2014年4月17日 (木)

日中の「衝突」は回避できるか-中国強硬派のインタビューを読んで

■「中国や北朝鮮は何するか、わからない」

先日、家庭裁判所の控え室にいたところ、調停待ちの時間に70歳すぎくらい上品そうな御婦人たちが「中国や北朝鮮は何するかわからなくて怖いですわね。」「なんとかして欲しいわ。やっぱりアメリカさんに頼るしかないわよ。」って話していました。

■安倍内閣の高い支持率

靖国参拝や従軍慰安婦をめぐる中韓や欧米との対立、集団的自衛権容認の解釈改憲が問題になっていますが、第2次安倍内閣の支持率は高い。
国民がアベノミクスに期待している結果ですが、中国の経済的軍事的な急成長と尖閣諸島の領有権対立に多くの日本人が不安を感じていることも影響していることは間違いない。

集団的自衛権についての各世論調査も調査結果は別れており、結局のところ「分からない」というのが多数派のようです。
この「分からない」派を、集団的自衛権の賛成派・反対派どちらが説得できるか、で世論の帰趨が決まるのでしょう。

■清華大学の当代国際関係研究院院長のインタビューを読むと

中国強硬派登場です。4月11日付け朝日新聞朝刊で、中国の清華大学当代国際関係研究院の閻学通院長のインタビューが掲載されていました。この人物は習近平指導部と非常に近い関係にあるそうです。

http://www.asahi.com/news/intro/TKY201212110762.html
(掲載期間終了でネットでは全文が読めなくなっています)

この閻学通院長は、中国と他国との外交関係を4つに区分します。1番目は味方(北朝鮮)、2番目は友好国(ロシア)、3番目は友好国じゃないが対立もしない(米国)。4番目が対立関係。4番目は「日本だ。」と言ってます。外交としては乱暴な物言いです。あたかも日本を仮想敵国と名指ししたも同然です。
周恩来以来の「政治指導者と一般国民を別けて考える」との方針はもはや放棄されたかのようです。

また「今後、太平洋に中国の海軍が自由に出て行くことは大国として当然の権利だし、日本もそれを認めなければならない」との趣旨の発言もしていました。

まさに「中華民族」の隆盛を追求する「傲慢」を絵に描いた人物です。「覇権主義」とか「大国主義」の批判がぴったり当てはまる中国共産党強硬派です。

■ジョセフ・ナイ「集団的自衛権をナショナリズムのパッケージで包むな」

何週間か前に朝日新聞に、ジョセフ・ナイ教授のインタビュー記事が掲載されていました。米国民主党のブレーンであるジョセフ・ナイ教授は「安倍内閣の集団的自衛権容認の政策は正しいが、それをナショナリズムのパッケージで包むことは誤っている」と言っていました。

米国は、日中が現実に尖閣諸島で武力衝突を起こしかねず、これを回避したいと考えており、安倍内閣には武力衝突も辞さないタカ派がいるとマジで心配、しているようです。

米国は日本に集団的自衛権を認めさせたいが、自らのコントロールからはずれて、日本が勝手に中国と武力衝突に突入することはやめさせたい。その危険な芽が、安倍総理の仲間たちの「歴史修正主義」と「ナショナリズム」にあると考えているのでしょう。安倍首相が覚醒させた日本のナショナリズムに米国も危惧を抱いているのです。

■中国との衝突をいかに回避するか

他方、上記の閻学通院長のような強硬派が中国共産党の主流派だとしたら、極めて危険ですね。中国共産党も強硬派で一枚岩になっていないことを希望しますが。この中華ナショナリズムが噴出すると、中国自身もコントロールできなくなるかもしれません。強硬派が尖閣諸島の占領しかねない。

このような事態を「絵空事だ」として無視することは、今やできません。

こんな深刻な対立が武力衝突までに至るのを回避するために、何が必要なのでしょうか。

安倍内閣は、次のように国民に訴えています。特に自民党石破茂幹事長は明確に述べています。

「集団的自衛権を認めて米国と双務的で強固な軍事同盟関係を構築すれば、中国に対する抑止力になる。そうすれば、中国は尖閣諸島に手を出せなくなる。」

■護憲派の対策は?

これに護憲派も対応することが求められています。
「中国は危険でない。」とか、「尖閣諸島なんかに中国は攻めてこない。」とか、「自衛隊は憲法違反だから、尖閣諸島に中国軍が上陸しても自衛隊は動くべきではなく外交で解決すべき。」などと言っていただけでは、多数派の国民からは支持されないと思います。

護憲派としての包括的で合理的、かつ防衛方針(自衛隊の活用)も備えた説得的な対案がないと、結局、集団的自衛権を、(解釈改憲であろうと、明文改憲であろうと、)国民が容認してしまうのではないかと危惧します。

で、素人なりに考えてみました。

○尖閣諸島については、先制的武力行使をしない、現状変更をしないと相互に約束しようと中国に提案する。
○政府間で不測の衝突回避のためのホットラインを設ける。
○ただし、これに反して中国が不正に侵襲した場合には自衛隊が対応することを明確にする。
○その上で、国際司法裁判所にゆだねると双方とも敗訴したら失うものが大きい。そのリスクを回避するために、双方領有権主張を棚上げして、漁業や資源での平等開発協定を結ぼう、水面下で、と呼びかける。
○日本は、アジアへの侵略戦争の責任を認めた上で、中国の大国主義と軍事的膨張主義を他のアジア諸国と連携して正面から批判する。

こんな考えは素人の非現実的夢想でしょうかね。

安倍首相が、武力衝突回避の現実的な方策を専門家を用いて検討させようとしないのは、この機に乗じて、集団的自衛権を国民に容認させ、ひいては改憲したいと思っているからなんでしょう

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2014年4月15日 (火)

ウクライナ情勢をみて北朝鮮問題を考える

■北朝鮮(朝鮮人民民主主義共和国)はどうなるか

北朝鮮については、遅かれ早かれ、「金王朝」が崩壊することは間違いないでしょう。今のような野蛮な独裁体制が現代にて継続可能とは到底思えません。

その独裁体制が崩壊するときに内乱が発生する可能性があります。また、可能性は低いとはいえ、北朝鮮が断末魔の瀬戸際で突発的に韓国に戦争をしかけることもあり得ないとは言えません。(窮鼠猫を噛む)。

そうなれば、北朝鮮と米韓との間での戦争になってしまいます。日本も、後方支援とかで、それに巻き込まれかねません(北朝鮮の特攻隊が日本の原発を急襲することは十分に考えられます。)。

そうなれば、北朝鮮の攻撃(原爆含む)による日韓の犠牲者が大量にでるでしょう。そして、北朝鮮が原爆を使用すれば、米国は報復で平壌に核攻撃をするでしょう。もし米国が報復核攻撃をしないと、核の傘(抑止力)理論が崩壊し、将来の米国と同盟国への核攻撃の抑止が効かなくなります。ですから米国の核兵器による反撃は必至です。結局、北朝鮮には勝ち目がない。(だから北朝鮮は普通は自分から戦争をしないはず、だが・・・、大日本帝国のような独裁国家は、客観的にみれば勝ち目のない戦に突入した例があるからねえ)

他方で、中国は、親米の韓国が朝鮮半島を統一して、中国と国境を接することを決して許しません。ちょうど今のウクライナでのロシアの立場と中国の立場は一緒になります

そうである以上、中国は、北朝鮮に軍事介入して、親中派の新北朝鮮政権をつくる可能性が十分にあります(もっと想像をゆたかにすると、金政権崩壊前に中国が介入して、親中・新北朝鮮政権をつくることもありえる。例の№2の帳氏が粛正されたのは、それを嫌った金政権が親中国派の芽を根絶やしにしたのかもしれない)。北朝鮮と米韓との戦争に中国が軍事介入したら、中朝VS米韓+日の、それこそ第2次朝鮮戦争になってしまいます。

■この悲惨な事態を回避するにはどうしたらよいのか

米韓日は、武力によって北朝鮮攻撃しないことを確約して、北朝鮮に核兵器を放棄させる。代わりに日米韓は北朝鮮に経済支援をする。なお、日本との拉致問題は、国交正常化して日朝合同調査委員会をもうけて全拉致被害者を再度調査することで解決する。

その上で、国連人権機関の監視の下、外国の情報や物資が北朝鮮の人々に届くようになれば、北朝鮮独裁政権は自壊していくでしょう。

遅かれ早かれ、北朝鮮も少しは民主化された体制に移行し、その新北朝鮮と韓国が統一朝鮮の連合国家を構成することになる(その経済効果は新たな成長国が登場する)。この北側の国家は中国と米国との間の緩衝地帯となるので中国もこれを歓迎するでしょう。

真の朝鮮統一国家は、この連合国家形成の後の課題となるのではないでしょうか。平和的に「民族分断」という朝鮮の悲劇が解消すれば良いのにと思います。

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2014年4月14日 (月)

ウクライナの「ナショナリズムの暴走」と日中のナショナリズム

ロシアが軍事的圧力をかけて、ウクライナからクリミアを独立させて編入させてしまった。

国際紛争において武力の恫喝や武力の行使を禁止した国連憲章のもとで、他の主権国家の地域を編入しちゃうって、21世紀になってはじめてのことでしょうね。これは国際法上、ロシアの行為が違法であることは間違いない。

でも、ウクライナの新政府側は、このことを予想していなかったのでしょうか。当然、クリミアの特殊性からロシアの行動は予想できたことだから、これをさけるための外交上の妥協をはかりたかったはずです。でも、できなかった。

ウクライナって、NATOにも加盟しておらず、天然ガスをロシアに依存して、ロシアの債務国であるくせに、ここまでロシアと正面衝突して、自国を統一国家として維持することなど、経済的に見ても、地政学的に見ても、軍事的に見ても、まったく不可能でしょう。

にもかかわらず、一応選挙で選ばれた前大統領をネオナチ連中と組んでクーデター的に追い出して、しかも、ネオナチ党派と一緒になって新政権を樹立するなんて。ウクライナの新政府側は、後先のことを考えていないとしか思えません。もはやナショナリズムの暴走状態なのでしょう。ロシアもそうだけど。

このままいけば、ウクライナは分裂して、西と東に分かれるのでしょう。

ウクライナ新政府のほうも政権を維持するには、反ロシアのナショナリズムに乗るしかない。もはや簡単には後に引けない。

ロシアはロシアで、自国のナショナリズムに応えるために、欧米(NATO)との緩衝地帯としてクリミアや東ウクライナを介入するしかない。

両国の政治家とも、タイミングを見て、どっかで沈静化と妥協をせざるをえないことは分かっているが、チキンレースをまだ続けている、っという感じです。

ウクライナはその地政学的な位置からして、本来、NATOやEUにも、ロシアにも、従属せずに、中立不干渉の国として、欧米とロシアとの間でバランスをとるしかなかったはずです。そうでないと国の分裂を来すのは明白だった。

でも、ウクライナでは、その統一をはかるような政治家がいなかったし、もはや噴出したナショナリズムをコントロールすることができなくなったということです。

ナショナリズムは、その国の政治家や政府指導者も、コントロールできない魔物ということのようです。ウクライナは、自ら呼び出した悪魔に翻弄されるファウストのように、自らのナショナリズムの暴走によって、自国の分裂を招いてしまったことになります。

