2013年5月11日 (土)

福島第1原発 派遣法違反

■派遣法違反として改善命令

長崎労働局は、福島第1原発の事故収束作業に述べ510人を超える作業員を違法に派遣していたとして、大和エンジニアリングサービスなど三社に労働者派遣事業改善命令を行った。


昨日、記者会見をしたところ、各紙で報道されました。

東京新聞

朝日新聞


厚労省は、4月26日にプレスリリースしており、ウェブに公表しています。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000030vds-att/2r98520000030vf9.pdf

このプレスリリースでは、「福島県内の就業場所において」と書かれており、その就業場所が福島第1原子力発電所であることは書かれていません。これでは分かりませんよね。
この件の詳細は、次のブログで書いた事件です。

■処分理由
処分理由の概要は次のとおりです。

(1) 労働者派遣法4条3項違反であり、派遣を禁止されている建設業務である配管工事の業務に従事させたこと
(2) 職安法44条違反の違法な労働者供給を行ったこと
この福島第1原発の作業について、長崎労働局は、建設業務である配管工事と認定しています。

労働局が、福島第1原発の延べ510人もの労働者が違法派遣で働いていることを認定して、企業名を公表して、改善命令を出したことは画期的だと思います。現在でも、福島原発での違法派遣が蔓延していることでしょう。

■廃炉作業は、建設業務であり、派遣禁止業務にあたる

配管工事といっても、福島第1原発原子炉建屋内での事故収束作業の一環としての配管工事ですから、事故収束作業も廃炉作業も建設業務だということです。

建設業務は派遣禁止業務なので、福島第1原発の廃炉作業のほとんどが建設業務として派遣労働者を受け入れることはできないことになります。

派遣として働かせるのではなく、せめて二次下請けの直接雇用として作業に当たらせることが必要になると思います。

■発注者である東京電力の責任は

また、これが建設業務である以上、労働者安全衛生法31条1項の特定事業に該当し、発注者である東京電力は、労働者の安全について発注者責任を負うことになります。
ところが、厚労省は、労働弁護団の申し入れに対して、次のように回答しています。

「安衛法31条は、注文者が自ら工事を行うということが要件となっており、福島原発での東京電力の作業は、設計監理はしているが、施工管理をしていないと聞いているから同条は適用できない」
東京電力が本当に設計監理のみでしょうか? 東京電力の監督者が、配管工事などを現場で下請の監督とともに施工管理しているのではないでしょうか。

■東京労働局の判断は

大和エンジニアリングサービスの上位の企業(日栄動力)についても派遣法違反等で申告をしているのですが、東京労働局の判断はまだ出ていません。

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2013年5月 5日 (日)

限定型正社員の狙いは、やはり解雇ルール緩和策

■ジョブ型正社員(限定型正社員)
 勤務地や職務を限定、あるいは労働時間を限定した(短時間や残業無し)無期労働契約を締結した労働者を限定型正社員と言う。今までの無限定正社員(24時間戦える企業戦士)とは異なる人事ルール(解雇ルールを含め)を作ろうということうです。
 政府の規制改革会議の雇用ワーキンググループの座長であり、オピニオンリーダーである鶴光太郎慶応大学教授は、このジョブ型正社員を普及・定着する必要性について、次のように述べています。
 一つ、非正社員の雇用安定
   有期から無期への転換をより容易にし、雇用の安定を高める
  二つ、ファミリーフレンドリーでワークライフバランスが達成できる働き方の促進
   勤務地限定型や労働時間限定型をライフスタイルに応じて選択する
 三つ、女性の積極的活用
   無限定正社員は、特に既婚女性にとっては不利。地域限定、労働時間限定型   の正社員は女性にとって活躍の場となる。
 この一つ一つをとらえれば、とても良いことのようです。マスコミや一般国民には耳当たりの良いお話です。
■ジョブ型正社員の人事ルール
 鶴教授は、具体的には、就業規則や労働契約でジョブ型正社員と無限定正社員を明確に区別して規定することとし、人事処遇上のルールを変えると言います。賃金は無限定正社員より安くなります。それ以上に解雇のルールを次のように変えるというのです。
○ ジョブ型正社員については、事業所閉鎖、事業や業務縮小などジョブが消失した場合を解雇事由に加える。具体的には、就業規則に「就業の場所及び従事すべき業務が消失したこと」を追加することを確認する。
○ ジョブ型正社員に対する解雇について、客観的合理性や社会的相当性のルールを策定する。立法事項とするのが難しければ解釈通達などで明文化する。
 現状でも、実際の就業規則には、「事業所閉鎖や事業縮小の場合には解雇できる」ことは書かれています。現行労働契約法では、このような事由が就業規則に定められていても、労契法16条を根拠として判例の整理解雇法理が適用され、解雇回避努力などを使用者が尽くさなければ、解雇は無効です。
 ところが、鶴教授は、上記の整理解雇判例法理が適用されるのは、無限定正社員だけであり、ジョブ型正社員には整理解雇の法理は適用されないということを主張しているのです。これは解雇の規制を緩和することにほかなりません。

