論はありません。ですが、解雇規制の緩和などをしなくても、九州中の若者が集い、アジアへの玄関口である福岡市であれば、他の支援策(経営者個人保証の緩和、投資支援等)を充実すれば、それで十分ではないでしょうか。

解雇をしやすくなったからといって正社員が増える保証はありません。もし、その程度の起業家なら正社員ではなく非正社員のみや派遣労働者のみで起業するでしょうから。

この福岡市の「雇用条件の整備」がどのようになるのかは要注目です。福岡市議会での審議、福岡の労働組合の積極的な調査や情報提供を期待しています。

ここで解雇規制緩和されれば、これが全国に波及すると思います。福岡の労働組合の役割は極めて重要です。

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2014年3月16日 (日)

読書日記 「絶望の裁判所」瀬木比呂志著

読書日記「絶望の裁判所」瀬木比呂志著

2014年2月20日発行
2014年3月14日読了

■元裁判官の引導渡し

裁判所を最高裁事務総局が支配する「檻」とし、裁判官をその「収容所群島」の囚人とまで激烈に批判しています。同じ様な批判は、「司法権力の内幕」を著した森炎氏(元裁判官)が、裁判官を「司法囚人」、フーコーの「パノプティコン」の状態だと指摘されていたことと共通です。

著者の瀬木氏は、1954(昭和29)年生まれで1979(昭和54)年に裁判官になり、最高裁調査官の経験もあり、東京地裁の総括判事(部長)もなったエリート裁判官です。裁判所内部で様々に冷遇されてきた青法協や懇話会系のいわゆる「左派系」の裁判官ではない点が異色です。著者自身、自由主義者で個人主義者であり、いかなる政治的立場にくみしないと言っています。


■裁判官としての経歴は次のとおり。

昭和54年4月~58年7月 東京地裁判事補(31期)
昭和58年8月~61年 静岡地・家裁判事補
昭和61年4月~63年3月 最高裁民事局付き
昭和63年4月~平成1年3月 東京地裁判事補
平成1年4月~4年3月 大阪地裁判事
平成4年3月~6年3月 那覇地・家裁沖縄支部総括判事
平成6年4月~平成7年3月 最高裁調査官
平成7年4月~11年3月 東京地裁判事
平成11年4月~15年3月 千葉地家裁判事
平成15年4月~22年3月 東京地裁判事
平成22年4月~24年3月 さいたま地家裁判事

■中途半端な「内部告発」

著者が最高裁にいる際に、最高裁判事が、ブルーパージ(青法協への弾圧)をしたことを吹聴し自慢していたというエピソードが語られています(本書32頁)。

また、東京地裁保全部にいたときに、国が債権者として仮の地位を定める仮処分命令事件があり、このときに法務省(国)と裁判所が事前に秘密裏に事前談合をしていたことが曝露されている。この事件は、「国のある機関がある特定の団体についてそこに出入りする人物をカメラを用いてチェックしていた」事件である(本書22頁)。

この事件は、公安調査庁が共産党本部の前のビルに隠しカメラを置いて出入りの人物を隠し撮りしていた事件のことでしょう。これは1988(昭和63)年ですから、著者が東京地裁判事補にいた頃ですから、保全部(民事9部)にいた時期に合致します。

もう一つ。ずっと後のこととして、「東京地裁の多数の部で審理が行われていた行われたことがある。裁判長の定例会議におけるある女性裁判長の提案により、裁判長たちが継続的な会合をもち、却下ないし棄却を暗黙の前提として審理の進め方等について相談を行ったのである」として不正を指摘している(本書23頁)

これは東京都が都立学校で卒業式等で君が代の起立斉唱を教職員に命令した「日の丸・君が代」事件のことに間違いないでしょう。

労働部(11部、19部、36部)など多数の訴訟が係属していました。そして東京地裁民事第11部(当時、三代川三千代裁判長(女性))もその一つでした。


ですから、上記事件は、東京都の君が代訴訟のことを意味していることは確実です。 もっとも、この中で、東京地裁36部(難波孝一裁判長)は違憲判決を出しいてます。三代川裁判長はその後、異動でして、佐村という裁判中居眠りすることが有名な裁判長のもとで合憲判決が下されました。