ナショナリズムがアウト・オブ・コントロールになる悪夢は、他人事ではないですね。日本と中国も、双方その兆しがあらわれています。

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解雇規制緩和 再論

■ジュリストの「解雇規制緩和」特集

ジュリスト2014年4月号で特集が組まれて、私も論述しています。

http://www.yuhikaku.co.jp/jurist/detail/019075

【特集】厳しい? 厳しくない?解雇規制      
◇解雇規制・規制改革の問題点――雇用安定の原則を崩すことがもたらす影響●水口洋介……39

この原稿を書く中で、あらためて「解雇法制を考える-法学と経済学の視点」(大竹文雄・大内伸也・山川隆一編/勁草書房2002年第1版)を読みなおしました。特に、民法学者である内田貴教授の「雇用をめぐる法と政策-解雇法制の正当性」との論文があらためて面白いとおもいました。

■解雇規制緩和論者曰く

厳しい解雇規制があるので、企業は容易に労働者を解雇できないことから、正社員の採用を抑制する。よって失業率が上がり、正社員雇用比率が下がる。

規制で守られる企業内の労働者(大企業正社員)と、守られない企業外の労働者(非正規労働者や中小企業労働者)との間に利害対立が生じており、厳格な解雇規制は中小企業労働者の犠牲の下に、大企業の労働組合の利益を擁護するもの。

つまり、日本の企業別に組織された労働市場においては、「厳格な解雇規制」は、既に雇用された正社員の雇用を保障するが、他方、景気が上向いても正社員の採用は抑制され、労働条件が低く雇用が不安定な非正規社員を増加させるだけとなり、成熟産業から成長産業への労働力の移動も円滑に進まず、日本経済の成長をも阻害する。

この論者に対して、日本国憲法の「生存権」や「労働権」を根拠として反論してきたのが伝統的な労働法学です。

内田貴教授は、そのような観点からではない批判を展開しています。

■内田貴教授の「切り口」

厳格な解雇規制が企業の採用行動に影響を与えて、正社員雇用を抑制し、その結果、失業率が上昇し、非正社員が増加しているということは、経済学的モデルのなかではそのように言えるかもしれないが、現実がモデル通りであるかどうかの確証はないのである。

中小企業においては、現実には解雇は相当に自由に行われており、むしろ、日本の雇用法制の問題点は、解雇権濫用法理が労働者を保護しすぎている点にではなく、強力な労働組合をもたない中小企業においては同法理による保護がおよんでいないという不平等にある、とも言われている。

企業が正規従業員の採用を躊躇しているから、非正規従業員が増加している、と言うわけである。しかし、日本では非正規従業員の給与は、同じ仕事内容の正規従業員より低い。企業が非正規従業員を雇用する理由は、解雇の容易さとともにこの人件費の節約という理由も大きいと思われる。そうである限り、仮に正規従業員の解雇を自由にしても、企業はなお非正規従業員の雇用を続けるだろう。

■内田教授の指摘を読んで

解雇規制を緩和すれば、雇用量が増加するとか、非正規労働者が減少するということは何ら実証されておらず 、机上の市場経済モデルの想定でしかないのでしょう。

現実社会では、解雇規制を緩和しても、成長産業に労働力が移動するとは限らず、成熟(衰退)産業の被解雇者が増えて失業者が増加するだけかもしれません。そうではないとする確証はありません。

また、非正規労働者が増えるのは人件費が安いからであり、解雇規制を緩和しても、企業は正社員を減らして非正規労働者に置き換えるだけかもしれません。これを否定する確証もない。

経済学者の多くは、日本には現時点で存在もしない非現実的な諸条件(例えば、外部労働市場が十分に整備されているとか、転職しても不利益を被らない制度があるなど都合の良い諸条件)を前提として、希望的観測を述べているにすぎないのでしょう 。

現実社会での解雇は、労働者とその家族に対して、時として回復不能なダメージを与えます。それは子供の進学断念等の悪影響をもたらし、家庭を破壊し、長期失業など社会的な損失が増加します。

失業というマクロ的な現象は、解雇法制という制度よりも、景気の好不況や為替の変動など経済の大状況によって左右されるものでしょう。

解雇される労働者を犠牲にして、社会実験のような解雇規制緩和策を実施すべきでとは思えません。

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2014年4月 6日 (日)

「原発再稼動」の政府方針に思う

■エネルギー基本計画

 政府は、石油や天然ガスの輸入によるコストアップという経済的な必要性を強調して原発再稼動を推進しようとしています。エネルギー基本計画が近々閣議決定されるそうです。安全神話への反省のない基本計画ですね。

http://newclassic.jp/archives/11438

 原発再稼動には、「厳格な安全性審査に合格した上で」との枕詞がつけられていますが、その「厳格な安全審査」がまったく信用できません。

 福島第1原発事故は「想定外」の大津波という極めて例外的な事故であり、今後は原発が再稼動しても事故は発生しないという「最善のシナリオ」に依存しているとしか感じられません。「最悪のシナリオ」を想定していないようです。

■「最悪のシナリオ」の巨大火山噴火は想定外?

 例えば、再稼動の「有力候補」である川内原発や玄海原発は、九州にあります。阿蘇山の巨大噴火が発生した場合、火砕流が原発に到達する危険性があります。「超巨大噴火なんて、およそ発生しない。想定するのがおかしい」なんて言えないでしょう。
 2011年3月11日の東日本大震災のM9.0の超巨大地震と大津波は、それまでは、まさに「想定外」だったのですから。

 阿蘇山の巨大噴火はけっして「想定外」なんかではありません。阿蘇山の巨大噴火が起こることを想定して原発の安全対策を審査すべきでしょう。

日本にあるいくつかの原発では、起こりえる場面だ。その原発とは、泊原発(北海道)、伊方原発(愛媛)、玄海原発(佐賀)、川内原発(鹿児島)の4つ。

東京大学地震研究所火山噴火予知研究センターの中田節也教授がこう警告する。「4つとも、過去に超巨大噴火の影響を受けたと考えられる場所にあります。火砕流が過去に到達したと思われる場所に建っているのです」

http://dot.asahi.com/wa/2013021200006.html

 このような巨大噴火がいったん発生したら、原発はどうしようもないでしょう。防ぎようがありません。火砕流域内に入った原発のメルトダウンと放射姓物質の大量放出は防ぎようもないでしょう。

■原発破壊攻撃は想定外?

 朝鮮半島有事による北朝鮮との戦争や尖閣諸島を発端としたに日中戦争も現実的に発生する可能性は十分にあります。特に、北朝鮮による突発的な軍事行動は遺憾ながら十分に有ります(戦前大日本帝国が米国の石油禁輸措置に反発して真珠湾攻撃を敢行したように)。

 この場合には、特殊攻撃部隊(特攻)による日本の原子力発電所への急襲は十分に有り得ます。これは「想定外」とは言えないでしょう。これに防戦できる対策は何もとられていない(戦争必至の情勢になってから警戒しても遅いのです)。 原発に重武装した警備部隊はおかれる対策もとられていません。そもそも戦争になった場合に、原発を敵方の攻撃からどのように防護するのかという作戦も安全審査もないように思います。

■繰り返す「敗戦」

 本当に再稼動推進派は、この地震活動期に入った日本で原発事故が二度と起こらないと本当に信じているのでしょうか? これが安全神話なんでしょうね。

 1941年12月、客観情報を無視し、軍部の目先の利益と政治指導者の自己保身のために、精神論だけで無謀な対英米戦争を開始した大日本帝国指導部を思い起こします。対米英開戦を決定した御前会議でも大本営でも、「最善のシナリオ」だけが検討されて、不都合な「最悪のシナリオ」を無視したのです。

 これと同じことを、日本はまた繰り返すとしか思えません。
 第三、第四の敗戦が待ち構えているようです。
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/08/post-3c5b.html

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2014年3月30日 (日)

国家戦略特区 福岡市は「解雇規制緩和」特区を提案していた

■2014年3月28日、政府の国家戦略特区審問会議の決定

諮問会議は、戦略特区を6地域(東京圏、関西圏、新潟市、養父市、福岡市)を発表しました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/dai4/siryo3_2.pdf

福岡市の部分には次のように記載されています。

<雇用・労働>

 創業後5年以内のベンチャー企業等に対する雇用条件の整備【雇用条件】

この「雇用条件の整備」の内容は不明ですが、この福岡市は、平成25年9月6日に国家戦略特区ワーキンググループに、ヒアリング資料を提出しています。このヒアリング資料は次に公表されています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/8-fukuoka.pdf

これを見ると、福岡市の特区は、「新たな起業と雇用を産み出すグローバル・スタートアップ国家戦略特区」と銘打っています。

新規事業の開業率を10年後に20%(現状6.4%)に向上することを目標としています。そのために福岡市は起業教育や起業支援を行い、国は「スタートアップ期に限定して、解雇規制の緩和」を行おうというものです。

これを諮問会議が認めたとしたら、福岡市の「ベンチャー企業等に対する雇用条件の整備」の内容は「解雇規制緩和」を意味していることになります。

つまり、高島宗一郎福岡市長は、企業の起業率向上や外資導入するために、創業(スタートアップ)時期に解雇規制緩和を実施するように求めたのです。

■国家戦略特区法では全国共通労働規制は緩和できないはず

国家戦略特区法制定の過程において、特区内で解雇規制や有期労働契約の規制緩和を行うことは強い批判が加えられました。

その結果、有期労働契約規制(無期転換ルール)については、特区での例外を定めることは断念されて、同法附則にて、全国共通の特例法を制定することになったのです。特区内での労働規制緩和はできないと「抵抗」したのは厚生労働省でした。

したがって、解雇規制を全国共通の規制を解除して、特区内だけで解雇規制を緩和することは、国家戦略特区法の制定経過にも反することになります。

だから特区諮問会議は「ベンチャー企業等に対する雇用条件の整備」という表現にしているのでしょうか。そうであれば、ごまかしです。

私は東京で学生生活を送っていましたが、転勤族の父親らが福岡市に住んでいたこともあり、大学時代に良く福岡に行ったので親しみをもっています。

その福岡市が、新たに新規事業拡大、起業率向上の施策を充実させることに異論はありません。ですが、解雇規制の緩和などをしなくても、九州中の若者が集い、アジアへの玄関口である福岡市であれば、他の支援策(経営者個人保証の緩和、投資支援等)を充実すれば、それで十分ではないでしょうか。

解雇をしやすくなったからといって正社員が増える保証はありません。もし、その程度の起業家なら正社員ではなく非正社員のみや派遣労働者のみで起業するでしょうから。

この福岡市の「雇用条件の整備」がどのようになるのかは要注目です。福岡市議会での審議、福岡の労働組合の積極的な調査や情報提供を期待しています。

ここで解雇規制緩和されれば、これが全国に波及すると思います。福岡の労働組合の役割は極めて重要です。

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2014年3月16日 (日)

読書日記 「絶望の裁判所」瀬木比呂志著

読書日記「絶望の裁判所」瀬木比呂志著

2014年2月20日発行
2014年3月14日読了

■元裁判官の引導渡し

裁判所を最高裁事務総局が支配する「檻」とし、裁判官をその「収容所群島」の囚人とまで激烈に批判しています。同じ様な批判は、「司法権力の内幕」を著した森炎氏(元裁判官)が、裁判官を「司法囚人」、フーコーの「パノプティコン」の状態だと指摘されていたことと共通です。

著者の瀬木氏は、1954(昭和29)年生まれで1979(昭和54)年に裁判官になり、最高裁調査官の経験もあり、東京地裁の総括判事(部長)もなったエリート裁判官です。裁判所内部で様々に冷遇されてきた青法協や懇話会系のいわゆる「左派系」の裁判官ではない点が異色です。著者自身、自由主義者で個人主義者であり、いかなる政治的立場にくみしないと言っています。