■日本経団連のジョブ型正社員構想
 このようなジョブ型正社員制度を立法化すべきとするのが日本経団連です。


 日本経団連は、政府の雇用の規制改革に向けて、本年4月16日に発表した「労働者の活躍と企業の成長を促す労働法制」という文書です。経営の本流は、長谷川武田薬品社長の与太話のようなトンデモ解雇自由論ではなく、こちらの日本経団連です。
 日本経団連は、労働時間法制の規制緩和だけでなく、勤務地・職種限定契約における使用者の雇用保障責任ルールの緩和を求めています。
特定の勤務地ないし職種が消滅すれば契約が終了する旨を労働協約、就業規則、個別契約で定めた場合には、当該勤務地ないし職種が消滅した事実をもって契約を終了しても、解雇権濫用法理がそのまま当たらないことを法定すべきである。」

 現状では、勤務地の事業所が閉鎖されたとしても、また職務がなくなったとしても、配転の可能性を検討しなければ解雇はできません。例えば、照明器具組立という職務(ジョブ)がなくなっても、携帯電話組立などの他の職務(ジョブ)への配置転換、解雇回避努力が当然求められます。
 とろこが、就業規則や労働契約で、あなたの仕事(職務)は照明器具組立てだと指定されて、労働者が同意させられたら、その後、照明器具組立の職務がなくなったら、他の職務への配置転換などの解雇回避努力を尽くさなくても解雇が有効となるということです。
 ヨーロッパでは、職務やジョブは社会的ルール(産別労働協約など)として確立しているのでしょうが、日本では、企業の就業規則や個別労働契約で企業が実質的に一方的に決めることになってしまうでしょう。その意味で、ジョブ型正社員は胡散臭いのです。
■無限定型正社員ってありか?
 メンバーシップ正社員って無限定・無定量に働く義務があるのか?あるわけないじゃん。と思う。

 そもそもジョブ型正社員つまり限定型正社員と無限定型正社員という区別自体が間違っていると思います。正社員であれば、【無条件に】、配転に応じる義務があり、【無限定に】残業に応じる義務があるという前提が間違っている。無限定正社員は、いわゆる「企業戦士」、「24時間戦え」という正社員像です。これはバブルの頃にはやったCMのもじりです。ブラック企業で生き残るには、このブラック企業戦士になるしかないでしょう。
 その結果、過労死やメンタルヘルスの障害に悩む労働者が目立つようになったのです。ワークライフバランスやファミリーフレンドリーな働き方は、メンバーシップ型正社員であろうと、ジョブ型正社員であろうと、すべての労働者が求めるものです。
 人間らしく働く権利、ディーセントワークは憲法の生存権を基礎とした労働者の権利です。ジョブ型正社員などを持ち出すことなく、メンバーシップであろうとなかろうと正社員・非正規社員すべてを無限定・無定量な労働(恒常的長時間残業)から解放して企業の雇用量を増大させるワークシェアリングの道こそ、すべての労働組合が追求すべきでしょう。
■労働弁護団の集会案内
ということで、労働弁護団は下記のとおり5月15日に労働規制緩和に反対する集会を持ちます。大阪市立大学の根本到教授には、ヨーロッパやドイツの法制も話してもらう予定です。
多くの方のご参加をお待ちしています。

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「民族憎悪の扇動の罪」

「民族憎悪の扇動の罪」という刑罰がイタリアにはあるんですね。

http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20130503-OYT1T00471.htm

<○○人や○○民族を殺せ!><出て行け!>などと叫んでデモする人と組織は、イタリアでは「民族憎悪の扇動」罪違反として処罰されることになります。

もっとも、日本でも西大久保などの韓国・朝鮮人が経営する店舗が多いところで、多衆の人間が声をそろえて、韓国人や朝鮮人などの生命・身体・財産を危害を加えるような大音量の発言(シュプレヒコールとか)やプラカードを掲げた場合には、刑法の脅迫罪や威力業務妨害罪が成立するようにと思えますが。

