統計分析をするためにはシンプルな指標が必要である。そこで著者は「右派市民」を次の4つの基準で定義する。
①日本国(大日本帝国からの日本)を愛しすぎている人(愛国主義者)
②伝統的(と思われている)家族・性愛規範を愛しすぎている人(伝統主義者)
③敵国(中国・韓国)を嫌いすぎている人(排外主義者)
④政敵(左派・リベラル)を嫌いすぎている人(反左主義者)

 ここで「・・・すぎる」というのはどういう意味か?と疑問がわく。面白いことに著者は次のような統計的処理で割り切って抽出している。

 具体的には質問への回答の選択肢として、「賛成」、「やや賛成」、「どちらとも言えない」、「やや反対」、「反対」を用意し、「賛成」や「反対」を選ぶ人。例えば、首相の靖国神社参拝への賛否を質問して、「賛成」と回答した人を「右派市民」(愛国主義者)とする(「やや賛成」は「右派市民」とはしない)。
 また、「最も好き」を10とし、「最も嫌い」を0として「ゼロ」を回答した人。例えば、中国や韓国を最も嫌い0と回答した人(排外主義者)。立憲民主党や共産党をもっとも嫌いの0と回答した人(反左主義者)と「右派市民」と数える(逆に言えば「1」を選択した人は「右派市民」とはみない)。確信的(極端)な回答をした人を「右派市民」とし、中途半端な人は「穏健保守」と分類する。

 1万のアンケート調査の結果に基づき上記4タイプの人数の多さを比率で見ると次の結果となる。
①愛国主義者が 6%
②伝統主義者が 4%
③排外主義者が13%
④反左主義者が 5%

 そして、この4タイプをすべて兼ね備えた人(「極右」)は0.2%しかいない。予想外に少ない。他方で、4タイプのうちどれか一つでも該当する人は15.7%となる。

 さらに面白いのは、このアンケートを用いて「左派市民」も分類している点である。
 上記の右派市民の対極の回答をした人を左派市民と分類する。例えば、首相の靖国参拝に反対(❶非-愛国主義者))、夫婦別姓や同性婚に賛成する人(❷非-伝統主義者)、反中国・反韓国などの排外主義を最も嫌いとした人(❸反-排外主義者)、立民党や共産党を大好きの10と回答する人(❹親左主義者)を「左派市民」という。その比率が面白い。
❶非-愛国が4%(愛国6%)、
❷非-伝統が13%(伝統4%)、
❸反-排外が9%(排外13%)、
❹親左が7%(反左5%)
 となり、4タイプが重なる人(「極左」)は0.5%しかいない(極右も0.2%)。

 私はこの指標からすれば「左派市民」しかも「極左」にあたる(笑い)。 圧倒的な少数派である。
 中間層の方々にお話をきいてもらえれば「ありがとう」と感謝すべき立場であって、お説教をする立場ではない。「極左」は4つのタイプをすべて兼ね備えていないと「裏切り者」「意識が低い」とかバカにする人が多い(天使でないと許せない)。例えば、「立民が中道になるなんて裏切者!」と罵倒する人。著者は天使化傾向ありと述べている。
 また、「右派市民」を悪魔化していたことに気がつく。夫婦別姓や同性婚に賛成するけど、靖国参拝は賛成し、でも韓国大好きな人もいる。ところが、「左派市民」は、一つでも「右派市民」に該当すると話し合っても無駄だと思うとか。

 以上は、この本のごく一部を紹介しただけだが、今回の2026年総選挙の結果を考える上でも、本書のように1万もの郵送アンケートデータに基づく冷静な分析(投票行動についての興味深い分析も記載されている)こそが必要であろう。





朝日新聞出版 最新刊行物:新書:「右派市民」と日本政治