■裁判官としての経歴は次のとおり。

昭和54年4月~58年7月 東京地裁判事補(31期)
昭和58年8月~61年 静岡地・家裁判事補
昭和61年4月~63年3月 最高裁民事局付き
昭和63年4月~平成1年3月 東京地裁判事補
平成1年4月~4年3月 大阪地裁判事
平成4年3月~6年3月 那覇地・家裁沖縄支部総括判事
平成6年4月~平成7年3月 最高裁調査官
平成7年4月~11年3月 東京地裁判事
平成11年4月~15年3月 千葉地家裁判事
平成15年4月~22年3月 東京地裁判事
平成22年4月~24年3月 さいたま地家裁判事

■中途半端な「内部告発」

著者が最高裁にいる際に、最高裁判事が、ブルーパージ(青法協への弾圧)をしたことを吹聴し自慢していたというエピソードが語られています(本書32頁)。

また、東京地裁保全部にいたときに、国が債権者として仮の地位を定める仮処分命令事件があり、このときに法務省(国)と裁判所が事前に秘密裏に事前談合をしていたことが曝露されている。この事件は、「国のある機関がある特定の団体についてそこに出入りする人物をカメラを用いてチェックしていた」事件である(本書22頁)。

この事件は、公安調査庁が共産党本部の前のビルに隠しカメラを置いて出入りの人物を隠し撮りしていた事件のことでしょう。これは1988(昭和63)年ですから、著者が東京地裁判事補にいた頃ですから、保全部(民事9部)にいた時期に合致します。

もう一つ。ずっと後のこととして、「東京地裁の多数の部で審理が行われていた行われたことがある。裁判長の定例会議におけるある女性裁判長の提案により、裁判長たちが継続的な会合をもち、却下ないし棄却を暗黙の前提として審理の進め方等について相談を行ったのである」として不正を指摘している(本書23頁)

これは東京都が都立学校で卒業式等で君が代の起立斉唱を教職員に命令した「日の丸・君が代」事件のことに間違いないでしょう。

労働部(11部、19部、36部)など多数の訴訟が係属していました。そして東京地裁民事第11部(当時、三代川三千代裁判長(女性))もその一つでした。


ですから、上記事件は、東京都の君が代訴訟のことを意味していることは確実です。 もっとも、この中で、東京地裁36部(難波孝一裁判長)は違憲判決を出しいてます。三代川裁判長はその後、異動でして、佐村という裁判中居眠りすることが有名な裁判長のもとで合憲判決が下されました。

どうせ瀬木氏が内部告発するなら、上記事件の内容や発言した裁判官の実名を明らかにして、その結果も明確にすべきでしょう。特に、君が代関連事件では、そのような部を超えた裁判長の定例会議がありながら、違憲判決が出されたことを付言すべきでしょう。あたかも全て請求棄却となったような書きぶりは疑問が残ります。中途半端です。


■裁判所はどうなっているのか

瀬木氏の批判は、司法改革の中で、いっそう最高裁の官僚統制が強まってきた、と強調されいます。しかし、私はこの点は疑問に思います。

私の実感では、司法改革前のほうが、もっと非道かったと思います。瀬木氏が裁判長時代のことです。瀬木氏自身がその司法官僚の末端だったはずです。

それに比べれば「司法改革」の結果、「まだ少しましになったかなあ」というのが偽らざる感想です。 著書が、司法改革後に、より一層悪くなったというのは。??と思います。自分が裁判長の頃のほうがましだったと言いたいのでしょうか。


また裁判員裁判について、刑事裁判官の権力を維持するためのものだという見立ても、疑問を持ちます。司法改革の中で、裁判所は、裁判員裁判や労働審判に対して、絶対反対の立場でした。

最終的には、裁判所の抵抗はソンになると考えて、原則をまげてやむなく受け入れたということだと思います。 著書の裁判員裁判が刑事裁判官の復権のための「陰謀」であるかのような位置づけは、??と思います。著者はどのような立場だったのでしょうか?


■違和感が残る

この瀬木氏の「民事訴訟の本質と諸相」(日本評論社)も読みました。この論文集(と言うかエッセイ集)もこの新書と同様なことが書かれていました。この本には映画論や文化論も語られ、それなりに面白いと思いましたが、上から目線の物言いが嫌でした。

私は、司法修習生のときから青年法律家協会に入っているし、自由法曹団にも加入しています。ですから、瀬木氏の司法官僚制度に対する批判は、そのとおりだと思います。

しかし、この著書は、何か、違和感が残ります。何か気持ち悪い。

瀬木氏は、司法修習31期です。しかも、最高裁調査官や東京地裁民事部の総括判事にも就任している。

裁判所の中には、裁判官懇話会やそれぞれ裁判所や裁判官制度を良くしようと努力してきた裁判官もいました。瀬木氏は、その中でどのような立場にたち、裁判所内部でどのような努力をされてきたのでしょうか。


言っていることは正しいかもしれませんが、その自身の立場を謙虚に語ることなく、裁判官及び裁判所が絶望的だと決めつけるこの本は、私にとってさえ共感するのが困難です。

裁判官たちは、いっそう鼻白むでしょう。

瀬木氏自身が、その司法官僚制度なかでエリートコースを歩んできたにもかかわらず、自身を、被害者と位置づけているようです。自らの裁判官時代は、司法官僚制度にどっぷりつかっていたことでしょう。東京地裁時代に反動裁判官として批判されたこともあったはずです(31期の同期の弁護士がそのことを指摘しています)。

そのことへの謙虚な反省もなく、また裁判所内で地道な努力をしたわけでもないにもかかわらず、退職してから古巣を「絶望の裁判所」と罵倒する人物がよく分かりません。


私のような市井のマチベン(もっと裁判所的には評価が低い「労弁」、世間的には「ロー弁」ですが)にとっても、けっして、この本は読後感は良くありません。

何か、著者には裁判所に対するルサンチマンがあるのではないかと感じてしまいます。


■じゃあどうすれば裁判所は良くなるのか

著書は法曹一元制度を定言します。

私も、今は、考えても無駄なことは、時間の無駄だから考えないという年齢になりました。


裁判所が良くなる前提として、政治が良くなり、法律が良くなり、社会が良くなるしかありません。

裁判所は所詮、日本の社会と政治、そして日本人の法意識の反映でしかありません。

非効率で保守的な裁判制度は、結局、日本国民が容認していることなのです。 戦後70年たっても、その改良は見通しがありません。今のような状態が続くだけです。

このことはアメリカの学者も指摘しています(「日本の最高裁を解剖する-アメリカの研究者からみた日本の司法」デイヴィット・S・ロー著、西川伸一訳・現代人文社)。 所詮、司法は日本の社会と政治の反映にしかすぎないと。

したがって、今のような裁判所制度は、今後、ずっと続くでしょう。

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2014年2月16日 (日)

政治指導者の「決断」と「喝采」-カール・シュミット理論の再来

安倍晋三首相が、集団的自衛権についての憲法解釈の変更の可否を問われて、「(政府の)最高の責任者は私だ。政府の答弁に私が責任をもって、そのうえで選挙で審判を受ける」と答弁したことで、論争を呼んでいます。

昨今、選挙で選ばれた政治指導者の「決断」が持てはやされます。
「決めるのは俺だ」という手法は、橋下徹氏が得意であり、多数の国民は喝采をあげて受け入れているようです。
これは政治指導者の「決断主義」と言えるでしょう。

「決断主義」と言えば、カール・シュミットです。

カール・シュミットは、第2次世界大戦前のドイツ・ワイマール時代の憲法学者であり、ナチス法学の泰斗です。大学時代、カール・シュミットとハンス・ケルゼンを比較をした講義(憲法原論)を受けたときの受け売りです。昔のことなので理解が間違っているかもしれません。

カール・シュミットは「政治社会」の本質をシンプルに指摘しています。

○政治社会とは、支配者と被支配者が存在する「支配-被支配関係」である。
○支配者とは、法的には「主権者」のことである。
○政治の本質は、「友敵関係」である。
○支配者は、政治社会の「敵」を決めることができる。
○支配者(主権者)は決断者である。
○支配者(主権者)は「例外状況」(戦争や革命)において決断者として登場する。
○支配者の決断は「民衆の喝采(アクラマチオ)」によって支えられる。

ナチズムを法学的に支えたカール・シュミットですが、これは政治社会の本質を良く言い当てています。

安倍晋三氏の「選挙(つまり、民衆の喝采)によって憲法解釈を決定するのは政治指導者である」という考え方は、カール・シュミット理論と極めて近い考え方です。

カール・シュミットに対抗したドイツの法学者がハンス・ケルゼンでした。ハンス・ケルゼンは、「デモクラシーの本質と価値」の中で、マルキシズムとナチズムを強く批判します。

デモクラシーは多数決原理であるが、少数者の保護が必要不可欠であり、少数者保護を欠くデモクラシーは(ボルシェビキやナチズムのように)独裁に行き着く。

この左右の独裁主義を批判したハンス・ケルゼンの指摘は見事にあたった。今も有効だと思います。

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2014年2月 9日 (日)

「都知事選での一本化」と改憲争点総選挙での「改憲反対一本化」

都知事選は予想通りの結果。舛添氏のダブルスコアでの勝利。

舛添氏が約210万票、宇都宮氏が約97万票、細川氏が約94万票、田母神氏が約60万票です。

最大のサプライズは、田母神氏が60万票も獲得したこと。極右勢力が政治的な一定の地歩を固めた初めての選挙です。田母神氏躍進は、安倍内閣の右傾化と絡めて国際的なニュースになることでしょう。

次の最大の政治的争点として、憲法改正(改憲)が浮上します。

2年後の国政選挙時期に景気が良ければ、安倍首相は改憲を公約として、衆・参同時選挙に打って出て勝負をかけることでしょう。

さて、そのとき、衆議院選挙の小選挙区選挙で、「改憲反対派」は統一候補を擁立できるでしょうか。

改憲反対の一点で、改憲に反対する諸政党が、小選挙区制で統一候補をたてなければ、自民党や維新の党に敗北することは必至です。あらためて言うまでもないことですが、都知事選で目の当たりにしました。

具体的には、自衛隊合憲・安保条約賛成であっても、解雇規制を緩和すべきという規制改革論者であっても、また、TPP賛成派であっても、改憲には反対という人々と「改憲反対」一点で歩調を合わせることができるかどうか

共産党や社民党だけでは、改憲派の小選挙区制での議席獲得を阻止できないという現実を踏まえて、改憲反対の統一候補を考えなければいけない時期が近づきつつあるように思えます。

今回の都知事選は、予行演習であり、教訓とすべきでしょう。             

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2014年1月26日 (日)

フレッシュフィールズ岡田弁護士の解雇法制改革

昨年(2013年)11月6日の産業競争力会議「雇用・人材分科会」の有識者ヒアリングにて、フレッシュフィールズ法律事務所の岡田和樹弁護士が、外国企業から見た日本の解雇法制の問題点だとして、次のように指摘している。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/bunka/koyou_hearing/dai2/siryou2.pdf

①試用期間が機能していないこと
②実質的に勤務成績や経営状態を理由とする解雇が禁止されているに等しいこと
③裁判官が企業活動の実態を知らないこと
④仲裁が認められていないこと

そして、②の解雇法制の改革として次のような労働契約法の改正を提案している。

・労働契約法第16条(解雇)の改正

「解雇(試用期間中のものを除く)は、労働契約成立の経緯、使用者の雇用管理の状況、解雇に至る経緯、解雇に伴って支払われた金銭の額などに照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用としたものとして、無効とする。」

「労働契約成立の経緯、使用者の雇用管理の状況」を考慮要素とすることで、欧米的な職務を主体とした能力主義雇用管理をしていれば、その職務能力がないことを理由とする解雇を容易にしたいのでしょう。