どうせ瀬木氏が内部告発するなら、上記事件の内容や発言した裁判官の実名を明らかにして、その結果も明確にすべきでしょう。特に、君が代関連事件では、そのような部を超えた裁判長の定例会議がありながら、違憲判決が出されたことを付言すべきでしょう。あたかも全て請求棄却となったような書きぶりは疑問が残ります。中途半端です。


■裁判所はどうなっているのか

瀬木氏の批判は、司法改革の中で、いっそう最高裁の官僚統制が強まってきた、と強調されいます。しかし、私はこの点は疑問に思います。

私の実感では、司法改革前のほうが、もっと非道かったと思います。瀬木氏が裁判長時代のことです。瀬木氏自身がその司法官僚の末端だったはずです。

それに比べれば「司法改革」の結果、「まだ少しましになったかなあ」というのが偽らざる感想です。 著書が、司法改革後に、より一層悪くなったというのは。??と思います。自分が裁判長の頃のほうがましだったと言いたいのでしょうか。


また裁判員裁判について、刑事裁判官の権力を維持するためのものだという見立ても、疑問を持ちます。司法改革の中で、裁判所は、裁判員裁判や労働審判に対して、絶対反対の立場でした。

最終的には、裁判所の抵抗はソンになると考えて、原則をまげてやむなく受け入れたということだと思います。 著書の裁判員裁判が刑事裁判官の復権のための「陰謀」であるかのような位置づけは、??と思います。著者はどのような立場だったのでしょうか?


■違和感が残る

この瀬木氏の「民事訴訟の本質と諸相」(日本評論社)も読みました。この論文集(と言うかエッセイ集)もこの新書と同様なことが書かれていました。この本には映画論や文化論も語られ、それなりに面白いと思いましたが、上から目線の物言いが嫌でした。

私は、司法修習生のときから青年法律家協会に入っているし、自由法曹団にも加入しています。ですから、瀬木氏の司法官僚制度に対する批判は、そのとおりだと思います。

しかし、この著書は、何か、違和感が残ります。何か気持ち悪い。

瀬木氏は、司法修習31期です。しかも、最高裁調査官や東京地裁民事部の総括判事にも就任している。

裁判所の中には、裁判官懇話会やそれぞれ裁判所や裁判官制度を良くしようと努力してきた裁判官もいました。瀬木氏は、その中でどのような立場にたち、裁判所内部でどのような努力をされてきたのでしょうか。


言っていることは正しいかもしれませんが、その自身の立場を謙虚に語ることなく、裁判官及び裁判所が絶望的だと決めつけるこの本は、私にとってさえ共感するのが困難です。

裁判官たちは、いっそう鼻白むでしょう。

瀬木氏自身が、その司法官僚制度なかでエリートコースを歩んできたにもかかわらず、自身を、被害者と位置づけているようです。自らの裁判官時代は、司法官僚制度にどっぷりつかっていたことでしょう。東京地裁時代に反動裁判官として批判されたこともあったはずです(31期の同期の弁護士がそのことを指摘しています)。

そのことへの謙虚な反省もなく、また裁判所内で地道な努力をしたわけでもないにもかかわらず、退職してから古巣を「絶望の裁判所」と罵倒する人物がよく分かりません。


私のような市井のマチベン(もっと裁判所的には評価が低い「労弁」、世間的には「ロー弁」ですが)にとっても、けっして、この本は読後感は良くありません。

何か、著者には裁判所に対するルサンチマンがあるのではないかと感じてしまいます。


■じゃあどうすれば裁判所は良くなるのか

著書は法曹一元制度を定言します。

私も、今は、考えても無駄なことは、時間の無駄だから考えないという年齢になりました。


裁判所が良くなる前提として、政治が良くなり、法律が良くなり、社会が良くなるしかありません。

裁判所は所詮、日本の社会と政治、そして日本人の法意識の反映でしかありません。

非効率で保守的な裁判制度は、結局、日本国民が容認していることなのです。 戦後70年たっても、その改良は見通しがありません。今のような状態が続くだけです。

このことはアメリカの学者も指摘しています(「日本の最高裁を解剖する-アメリカの研究者からみた日本の司法」デイヴィット・S・ロー著、西川伸一訳・現代人文社)。 所詮、司法は日本の社会と政治の反映にしかすぎないと。