「解雇に伴って支払われた金銭」を考慮要素とするのは、一定の金額を提供すれば、解雇が有効となるようにしたいからです。

従来議論されてきた解雇金銭解決制度は、解雇が無効であっても、お金を払えば雇用契約を解消することができるという制度(事後型金銭解決)でした。

他方、上記提案は、解雇理由が根拠薄弱でも解雇無効であっても、それを金銭で埋め合わせて解雇を有効とすることができるという制度。事前型金銭解決制度です。外国企業にとっては確かに都合の良い制度でしょう。逆に、働く人にとっては不利になります。

あくまで有識者ヒアリングにすぎません。ただ、今後の展開次第では、産業競争力会議から労働契約法16条改正を発議する呼び水になるかもしれません。

このような法改正がなされたら、月給の2~3ヶ月分の金銭提供しての解雇通告が乱発されることに間違いなくなります。

経営側は、「ともかく2,3ヶ月支払って解雇してみて、裁判や労働審判で旗色が悪くなったら、裁判所の顔色見ながら、あと数ヶ月支払うと言ってやればいいや。」って考えるでしょう。

「安上がりの解雇が容易となり外国企業が参入しやすい日本になる。だから、外国企業がいっぱい日本に投資をするから、日本経済が成長し、雇用量が増加して、失業者が減少して、賃金も上昇して、少子化も解消するから万々歳。」

って、産業競争力会議は本当に思っているんでしょうかね。トクするのは経営側だけだけど、それを言ったら身も蓋もないから、「経済成長しなければ雇用も良くならない」などと言っているだけでしょう。

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「脱原発」の現実性

読書日記「原子力発電の政治経済学」伊東光晴著
(岩波書店)2013年10月第1刷、2014年1月25日読了

経済学者の伊東光晴京大名誉教授の脱原発論。伊東教授は、原子力発電所の継続は不可能であり、「脱原発」は経済的に見て可能だとされています。他の脱原発本より、伊東教授の見解は、事実に基づく立論で説得力があると思います。

■原子力発電は継続不可能

○核廃棄物処理の目処がたたない。
過去に1兆円をつぎ込んだ高速増殖炉「もんじゅ」は、1995年12月のナトリウム冷却漏れ事故、2010年10月炉内中継装置脱落事故、2012年11月と2013年2月の点検漏れ事件などが多発して運転再開の目処はたっていない。

もはや、日本も核燃料再処理事業から撤退するしかない。日本とロシア以外の米英仏伊独は全て撤退を決めている。高速増殖炉がなければ、日本の核燃料再処理事業、それを前提とした核廃棄物処理事業はすべて成り立たない。

○老朽化原発は廃炉しかない。
強い放射線に晒されて原子炉が脆弱化しており、緊急停止時に圧力容器が破壊される可能性がある(井上博満東大名誉教授の指摘。同教授によれば、最も危険なワースト7は、玄海1号、美浜1号、同2号、大飯2号、高浜1号)。

また、原発メーカーのウエスティングハウス社(WH社)は耐用期間30年で設計しており、同じくGE社は40年で設計しているという。日本では30年を超えて運転されている原発は20基、3基が40年をこえて10年の稼働を認められている。設計上の耐用期間を経過した原発の再稼動は認められまい。

■原子力発電がなくても電力はまかなえる

○短期的には節電をすれば乗り越えられる。
このことは既に2011年、2012年、2013年の夏場を乗り切って証明されている。

○問題は中長期的に経済的に可能かどうか。また、CO2を増加させないことは可能か。

伊東教授によれば、

同一発電量に対する電源別のCO2発生の比率をみると、石炭火力100に対し、石油が約75、天然ガスが約55である。他方、電力各社の発電量は、年度によって電源別比率が変わっているが、おおよそ石炭火力25%、天然ガス30%弱、原子力30%弱、石油等7~8%であり、その他水力8%となっている。(2011年11月「世界」掲載時点)

2012年度の電源別比率は、石炭27.6%、石油18.3%、天然ガス42.5%、原子力1.7%、その他水力10%

天然ガスはLNG発電新技術が導入されて発電効率が高くなっている。石炭火力の比率を落として、最新鋭の天然ガスのLNG発電に切り替えることで、CO2が大きく削減される

JR東海は、電力を大量消費するリニアモーターカーを作るよりも、その資金でLNGによる自家発電所を作るようにすべき。

○日本は天然ガスを割高に購入している問題点

日本の天然ガスの市価は15ドルと高い。アメリカは5ドル、ヨーロッパ各国は約10ドル強。これは価格が石油価格にリンクされた長期契約であるため。資源エネルギー庁による規制方法を改善すれば、これほどの大きな価格差は改善される。

○米国発の「シェールガス革命」による大変化

シェールガス革命は、世界エネルギー事情を大きく変える。世界一の埋蔵量は中国、次に米国、アルゼンチンが続く。世界的に見れば膨大なシェールガスが埋蔵されており、天然ガスの価格は下がる。このLNGガスが活用されれば、原子力に依存することなく電力供給は経済的に十分に成り立ち、CO2 抑制にも繋がる。

○有望な地熱発電

さらに将来的には、日本では地熱発電を活用することができる。この地熱発電所を作るメーカーは三菱重工、東芝、富士電機の三社で世界シェアの70%を占めている。国立公園法を改正する必要があるし、今から地熱発電所を建設してもあと10年はかかるから将来課題。

○夢のような新技術

もっと夢のような技術は、宇宙太陽光発電である。宇宙空間に太陽電池をつくり、マイクロ波で地上に送電する。JAXAは2030年代の宇宙太陽光発電を計画しているという。
日本での風力発電や地表での太陽光発電は効率が悪く、電力供給も不安定であり、これに期待する政策を遂行することは経済的に見て愚策。

■脱原発は夢物語ではない

伊東教授の指摘するように、脱原発は、経済的にも実行可能のようです。

政治、官僚、産業、科学者が利益共同体を形作り、利権構造が地域経済を含めて原子力発電システムを維持・活用してきました。しかし、「3.11」により、問題点が明らかになりました。

今度、原発事故が起これば、日本は大ダメージを被ります。日本のような地震大国では、しかも老朽原発が再稼動されれば事故の可能性が高いでしょう。

原発研究者や電力会社は安全だと強調するでしょう。しかし、あの「3.11」の際に醜態をさらし、いまだ事故原因も明らかにできず、事故処理の目処もたてられない原発研究者や電力会社が安全性を強調しても、それを信用する人っているでしょうか?

最終的な核廃棄物処理も目処がたちません。きっと核汚染された福島のどこかに核廃棄物最終貯蔵所をつくることを、官僚や電力会社、政治家は既に決めていることでしょう。あとは、ほとぼりが醒めるのを待って、数年後、タイミングを見て発表すると思います。ちょうど、沖縄の米軍基地問題のように。また、古くは足尾銅山の被害地の谷中村のように。
地域の切り捨てという「棄民」です。

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2014年1月 5日 (日)

政教分離と靖国神社参拝 再論

■外国の反発は本質的な問題ではない

昨年末の安倍首相の靖国神社参拝は、中国、韓国だけでなく、米国政府からも懸念が表明(失望)され、EU外交部門やロシアから批判、ドイツの首相報道官から日本への忠告などがありました。

外交問題は重要ですが、本質的な問題ではない。A級戦犯が靖国神社から分祀されても、政教分離と靖国神社参拝問題が解決するわけではありません。

■日本国憲法の政教分離原則

戦没者に政府が追悼すること自体は誰も反対していない。宗教的に中立の儀式で首相が追悼することには何ら問題はないのです。

問題は、その追悼が靖国神社という宗教法人に参拝する方法で行われる点です。

内閣総理大臣の靖国神社参拝は、憲法20条3項の「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」に違反するという憲法問題が生じます。

外交問題は大きく取り上げるマスコミが、憲法問題をきちんと報道・解説していないと思います。

■政教分離なんか関係ないという俗説

アメリカ合衆国では、大統領が就任式で聖書に手をおいて宣誓したり、裁判でも証人は聖書に手を置いて宣誓したりするから、政教分離なんかは各国の事情で緩やかに解されて良いのだ、という見解があります。

確かに、オバマ大統領も就任に際して聖書を用いて宣誓しました。しかし、過去には政教分離を厳格に考えて聖書を用いないで宣誓した大統領もいたそうです。個人として宣誓する際には聖書を用いることも許容されるという解釈のようです。裁判の証人宣誓も、聖書でなく、コーランで宣誓したいと言えば、コーランを用いて宣誓することも許容されるそうですし、無宗教でも良いそうです。

政教分離といっても、完全な政教分離は現代社会では不可能です。例えば、宗教系の学校に公費で教育費助成をしないことは子どもの教育を受ける権利や平等原則から問題になりますからね。

ですから、アメリカも日本も他の国も、どこまで国家が宗教に関与できるか、見解の対立が続いてきました。裁判でも争われています。特に、グレーゾーンについて各国のお国柄の下、様々な深刻な対立があります。

アメリカでは、学校の教室で生徒が忠誠宣誓(神の下の一体不可分の共和国に忠誠を尽くす)を行うことが政教分離違反(米合衆国憲法修正1条違反)かどうかが争われてきました。米国連邦最高裁でも過去に違憲判決が出されましたが、最近、合憲判決も出たようです。今でも、ホットな議論が続いています。

フランスでは、学校でイスラムのスカーフを被ることを認めるか認めないか、政教分離との関係で深刻な社会問題になっています。

■日本では 日本の最高裁判決を前提に

憲法という法律問題として議論を整理したいと思います。そのためには、既に出された現在の最高裁大法廷判決の「目的・効果基準」を前提として議論しましょう。

国論を二分する憲法問題については、最高裁判決を理解した上で議論することが求められます。「法の支配」を旨とする近代国家である以上、当然です。最高裁判決は無視しては「法の支配」を否定することになりかねません。

中国では、この「法の支配」が確立していません。最高裁判決を無視することは、中国と一緒のレベルになってしまいます。

■政教分離に関する最高裁大法廷判決

最高裁大法廷判決には、津地鎮祭合憲判決(昭和52年7月13日)や愛媛玉串料違憲判決(平成9年4月2日)、砂川空知太神社違憲判決(平成22年1月20日)があります。

愛媛玉串料最高裁判決の骨子は次のようなものです。

① 政教分離原則(20条1項後段、同条3項、89条)は、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を求めている。

② 日本帝国憲法下では、国家神道に国教的な地位が与えられており、信教の自由の保障が不完全であり、宗教迫害などの弊害を生じたため、日本国憲法は、信教の自由の絶対的保障と政教分離規定を設けた。憲法は、国家と宗教との完全な分離を理想とし、国家の非宗教性ないし宗教的中立性を確保しようとした。

③ しかしながら、国家が社会的規制を及ぼしたり、教育・福祉・文化等への助成援助等をしたりするには、宗教との関わり合いを生ずることを免れることはできないから、現実の国家制度としては、完全な分離は実際上不可能である。

④ そこで、政教分離原則は、国家に宗教的中立性を求めるものであるが、完全に分離することはできず、国家の行為の目的及び効果にかんがみて、その関わり合いが我が国の社会的・文化的諸条件に照らし相当とされる限度を超えるものと認められる場合には許されない

⑤ 憲法20条3項にいう宗教的活動とは、当該行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長、促進又は圧迫、干渉等になるような行為をいう。

 実際の適用では、市立体育館建設にあたって津市が主催して地鎮祭を執り行ったことは合憲、愛媛県の神社への玉串料支出は宗教的意義が深い支出であり違憲、砂川町が神社に土地等を提供したことは違憲、という結論になっています。

■靖国神社参拝はどうか

今までの最高裁判決事件は、公金の支出や土地等の物的提供という類型でした。靖国神社への内閣総理大臣の参拝は、単に公金の支出や便宜供与ではなく、まさに行政府の代表者の参拝という宗教的意義をもつ行為が問題になります。

上記最高裁の目的・効果基準で判断すると、内閣総理大臣の参拝の目的が仮に「戦没者の追悼」という世俗的かつ政治的目的であるといっても、靖国神社への参拝は神道の深い宗教的意義を有することは否定できません。仏教寺院やキリスト教会、あるいはイスラム教会に内閣総理大臣が戦没者の追悼のために参拝ないし礼拝したとしたら、それは宗教的活動のほかならないでしょう。靖国神社であっても同様です。

効果としても、国及び内閣が一宗教法人である靖国神社を特別視し、他の宗教団体にない優越的地位を与えることになります。戦没者を追悼する式典は他にも様々な方法がありえますが、それを敢えて靖国神社で行うことは、靖国神社を事実上、戦没者の追悼するための国家的な特別な宗教施設として扱うことです。参拝は伝統行事や世俗的行為とはいえず、靖国神社の宗教を援助、助長し促進する効果を有することになります。

■靖国神社への内閣総理大臣の参拝は違憲

以上のとおり、一連の最高裁大法廷判決の論理からすれば、内閣総理大臣の靖国神社参拝は違憲と判断されるでしょう。これを合憲とする論理は難しい。

一つありえるとしたら、「靖国神社への参拝は、宗教的行為ではない」という論理でしょう。しかし、260万柱もの英霊が奉られている靖国神社への参拝を宗教的行為ではないというのは、靖国神社の宗教性自体を否定することになり、それは背理でしょう。

■伊勢神宮参拝は?