したがって、今のような裁判所制度は、今後、ずっと続くでしょう。

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2014年2月16日 (日)

政治指導者の「決断」と「喝采」-カール・シュミット理論の再来

安倍晋三首相が、集団的自衛権についての憲法解釈の変更の可否を問われて、「(政府の)最高の責任者は私だ。政府の答弁に私が責任をもって、そのうえで選挙で審判を受ける」と答弁したことで、論争を呼んでいます。

昨今、選挙で選ばれた政治指導者の「決断」が持てはやされます。
「決めるのは俺だ」という手法は、橋下徹氏が得意であり、多数の国民は喝采をあげて受け入れているようです。
これは政治指導者の「決断主義」と言えるでしょう。

「決断主義」と言えば、カール・シュミットです。

カール・シュミットは、第2次世界大戦前のドイツ・ワイマール時代の憲法学者であり、ナチス法学の泰斗です。大学時代、カール・シュミットとハンス・ケルゼンを比較をした講義(憲法原論)を受けたときの受け売りです。昔のことなので理解が間違っているかもしれません。

カール・シュミットは「政治社会」の本質をシンプルに指摘しています。

○政治社会とは、支配者と被支配者が存在する「支配-被支配関係」である。
○支配者とは、法的には「主権者」のことである。
○政治の本質は、「友敵関係」である。
○支配者は、政治社会の「敵」を決めることができる。
○支配者(主権者)は決断者である。
○支配者(主権者)は「例外状況」(戦争や革命)において決断者として登場する。
○支配者の決断は「民衆の喝采(アクラマチオ)」によって支えられる。

ナチズムを法学的に支えたカール・シュミットですが、これは政治社会の本質を良く言い当てています。

安倍晋三氏の「選挙(つまり、民衆の喝采)によって憲法解釈を決定するのは政治指導者である」という考え方は、カール・シュミット理論と極めて近い考え方です。

カール・シュミットに対抗したドイツの法学者がハンス・ケルゼンでした。ハンス・ケルゼンは、「デモクラシーの本質と価値」の中で、マルキシズムとナチズムを強く批判します。

デモクラシーは多数決原理であるが、少数者の保護が必要不可欠であり、少数者保護を欠くデモクラシーは(ボルシェビキやナチズムのように)独裁に行き着く。

この左右の独裁主義を批判したハンス・ケルゼンの指摘は見事にあたった。今も有効だと思います。

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2014年2月 9日 (日)

「都知事選での一本化」と改憲争点総選挙での「改憲反対一本化」

都知事選は予想通りの結果。舛添氏のダブルスコアでの勝利。

舛添氏が約210万票、宇都宮氏が約97万票、細川氏が約94万票、田母神氏が約60万票です。

最大のサプライズは、田母神氏が60万票も獲得したこと。極右勢力が政治的な一定の地歩を固めた初めての選挙です。田母神氏躍進は、安倍内閣の右傾化と絡めて国際的なニュースになることでしょう。

次の最大の政治的争点として、憲法改正(改憲)が浮上します。

2年後の国政選挙時期に景気が良ければ、安倍首相は改憲を公約として、衆・参同時選挙に打って出て勝負をかけることでしょう。

さて、そのとき、衆議院選挙の小選挙区選挙で、「改憲反対派」は統一候補を擁立できるでしょうか。

改憲反対の一点で、改憲に反対する諸政党が、小選挙区制で統一候補をたてなければ、自民党や維新の党に敗北することは必至です。あらためて言うまでもないことですが、都知事選で目の当たりにしました。

具体的には、自衛隊合憲・安保条約賛成であっても、解雇規制を緩和すべきという規制改革論者であっても、また、TPP賛成派であっても、改憲には反対という人々と「改憲反対」一点で歩調を合わせることができるかどうか

共産党や社民党だけでは、改憲派の小選挙区制での議席獲得を阻止できないという現実を踏まえて、改憲反対の統一候補を考えなければいけない時期が近づきつつあるように思えます。

今回の都知事選は、予行演習であり、教訓とすべきでしょう。             

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