内閣総理大臣ら閣僚の伊勢神宮参拝についても、政教分離違反の疑いが濃厚です。ただし、この伊勢神宮参拝が1月4日に行われており、一般の初詣と同様、世俗化しているという点は靖国神社への参拝とは異なった面があります。

■宗教的に中立な国立追悼施設の建設による解決

ということで、憲法が政教分離を定めている以上、戦没者の追悼は、宗教的に中立な国立追悼施設を建築する解決策しかないと思います。しかし、戦後70年近く経過しても、このシンプルな道理が通らないのは本当に不思議です。

なぜ、この正論が実現しないのでしょうか。

■靖国神社問題の背景にあるのは戦争責任論

それは、靖国神社問題は、第2次世界大戦が日本の侵略戦争なのか否か、その戦争責任は誰にあるのかという大問題と直結しているからです。

ある人々にとっては、先の戦争は「自存自衛の聖戦」にほかならず、今になっても日本が戦争責任を糾弾されることは納得できない、のでしょう。

他方、私のように戦後民主主義と憲法を肯定する者(今や少数派?)は、先の戦争は「侵略戦争」にほかならず、当時の政治指導者と軍部は諸外国と日本人に多大な被害を及ぼした戦争責任があると考えます。なお、この立場の人は、中道保守や自由主義者など、左翼でない人も含まれています。

この政治的・思想的な対立が靖国神社参拝問題の背景にあるので、未だに解決が難しいのです。

私は、昔は時がたち戦争に従軍した人々が少なくなれば、自ずと後者の見解が多数派になると思っていましたが、必ずしもそうでもないようです。

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2013年12月30日 (月)

安倍晋三総理のアメリカへの挑戦(その2)

■小泉総理の靖国参拝を許して、何故、安倍総理だと米国は失望するのか

安倍晋三総理の靖国神社参拝について、米国政府が「失望」という外交的儀礼としては厳しい日本批判をした。

小泉総理が靖国神社に参拝したときには、米国は沈黙を守ったのに。

内田樹氏は、米国は中国と日本が対立することが米国の国益に合致すると考えているから、米国は沈黙していると分析していました。

では、何故、今、米国は安倍首相の靖国神社参拝について非難するのでしょうか。

先ず、オバマ大統領がリベラル派であることが考えられます。

オバマ大統領は、自由と民主主義を基本的な価値とする日本国憲法を敵視する安倍晋三という戦前志向の国粋主義者に嫌悪感を持っているのではないでしょうか。オバマ大統領は、ロースクールで憲法を教えていた活動家でもある弁護士ですからね。

米国の共和党大統領であれば、どんな軍事独裁政権でも米国の国益に合致すれば支援してきました。しかし、オバマ大統領はもっとナイーブなのかもしれません。

より重要なのは、客観情勢の違いですね。中国の国力増強と日本との次のような緊張関係の相違です。

■日中軍事衝突を想定している米国?

米国は、日本と中国の軍事衝突の蓋然性が高いと分析しているのではないでしょうか。

尖閣諸島周辺で偶発的な軍事衝突は迫っていると。安倍首相は靖国神社参拝で、その危険性が高めた。このまま安倍首相を野放しにすれば、本当に日中軍事衝突までエスカレートしかねないと危惧しているように思います。

米国とすれば、中東情勢や北朝鮮の核武装問題という大きな問題があるのに。中韓日米が結束して北朝鮮の非核化を実行しなければならないのに。その障害を増やしてどうする。安倍首相の個人的な信念で、東アジアで余計なリスクや負担を強いられたくないと考えているのではないでしょうか。

もし僕が米国政府の立場ならそう考えます。「もっとうまくやってくれよ、お坊ちゃん」ってね。

■日本の孤立化 自業自得だけど

今回の安倍首相の靖国神社参拝によって、東アジアでは、中国と韓国が接近する。北朝鮮はこれ幸いと日本を非難し日朝関係を冷え込ませる。そして、中国、韓国、北朝鮮のブロックができる。ロシアも靖国崇拝の安倍総理の日本とは距離をとる。

米国は、中国との対立は望まず、中国アジア地域の経済成長にコミットしたいので、無用な緊張を高める日本には冷淡になる。少なくとも米国世論が日本に冷淡になる。

となれば、ASEAN諸国は、日本に頼るより、米国のほうが頼りがいがあるので、中国と事を構える日本に助力をしたくはない。とばっちりも受けたくない。

EU、特にドイツは、中国市場を開拓したいので、日本批判を強める。

中国軍部は、これを見て、強気に軍事攻勢をかける。

ということで、日本の世界的な孤立化が進むように思います。

■アメリカは安倍総理を排除して親米政権をつくろうとする

安倍晋三総理は、この日本の孤立化を避けるためには、TPPに参加して米国に経済的メリットを与えなければならない。沖縄基地をもっと充実するように米国に秋波を送らなきゃいけない。

でも、アメリカは、自分の面子を潰した安倍晋三という政治家を許さないと思います。ここで甘い顔を見せれば将来に禍根を残す。もっと良い政治家は自民党内にはいくらでもいると思っているでしょうね。

次の自民党総裁選で安倍を再選させないように介入してくるのではないでしょうか。安倍晋三は米国の「虎の尾」を踏んだ鳩山のようになるのではないでしょうか。今後、2~3年は日米関係は見物です。

■そこで、日本の右翼が伸びるか

そうなったとき、ネット右翼のような勢力が、反米・愛国日本を掲げた右翼民族主義の一大政治勢力に踊り出るかもしれません。そのリーダーは石原大元帥と橋下大阪市長になるのでしょう。安倍靖国参拝に狂喜するネット住人たちを見るとそう思います。一大政治勢力ですよね。米国大使館のFacebookネット炎上という前代未聞の行動もとれるのですから。

そのときの政治課題は、日本の自主独立(対米自主外交)と憲法改正になるでしょう。

まさに歴史は繰り返す。一度目は悲劇として二度目は喜劇として。

そんなことより、日本政府には震災対策と地球温暖化対策を期待したいけど。

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2013年 本ブログのアクセスランキング

アクセス数が12月29日で累計約65万5000になりました。以下、私のブログのアクセスランキングです。今年60万を突破したように思います。が、今年のアクセス数は数えていませんでした。およそ6万~7万件くらい?

2013年司法試験と予備試験のブログが3位なのは意外でした。
アベノミクス関係も二つともいっています。これも少し意外。他の政治論と少し異なり、アベノミクスの1本目と2本目の矢を評価していたので。

1  有期労働契約の「更新上限の合意」への対応策
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-b579.html

いくつか、「役に立った。更新上限合意のサインを拒否できた」というメールをもらいました。

2  アベノミクス 「アメリカは日本経済の復活を知っている」(浜田宏一著)と「不況は人災です」(松尾匡著)
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/02/post-c07e.html

来年4月に賃金上昇の目処がたたないとアベノミクス失速でしょうね。                 とはいえ、賃上げの第1次的責任は、労働組合にあります。連合や全労連の責任は重大です。ストぐらいしてみたらどうでしょう。

3 2013年司法試験と予備試験
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/09/2013-97cd.html

多くの弁護士がロールクールを批判し、ロースクール出身者に能力がないと言ったり、あたかも昔の旧司法試験が良いといったり、司法研修所教育を賛美したりする論調には賛成できないというのが私の立場です。だから青年法律家協会系とか自由法曹団系弁護士には評判が悪い。「連合」に迎合する労弁派と揶揄されたりする。他方、反司法改革系弁護士からは、何故か「アカの自由法曹団系だから日弁連執行部に迎合している」などと批判される。

それはともかく、この記事が3位ということは、弁護士よりも法学生やロースクール生が多くアクセスしたように思います。

4  改正労働契約法20条の活用と菅野説批判
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/02/post-93fc.html

有期労働契約を理由とする不合理な労働条件の禁止の活用。大分と滋賀で訴訟があるとされています。是非、今年は懸案の事件を提訴したいと思っています。

5  再論:改正パートタイム労働法と丸子警報器事件
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2008/02/post_37aa.html

来年の通常国会で、パートタイム労働法改正はどうなるでしょうか。今の雇用改革(規制緩和)の流れに逆行するとして立法化されないかもしれません。

6 有期契約を理由とする不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条) アンケートも
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/20-cf2d.html

法律解説記事。労働組合の方がアクセスしてくれた模様。

7  解雇自由化と解雇金銭解決制度 「解雇の沙汰も金次第」第2ラウンド
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-11e7.html

これから必ず急浮上してくると思います。

8  債権法改正の中間試案(案)
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/03/post-ec13.html

雇用や労働法分野について、一時危惧された悪影響はだいぶなくなりました。しかし、いろいろ課題と問題が残されています。今や、この記事はだいぶ情勢にあっていない。これからまたテーマにして書いてみます。

9  ”アベノミクス”とP・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/01/post-2a4e.html

ここでの「予測」は的中した。

10 読書日記「法服の王国」黒木亮著
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/09/post-15a1.html

意外に健闘した。ベストセラーーだったんですね。

11 限定型正社員の狙いは、やはり解雇ルール緩和策
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/05/post-22e7.html

ジョブ型正社員の普及への具体策が来年、具体化するでしょう。でも、経営者側の狙いは変わっていないと思っています。

12 非嫡出子相続分差別 最高裁大法廷判決へ
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/07/post-06e7.html

違憲判決前の当事者による解決。良識のある市民っているものなのだ。

13  マイレージ、マイライフと日本IBM型解雇
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/07/post-b671.html

14  映画「SP革命編」
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2011/04/post-9c76.html

何故か、こんな映画感想がランクインです。

15 八代尚宏教授の「正社員の解雇規制改革」批判(その1)-解雇規制は中小企業労働者や女性労働者を犠牲しているか?
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/08/post-c2b9.html

八代教授 徹底批判 のつもりの記事。
昨日報道された朝日新聞の世論調査(20代)では、「格差が大きくなっても、経済成長が社会が望ましい」と答えた20代若者が4割(30以上は3割)にも達するそうです。八代教授の考えは結構影響力をもっているのですね。「だから今時の若い奴は…」とは言いません。でも、今の社会で痛い目にあっているのが20代のように思うのだが? オジサンは古いので良く判りません。

イギリスのジョーク
10代でマルキストでない奴は、ガッツがない。
20代でマルキストでない奴は、優しさがない。
30代以上でマルキストなのは、頭脳がない。

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2013年12月29日 (日)

安倍晋三総理のアメリカへの挑戦  靖国神社参拝

安倍晋三総理大臣が靖国神社に参拝しました。

■War Shrine
靖国神社のことを英米は「War Shrine」と英訳しています。
http://www.nytimes.com/2013/12/26/world/asia/japanese-premier-visits-contentious-war-shrine.html?_r=0

もともと靖国神社は、官軍(皇軍・旧陸海軍)所轄の軍人追悼の宗教施設(戊申戦争以後の戦闘で死亡した官軍将兵を奉る招魂社)ですから、「戦争神社」が間違っているわけではありません。

■問題は政教分離違反であること

戦争で亡くなった将兵を政府が追悼することは何も問題はない。このこと自体には誰も反対していない(中国や韓国含めて、私も)。

問題は、憲法20条3項の「国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。」に反することです。内閣総理大臣である以上、その肩書きで靖国神社に参拝することは、私的であろうと内心で何を考えていようと、宗教的活動に該当することになります。

■なぜ政教分離が定められているのか

政教分離を憲法が定めている理由は、政府が到底の宗教を保護したり、優越的な地位を認めれば、個々の国民の信教や思想良心の自由を侵害するからです。また、日本は、第二次世界大戦では、靖国神社を国民を戦争に動員するために最大限に活用され、参拝などが強制されたので、このような「国家神道」の愚行を繰り返さないためです。

日本国憲法なんて占領憲法だから無視しろって人もいます。が、世間に通用しない奇矯な見解なので、よい子は相手にしないほうが良い。

ということで、靖国神社参拝が大きな問題になったのは、中国や韓国が反対しているから、ではありません。中国や韓国が靖国神社参拝に抗議するようになったのは「戦犯の合祀問題」が表面化してからです(1979年以降)。ちなみに国内ではもっと以前から靖国神社参拝憲法違反論は強かったのです。

■戦犯合祀問題と戦争責任問題

もう一つの問題は、靖国神社が戦争指導者であった東条英機らを合祀していることです(1978年合祀)。第2次世界大戦、つまり、日本の中国アジア戦争、そして太平洋戦争が、侵略戦争であったことは、紛れもない歴史的事実です。

個人的には、対米英蘭との戦争は植民地争奪のための帝国主義戦争(帝国主義国家同士の五分五分)、アジア諸国民に対する戦争は征服戦争(120%の侵略戦争)と思っています。

靖国神社は、先の第2次世界大戦を侵略戦争とは考えません。対米英蘭に包囲されたための自存自衛の聖戦だったと考えています。ですから、東条英機らを戦犯とした極東国際軍事裁判自体を否定して、A級戦犯を受け入れず、この汚名を払拭したいと考えています。安倍晋三内閣総理大臣も、まったく同じ信念を持っています。自民党幹部の多くも、これが本音なのでしょう。

自存自衛の聖戦だと強弁する人も確かにいます(世論調査では支持する日本人は少数派ですが)。しかし、これは世界に通用しない独りよがりの見解なので、よい子は相手にしないほうが良い。「ナチスのユダヤ人虐殺は嘘だ」って世界の中で叫ぶのと同じ類いになっちゃうからね。

第2次世界大戦、日本が中国とアジアを侵略し、最後には全世界と戦争をする羽目になった当時の日本の政治指導者と軍部に戦争責任がないのでしょうか。その結果、日本人を含めて何百万人もの犠牲者を出した責任は誰にあるのでしょう。日本人は「一億総懺悔」って言うだけで、結局、昭和天皇をはじめに誰も自ら責任をとらず、自らまだ答えを出していません。極東軍事裁判は戦勝国の外在的裁判であり、これとは別に日本人として自ら内在的に戦争責任を再度、深く考えるべきです。

■戦後「国際秩序」(国際連合)への挑戦

東条英機らの戦争指導者が合祀された靖国神社に内閣総理大臣が参拝することは、この戦争指導者らの戦争責任を免責し、逆に賛美する行為になりかねません。外から見れば、確実にそう見えますし、それは第2次世界大戦の国際秩序に真っ向から反対する意思を表明する愚挙です。

何しろ「国連 UN」(国際連合)とは、まさに「連合国 UN」(英米蘭仏ソ中等)です。日本(東条英機)は、この「連合国UN」(国連)に対して、ナチス・ドイツ(ヒトラー)、ファシズム・イタリア(ムッソリーニ)と軍事同盟を組んでともに戦ったのですから。

「ヒトラーのお墓にお参りするように見られかねない」とテレビでコメントした女性芸能人がいたそうですが、そのとおりです。この発言を非難する人は、ヒトラーと日本が軍事同盟を結んで米ソと戦争していたことを知らないのでしょうか?

■アメリカに対する挑戦状? 米国「失望」コメントは想定内

報道を見ると、安倍晋三内閣にとって、アメリカが「失望」とのコメントを出したことは安倍首相にとって予想外であったかのように書かれています。

しかし、安倍首相にとっては、想定内のことだったのかもしれません。

アメリカ政府が靖国神社参拝をしないようにと幾度もメッセージを送ってきました。
特に、今年10月3日にジョン・ケリー米国務長官とチャック・ヘーゲル国防長官が連れ添って、東京・千鳥ヶ淵戦没者墓苑を訪れ、献花、黙祷を捧げたのです。このこと自体、すごいことです。米国と日本は戦争した間柄です(リメンバー・パールハーバーの戦争相手国です)。その国務長官と国防長官が日本軍人の墓苑に献花するのですから。

日本の外務大臣と国防大臣が、中国にいって日本軍と戦った人民軍兵士や抗日ゲリラの墓に献花し、黙祷することを想像すれば、相当に思い切った外交パフォーマンスだということが誰にもわかるでしょう。

これは明白に、靖国神社参拝は認めないというアメリカのメッセージです。このことを安倍首相もその側近たちも十分に認識していたはずです。それでも、これを無視して安倍首相は、靖国神社に参拝した。十分な計算を尽くして、タイミングを見ての行動でしょう。

これを無視されたアメリカは面子を潰されたことになります。なにしろ米国務長官や国防長官の世代にとっては、親父たちはこの前の戦で殺し合ったのですから(私の世代もそうです)。憎き敵兵の墓に献花までしてやったのに、と怒り心頭でしょう。

■普天間基地問題と同一タイミング

普天間基地移設問題について、沖縄県知事が辺野古の埋め立てを承認するタイミングとあわせて参拝をしています。民主党政権が実行できなかったことを、俺がやり遂げたというアピールとともに靖国神社に参拝したとしか思えません。

■「信念の人」安倍晋三

安倍首相の以上の一連の行動を見ると「信念の国粋主義者」のようです。アメリカに対しても、腹の中では対抗心を強く持っているように思います。

おそらく、安倍首相は、「日米安保同盟は維持するが、片面的なものから対等の軍事同盟に変更して、アメリカの『使いっ走り』ではなく、独自の外交・軍事戦略を持った国になろう」と本気で考えているのです。「そのために、日本はいつでも核武装できるという体制を維持することが必要であり、脱原発なんであり得ない」と考えいるように思います。

岸信介の孫という個人的な系譜からも、以上の信念を持っていることは間違いないでしょう。利害得失をもっと合理的に計算する普通の政治家だと思っていました。しかし、「信念の人」だったのですね。(「信念の人」って褒めているわけではありませんからね。)

■アメリカ、中国の今後の対日方針

面子を潰されたアメリカ政府は、安倍首相に対しては「危険な国粋主義者」として監視を強めるでしょうね。コケにされたら、外交的には、そのお返しは絶対しなければなりません。倍返しでしょう。当然、政府要人の盗聴もしている。今後、安倍首相がアウト・オブ・コントロールにならないように、経済・政治・軍事・文化の全ルートを使って、硬軟織り交ぜて仕掛けてくるでしょう。

アメリカは、次の自民党首相には、もっと大人しく、親米を貫く人物がなるように希望するはずです。ポスト安倍を目指す自民党議員は、そのあたりのポジションにいることが求められるでしょう。自民党だと誰かなあ? アメリカの国務省あたりは次期自民党総裁選までに何と落とし前をつけようと思っていることでしょう。また、民主党や結いの党は、このあたりのポジションが狙い目じゃないでしょうか。

中国軍部は、いけいけ どんどんでしょう。

中国政府が中国人民軍を完全に掌握しているように見えません。中国軍部は、絶好のチャンス到来だと考えていることでしょう。近い将来、尖閣諸島周辺にて小規模な衝突事件(中国監視船と海保の銃撃や衝突)が起こる可能性が高まったと思います。中国軍部は、アメリカが日本側を支援して武力行使することには、リベラル議員や国内世論が反対すると読むでしょうからね。

これもひょっとしたら安倍首相は計算済みなのかもしれません。武力衝突が起これば、自民党憲法草案による改憲作業がずっとやりやすくになりますから。

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2013年12月22日 (日)

日本人は格差社会を是正できるか?

内田樹氏の「街場の憂国論」(2013年10月発行 晶文社)を読んだ。

■「若者は格差社会を是正できるか?」とのエッセイがありました。

マルクスの「共産党宣言」の最後の言葉は「万国のプロレタリア、団結せよ」でした。

今の日本の若者たちが、格差の拡大、弱者の切り捨てに対して効果的な抵抗を組織できないでいるのは、彼らが「連帯の作法」というものを見失ってしまったからです。

では、なぜ若者が「連帯」や「団結」の作法を見失ったのか?

それは彼らの責任ではありません。それは私たちの社会がこの30年間にわたって彼らにすり込んできた「イデオロギー」の帰結だからです。

戦闘的な反格差論者が口にするのは「バカで強欲な老人たちが社会的資源を独占し、若者たちは能力があり、努力をしているにもかかわらず格付けが低い。これはフェアではない」というものです。

彼らは連帯を求めているわけでなく、「社会のより厳密に能力主義的な再編」を要求しているのです。

若者の一人がたまたま成功しても、それは自分の才能と努力のせいなのであり、負け組の若者たちと連帯して助け合おうということは考えもしないだろう。もちろん、これは若者だけでないし、若者の責任でもないと内田氏は強調しています。次のような教育を大人がしてきたんだからと。

「能力のあるもの、努力をして成果をあげた者には当然、報酬を得る権利がある。能力がない者や努力しない者には罰が与えられる。」

確かに、この私のようなブログにも、「解雇規制は無能な中高年正社員の既得権を守るだけだ。解雇の規制緩和をすべきだ」という意見を寄せる若者が結構多いです。

解雇を自由にしても、格差はなくならないし、格差は広がるのは目に見えていると思います。彼らは若者らしく「自分だけは大丈夫」という自信を持っているか、あるいは、「今最悪、これよりも悪くなりようがない」という捨て鉢の気持ちなのでしょうか。

■労働組合の今、昔

最近、私が労働組合から賃金査定(能力主義賃金制度)に関する法律相談を受けたとき、次のようなことがありました。

弁護士 組合員の給与明細を見て、どのような査定の分布なのか、査定の不適正なものではないのかを分析してみる必要があるね。

委員長 とてもそんなことはできない。給料明細は組合員のプライバシーだから、労働組合ともいえども見られないし、同僚同士でも給料明細は絶対に見せない。

能力主義賃金制度が入ってからは、給料明細書は、あたかも学校の通信簿なのですね。それだけ能力主義的文化が学校教育、企業制度によって内面化しているということです。

私が弁護士になった28年前には、労働組合結成の際に、労組からが呼ばれて労働法の学習会をしたことも結構ありました。そのとき、若い労働者たちは、みんな自分で給料明細を見せ合って、基本給や手当の不満を討議して、労働組合としての要求づくりをしていました。山田洋次の映画みたいでした。

ずいぶん時代は変わりました。でも、これは若者たちが悪いからではありません。そういう教育を受け入れ、子どもたちにもしてきたのは、われわれ大人ですから。

■じゃあ、どうする?

アメリカの若者は、アメリカの能力主義の下でも、アメリカの建国理念である「人間は等しく造物主から生命、自由、幸福追求の権利を付与されている」という「自明の真理」からウオール街でも運動を開始します。

フランスの若者であれば、バリケードを築いて自由のためにたたかってきた革命の歴史と理念を持っています。レ・ミゼラブルのDo you hear the people sing ? のように「わが隊列に加われ!」と。

しかし、日本人には、そのようなバックボーンさえないと、内田先生は言います。何しろ日本国憲法さえアメリカ製ですからね。

内田先生は、えっと驚く答えを書いています。ネタバレになるので、知りたい人は同書を読んでください。

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「労働者派遣制度改正」公益委員案で法改正したらどうなるか?

労働者派遣制度の改正の公益委員案が発表されました。

http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000031979.pdf

細かい点を除くと、要するに次のようになります。

(1) 26業務区分及び業務単位での期間制限を撤廃する。

(2) 派遣先は3年ごとに派遣社員を入れ替えれば、派遣社員を永遠に使えるようにする。

さて、このような労働者派遣法の改正が実現されたら、どうなるでしょうか。

若者の派遣労働者が激増するでしょう。

派遣先会社は「人単位」で3年経過するまで派遣社員を使えます。また、「人単位」で3年といっても、派遣先の同一の組織単位(例えば、営業1課とか)でカウントされるので、当該派遣社員が3年経過した時点で、同一企業内の別の組織単位(例えば、営業2課)に派遣社員として受け入れることが許されます。つまり、派遣先が優秀だと思う派遣社員を恣意的に使い続けることが可能とないます。

派遣先企業にとって、使い勝手が極めて良い。

3年までしか派遣先企業で働けない派遣社員は、3年上限に達したときの雇用安定化措置には具体策が盛り込まれていません。絵に描いた餅にすぎません。

今後は、学校を卒業した若者の就職の多くが派遣労働者になる道をたどるでしょう。あと、子育て後、復帰する女性の多くもそうなるでしょう。

雇用は不安定で、キャリアアップの展望もなく、賃金もあがりません。彼ら彼女らは、住宅ローンは組めるのでしょうか?

これでも、世界で一番、企業がビジネスしやすい日本にする政策の一環なのでしょう。
しかし、働く人が暮らしやすい国ではなくなりますわな。

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2013年12月12日 (木)

ロールズとマルクス 読書日記「ロールズ政治哲学史講義Ⅱ」

ロールズとマルクス

読書日記「ロールズ政治哲学史講義Ⅱ」
(岩波書店2011年9月発行。読了2013年12月)

■ロールズの「無知のヴェール」

講義録ですので、大変に読みやすい。1980年代の講義をまとめたもののようです。

ロールズといえば「無知のヴェール」と「正義の二原理」(自由原理と機会均等・格差原理)で有名です。

私の言葉で要約すると、

無知のヴェール:ある社会で、その市民らが、社会の詳細な経済財政等制度や社会が不平等なものであることなどの一般情報は十分に知った上で、しかし、自分の性別も、人種も、能力、財産については何も知らないという無知のヴェールをかぶっている。

このような「原初状態」を想定して、各人がその社会の公正なルールを合意する。

で、無知のベールをとったら、そこでは人種差別された少数者かもしれないし、抑圧された貧乏人かもしれないし、あるいは権力をもった大金持ちかもしれない。そういう条件で、社会のルールを合意しようとする。「さあ、貴方なら、どうする?」というわけです。

■正義の二原理

ロールズは、原初状態で無知のヴェールをかぶって議論をすれば、各人は次のような「正義の二原理」で合意するはずだ、と言うのです。

1 各人は、他人に被害を及ぼさない限り、自由が保障される。
2 社会的・経済的不平等は、①最も不遇な人々の利益を最大にし、②公正な機会均等が図られている場合にのみ、許される。

2の①が格差原理というものですが、これが分かりにくい。私の理解では、要するに、

世の中には社会的・経済的不平等は必ずある。しかし、その場合でも、公正な機会均等を付与するだけでなく、最も不遇な人々の生活条件等を改善する方策をとらなければならない。

法律家から見ると、ロールズの立論は、社会契約論的で民主主義的な立憲主義を、判りやすく説明されており、非常に魅力的です(「立憲民主主義の憲法原理の政治哲学的基礎」)。

■ロールズへの印象

しかし、一方、「ロールズの言うことは非現実的だ。社会における政治的・経済的支配構造を変えないで、道徳的な説教や理想をいくら語っても、何も変わらないのではないか。」という懐疑的な気持ちもぬぐえません。まさにマルクスなら、こう批判するでしょう。

■ロールズが解説するマルクス

この岩波書店の「ロールズ政治哲学史講義Ⅱ」に、「マルクス」が論じられています。これを読みましたが、ロールズの立論は極めて判りやすく、すばらしい内容でした。久しぶりに本を読んで感銘をうけました。

■マルクスは「正義」をどう考えていたか

マルクスは「正義」なんていうものを重視していなかったというのが共通理解です。

マルクスは、「正義」という観念は、奴隷社会や封建社会、資本主義社会に応じて成立する相対的なものにしかすぎない。土台である経済構造(生産諸関係)の反映としての「正義」イデオロギーでしかなく、それは虚偽意識にほかならず、常に階級支配を正当化するものでしかない、と批判してきた。超歴史的な「正義」などは戯言だという立場を明言していた。

しかし、ロールズによれば、それでも、マルクスは、「資本主義を不正義である」との前提にたっていると言います。

マルクスが上のように批判する「正義」とは、狭い法律的な正義(歴史的諸条件で変化する相対的なもの)でしかなく、一方、ロールズの言うところの「正義の政治的構想」をマルクスは持っていたというのです。そうでなければ「搾取は盗みだ」とか、「労働者は賃金奴隷だ」とか、「労働力が等価交換されるが、剰余価値は搾取されており、それは『隠された盗み』だ」などとマルクスは言わないはずだというのです。

ロールズは、さらに続けます。

マルクスが正義や理想を語ることを忌避したのは、ユートピア的社会主義との違いを強調するためであり、敢えて正義を語らなかった。マルクスは、あくまで資本主義の運動法則を解明することで、その延長線上に必然的に社会主義や共産主義が到来することを(科学的に)記述したかった。

労働価値説や史的弁証法に対するロールズ的な解釈も大変に面白いのですが、マルクスと正義についての結論部分を紹介します。

■マルクスの「正義」

キイワードは、「自由に連合した生産者たちの社会」(「ゴーダ綱領批判」や「資本論」に良く出てくる言葉)です。

ロールズによれば、マルクスは次のような確信と理想を持っていたはずだと言います。

社会の全成員-自由に連合した生産者全員-は、社会の生産手段および天然資源にアクセスしそれらを使用する請求資格を平等にもつ

自由に連合した生産者たちが公共的で民主的な計画により経済活動をコントロールすることで搾取も疎外もない社会(共産主義社会)が実現する。

自由に連合した生産者の社会はあらゆる歴史的条件のもとで実現可能なわけではなくて、資本主義が生産手段とそれにともなうテクノロジーのノウハウを増大させるのを待たなければならない。

■マルクス思想の失墜

マルクスの共産主義は、20世紀において、ソ連・東欧など、共産党一党独裁による市民への抑圧、中央集権的計画経済の破綻によって、多大な犠牲者を出し、無残な失敗に終わりました。今、残っている社会主義の国、中国、朝鮮人民民主主義共和国、ベトナム、キューバなどは、旧共産主義のゾンビといってよいでしょう。

これほど見事に全て失敗した以上、マルクスの思想には根本的欠陥があると考えるのが経験的には正しいはずです。にもかかわらず、ロールズは、マルクスを救おうとするかのようです。

もちろん、ロールズは、古典的な共産主義思想である「中央指令的社会主義」を全く評価しません。しかし、「リベラルな社会主義」(日本でいえば「社会民主主義」のこと)があり、これは「啓発的な価値ある見解」と評価しています。

リベラルな社会主義の特徴(要件)

a)  立憲デモクラシーの政治体制。
b)  自由な競争のある市場システム。
c)  企業が労働者によって所有され、あるいは部分的にせよ、株所有を通じて一般の人々に所有され、さらに選挙もしくはその企業の選択によって選ばれた経営者によって経営される仕組み。
d)   生産手段および天然資源が、広い範囲で多少なりとも平等に分配されることを確保する所有システム。

■マルクス主義が誤った原因

確かに、「科学的法則」(笑)なるものを振り回す独善者の「革命」よりも、ロールズのいうような「正義」や「理想」を語り、ひとつひとつの合意をはかる方策のほうが正しい道ですね。

マルクスは「正義」も「立憲主義」も語りませんでした。逆に、あろうことか「プロレタリアート独裁」なんてことを書いてしまった。このあたりも失敗の原因なのでしょう。

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2013年12月 8日 (日)

シンポ「ワークルール教育を考える」@日本労働弁護団

12月7日、日本労働弁護団の「ワークルール教育を考える」シンポが開催されました。

◆パネリスト
  道幸哲也(NPO「職場の権利ネットワーク」代表理事)
  上西充子(法政大学キャリアデザイン学部教授)
  今野晴貴(NPO「POSSE」代表理事)
◆コーディネーター
  嶋﨑量(弁護士、ブラック企業被害対策弁護団副事務局長)

■道幸哲也教授のお話

ワークルール教育は「権利実現」の仕組みを伝えること。

権利実現の仕組みとは次の5つ。

(1) 法に関する知識・情報
(2) 権利意識
(3) 権利行使を支援する仕組み 同僚、労組、労働NPO、法テラス
(4) 実現する機構・手続 労働局、労働委員会、労働審判、裁判
(5) 権利を規定する実定法 労基法

このうち伝えることが一番難しいのは(2)[権利意識]と(3)[権利行使を支援する仕組み]ということです。

色々難しいことがあるが、一つは教育する学校(高校)側のニーズと合わないし、生徒も興味を持っていないということです。

学校(高校)側のニーズとは、進路指導の一貫だから「正社員になるようにすすめる」ということであって、権利教育を基本とするワークルールとはギャップがある。学校は権利教育には関心がなく、勤労意欲を高める一貫としてのワークルール、つまり伝統的な勤労観を育む教育が求められる。

また、生徒にとっては、だいたい「労働」というとダサイ、クライくて関心がない。どう興味を持たせるかをネーミングも考えて、ワークルール検定を考えてみた。マスコミも注目し、多数の人が受験してくれている。

■上西充子教授のお話

法政大学キャリアデザイン学部の上西教授の「キャリア教育」としてのワークルール教育について私は初めて聞くので大変に興味深かった。

厚労省の「今後の労働法関係制度をめぐる教育の在り方に関する研究会報告書」(2009年2月27日)や内閣府の「若者雇用戦略」(2013年6月12日)にも関与されたそうです。

キャリア教育の一環としてのワークルール教育では、使用者の側の「働かせ方」を問題にせず、「若者の勤労観」を育成することが主眼に置かれているとのこと。

”世の中の実態の厳しさ”を子どもたちに学ばせることも重要である。
”世の中のの実態や厳しさ”を子どもたちに実感を伴う形で理解させた上で、これらを乗り越えていくために必要な知識や意欲・態度を培っていくことが必要である。(文科省・キャリア教育における外部人材活用等に関する調査研究協力者会議)

2013年の内閣府「若者雇用戦略」も当初は、上記文科省的発想だけであったが、やっとこさ、次の一文が入ったそうです。

若者の正規雇用の割合が大幅に増えており、正規雇用の場合も、長時間労働等、職場環境が厳しく早期離職する場合も少なくない等、適切なキャリアを積むことが難しくなっていることから、若者の育ちを支援することとあわせて、若者が働き続けられる職場環境を実現し、また、非正規雇用の労働者のキャリア・アップを支援していくことも重要である。

上西教授は、大学でのワークルール教育について、世の中のことを何も知らない学生らに、今のアルバイト経験をお互いに語って考えさせているということです。アルバイトでも給与明細も支払われず、本当に時給どおり払われているのか分からない職場もあれば、1分単位で時給が支払われて残業代も払われている職場もある、などの話をするだけで、学生は考え始めるとのことです。

でも多くの学生は、アルバイト先の正社員を見ていて、過酷な労働条件が当たり前で、正社員になるためにはやむを得ないと思ってる者が圧倒的に多い。

まあ、私も大学で労働法を学んだときには、試験科目として学んで自分の就職後に役立てようとは、これっぽっちも考えませんでした(…法律家志望だから当たり前か)。

■今野晴貴さんのお話

相変わらず分かりやすい話です。

今野さんは、日本型雇用関係を前提とした企業と、今や、若者を使い捨てる企業と二種類あることを認識すること、生徒や学生に教えることの重要性を強調されてしました。

ブラック企業は「10人の正社員が必要であれば30人を採用する会社。そして、プレッシャーを与えて、駄目な奴は切り捨てて10人残れば良いというビジネス・モデルを採用する企業。」

旧来型正社員を前提とした会社は、「10人正社員が必要なら10人を採用」して育てようとする企業だ。

この旧来型企業に勤務する管理職や正社員から見れば、「近頃の若者は、我慢が足りない」というふうにしか見えない。そこで、キャリア教育は、厳しい現実を理解し、それを克服する能力と意欲を身につけさせるということになる。

しかし、企業の実態が変わってきており、若者を切り捨てる企業が増えている。

今野さんのブラック企業関係の読者は、40代や50代の男性が圧倒的に多いのだそうです。彼らは自分の娘や息子のために、今野さんの本を読んでいる。そこでのブラックな働かせ方に驚愕する人も多いそうです。

だから実態を知れば教師も生徒も保護者も、ワークールール教育が必要だということを理解するはずだ。

NPO法人に相談にくる若者の圧倒的多数は権利行使ができない人。相談は、「せめて失業保険をもらいた」いという圧倒的多数だそうです。解雇された、あるいは無理矢理辞めさせられたのに、「自己都合退職で失業保険ももらえない。明日からの生活を何とかしたい」という相談がたくさん寄せられるそうです。

会社に抗議し、労働組合に入ったり、労基署や労働局に相談したり、弁護士に相談する人は、そういう人たちは少数派で「特殊な若者」だそうです。ここで「特殊」というのは、そういうことを許す(特殊な)家庭に育ったか、周りに偶々強力に支援してくれる人がいる方だそうです。そういう若者は、得てして「クレイマー」的人物と見られる。

それが分かっているから、「そうは見られたくない」、あるいは「そんなブラック企業にしか入れなかった自分が悪い」と考える「優しい若者」が多い。

■神奈川県の高校教員

県立高校の若手の教員の方もパネリストで参加されていました。20代の若い教員と話してみると、若い教員は「ワークルール教育って、平和教育よりも、やりにくいよね。管理者に睨まれそう。」と感想を言われたそうです。権利教育というようなことは、当然のことながら管理者は歓迎しない。今時の教員は労働組合組織率は激減をしており、中高年世代の労働者としての要求には、若い教師はどん引きな雰囲気なんだそうです(「公務員の教員に就職できたから良かった。」「勝ち組?って雰囲気もあるので、労働者って自分の身近なことじゃない」?)。

そもそも職場は多忙、でワークルールなんて難しい新しいことをするなんて大変という雰囲気があるとのことでした。

ワークルールなら管理者も受け入れやすいのでは。

■権利教育で浮いてしまったら??

議論になった一つは、「やれ労基法違反だとか、やれ労働者の権利だ、とか、若者が権利行使してしまったら、使用者は当然に不利益扱いや報復してくるのは目に見えているので、どう工夫するか?」ということです。

確かに下手に労働法の権利を教えて、労働法的権利教育をして社会に放置することは、「裸でオオカミの前に子どもを放り出すようなもの」です。

となると、困ったことがあれば、個人で即断・即決行動を起こさないで、相談先に相談しようと言うしかないですね。

■「団結」の重要性を教えるにはどうしたら良いか??

ワークルール教育は個人だけに、いくらお勉強として教育してもだめです。

労働ですから、集団性があります。では、ワークルール教育で「労働者の団結」を伝えることができるでしょうか。法律知識としての団結権の話はお勉強として伝えられます。でもその規範意識や団結意識、連帯意識を教えることは難しい。

会場から、元高校教師の方から、「解雇されて、争議でたたかっている労働者の話を聞かせた」という発言もありました。

私個人の印象では、今の高校生や大学生に、バリバリの労組活動家の争議体験の話しを聞かせても、生徒や学生に引かれるだけで、必ずしも良い結果にならないのではないか、と懸念します。

今の社会や職場には、「団結」や「連帯」ができない環境ができあがっています。そもそも学校教育や家庭の子どもの育て方がそうです。色々な意味で、働く人は、「孤立化」しています。だから、職場ではパワハラや虐めやメンタル不全が多発するのでしょう。

「団結」や「連帯」の意識は、もはや「学校教育」の範疇を超えてしまう課題なのかもしれません。

■「法教育」の一環としての「ワークルール教育」

弁護士会は「裁判員教育」や「消費者教育」をテーマにして学校や地域の社会人教育に積極的に関与しています(「法教育」)。この法教育として「ワークルール教育」を取り入れる方法が一番実践的でしょう。既に札幌などで実践されているようです。そのためには生徒や学生に興味を持ってもらう教材が必要です。弁護士の場合にはここから一歩ですね。

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2013年11月29日 (金)

福島原発の下請労働者が東電の団交拒否 救済申し立て

毎日新聞


昨日、発注元東電、元請東京エネシス、1次下請エイブルほかを団交拒否で東京都労働委員会に不当労働行為救済命令申立をしました。

上位下請の担当者らが現場で下請労働者を直接指揮監督していました。2次下請らは、苦情をいった下請労働者を解雇するように末端の直接雇用者(5次下請)に指示をしていま
す。

派遣ユニオンは、発注者東電に偽装請負や危険手当ピンハネを防止する対策をとるように要求して団交申入れましたが、東電、元請らは雇用関係がないとして団交拒否。

東電は発注者であり、使用者というのは、法律的にはハードルが高いのですが、東電でなければ根本的対策をとれません。

東電の広瀬社長は、11月8日、危険手当を1万円から2万円に増額すると述べました。しかし、実際には、多重下請・偽装請負の労務管理を改善しなければ、中間搾取・ピンハネされるだけです。

東電は、発注者ですから、なかなか法的には団交応諾義務を認めさせるのは高いハードルがあります。



しかし、偽装請負防止や危険手当の下請労働者への支払いをさせるよう発注段階で契約条件を付するなどの防止策は今でも可能。これに違反した元請や下請を契約違反で排除すれば良いのですから。それだけで大幅に改善できるはずです。このような対策をとるように東電も元請らも交渉のテーブルにつくべきでしょう。
ちょっと長いですが、申立にあたっての声明は次のとおり。

声  明

福島第1原発下請労働者の不当労働行為救済命令申立にあたって

 

1(東京都労働委員会への不当労働行為救済命令の申立)

 本日、福島第1原発の事故収束作業に従事した原発労働者が、発注者である東京電力、元請である東京エネシス、1次下請エイブル、2次下請テイクワン、3次下請鈴志工業を被申立人として、派遣ユニオンがなした団体交渉申入れを拒否したことは、不当労働行為に該当するとして、東京都労働委員会に不当労働行為救済命令申立を行った。

2(事案の概要)

 本件は、2013610日、労働者Aが、RH工業に期間1年、日当1万3千円で、福島第1原発の事故収束作業に従事するとして雇用された後、偽装請負形態で福島第1原発にて、東京エネシス、エイブル等の指揮の下で高線量作業に従事させられた。Aが、高線量の作業であると聞いてないとしてエイブル等に抗議をしたところ、619日、鈴志工業から、「上からAを現場に来させるなと指示された」として解雇すると通告され、翌620日、RH工業から解雇された。Aは、派遣ユニオンに加入し、解雇や偽装請負の是正、中間搾取分の支払い、安全確保、偽装請負・中間搾取の再発防止を求めて、元請・下請業者だけでなく東京電力に対しても団体交渉を申し入れた。

 直接雇用者であるRH工業は、団体交渉申入に応じて、解雇問題については和解解決をしたが、他の東京電力、元請、下請事業者らは、Aとは雇用関係が存在しないとして団体交渉を拒否をした。

3(元請・下請事業者の責任)

 元請・下請事業者らは、Aの基本的な労働条件について決定する直接的な支配を及ぼしており、本件では、人員配置、現場での作業指示等を直接行っている。また、エイブル、鈴志工業は高線量作業に抗議をした労働者を解雇するようにとの指示もしたものであり、団体交渉に応じる義務がある。

4(発注者である東京電力の責任と要求事項)

 福島第1原発では、多数の下請労働者が偽装請負や多重派遣にて原発事故収束作業に従事しており、その労働条件は劣悪であり、安全衛生対策も極めて不十分である。

 東京電力の広瀬直己社長は、さる118日、「福島第1原子力発電所の緊急安全対策」を発表するに当たって、作業員の日当の割り増し分(危険手当)を1日当たり1万円から2万円に増額するとし、「増額した危険手当が正しく下まで届くよう徹底してもらいたい」と述べた。 ところが、高線量作業による危険手当1万円は、実際には、多重下請構造の結果、下請事業者に中間搾取をされて末端の下請労働者には支払われていないのが実情である。

 通常、建築工事などの発注者は、多重下請構造の下での下請労働者に対して団体交渉に応じる地位にないとされている。しかし、福島第1原発の事故収束作業の場合には、事故収束作業全体を発注し、管理しているのは東京電力にほかならない。下請労働者の劣悪な労働条件を解消するためには、東京電力が労働環境を整備する責任をもった具体的措置を講ずることが必要不可欠である。

 具体的には、東京電力が、元請に発注する際にあたって、下請労働者に日当とは別に危険手当を1万円を支給すること、多重下請を禁止し、少なくとも1次下請が直接雇用することなどを発注の契約条件とすれば、現状を大幅に改善できる。

 派遣ユニオンは、このような具体策について、下請労働者の労働組合と団体交渉にて話し合うことを東京電力に求めるものである。

5(団体交渉のテーブルにつくこと)

 原発に従事する下請労働者は、多重下請構造の下におかれ、偽装請負など不安定な雇用にさらされている。劣悪な労働環境や労働条件にクレームを述べれば、本件のように解雇され職場から排除される。全国から集められる原発労働者が労働組合に加入することも極めて困難な状況にある。このような中、本件のように労働者が労働組合に加入して声をあげることは極めて貴重な問題提起である。

 東京電力及び福島第1原発の事故収束工事を請け負う元請・下請事業者は、今後も続く福島第1原発の事故収束作業に従事する労働者の労働条件維持のために団体交渉のテーブルにつくように強く要請するものである。

                                          20131128

                 派遣ユニオン

                 日本労働弁護団原発労働PT

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