このような言動を「民族憎悪の扇動の罪」という犯罪類型を日本で立法化することが、憲法上許されるかは賛否両論のあるところです。私は消極派です。

憲法論としては、現実に生命・身体・財産への危害を加えることを扇動するような言動(現在かつ明白な危険テストを経て)は、刑法により厳正に処罰する。ただし、それに至らない人種偏見・民族差別などの言動は、良識による批判と言動によって淘汰するべし。これが正論でしょう。

ということで、人種や民族への憎悪を煽るデモが表現の自由で保障される以上、それを批判するデモも批判的言論も表現の自由で許容されます。

ちなみに、「在特会」が、レイシストとして決めつけられて人権を侵害されたとして、日弁連に人権救済申立をしたようです。

http://www.asahi.com/national/update/0426/TKY201304260220.html

ひょっとしたら、在特会の方々は、自ら人権救済申立をする以上、基本的人権保障の重要さに気がつき、今後は、相手の在日外国人の人権をも尊重するようになるのかもしれません。


日弁連人権擁護委員会には、速やかに格調の高い、毅然とした判断を示して欲しいものです。

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2013年4月14日 (日)

日本国憲法を制定する国民投票ってありましたか?

■改憲は国民投票
日本国憲法の改正は国民投票で決せられることになっています。この改憲手続を定めた憲法96条は、国会の発議と国民投票での改正するとしています。

■憲法制定は国民投票不要?
でも、そもそも、日本国憲法が制定(憲法制定) 時に国民投票が実施されたでしょうか。
たぶん事実として、日本国憲法制定の国民投票って、されていないのでしょう。
護憲派も、改憲派も、なぜか触れない。
これも日本国のタブーなのでしょうか。
「日本」という国号や、「天皇」という称号が西暦何年に成立したのか?と同じように、皆触れたがらなんだよね。
要するに出自の怪しいからなんでしょう。日本国憲法は米国製だし、天皇制は中国製だし?(泣き)。

■護憲派のタブー?
現実に、日本国憲法は大日本帝国憲法の改正して発布されています。天皇主権の大日本国憲法から、国民主権の日本国憲法への改正ですね。

これって明治憲法の改正手続の限界を超えるもので、手続的には違法と考えるしかないで
しょう。憲法の教科書でも、手続違法が通説でしょう。

真面目な知的に誠実な憲法学者であれば、日本国憲法の正当性をどう論証するかは、理論的には高いハードルなんだと思います。宮沢俊義教授の「横からの革命」論のように、法的手続では救えず、事実としての「外国の革命権力」(横からの革命=民主的な連合国の
占領権力)革命逃げるしかないのです。

ただし、憲法学者の多くは、日本国憲法の立憲主義・人権尊重主義や平和主義に賛成したいので、手続的違法性を言い立てても保守反動層を利すると考えて、憲法学者の多くは口をつぐんできたのでしょう。私もそうです。

でも、日本国憲法の正当性を民主主義で論証するのは無理があります。唯一の正当性の根拠は、政治社会における暴力としての絶対的権力が、憲法という皮をかぶって正当化の法的根拠が必要ということでしかありません。明治憲法も、江戸時代にあった「憲法」(constitution・国家組織)も、人民の承認なんて必要とされていません。

民主的憲法制定なんで、20世紀の一時期のはやりでしかなかったのです。日本は、その洗礼さえ受けていないのです。

■民主主義憲法ではないのが正体
要するに、1946年憲法(日本国憲法)は、国民投票制で国民に意識的に選択された民主的憲法ではないのです。

そもそも、これを改正するのに国民投票がいるのか?という石原慎太郎の意見は実は、本人は考えてないでしょうが、結構、本質を突いているのです。

■民主主義憲法が制定されるのを恐れて、米国が押しつけた立憲君主主義憲法「日本国憲法は、理論的にみれば、象徴天皇制を残した立憲君主主義憲法です。要するに、日本は、実は民主主義国家ではなく、あくいまで形式的な立憲君主主義国(象徴天皇制家)として把握すれば論理的な整合性はあります。まあ、それをはっきり規定すると、天皇制廃止などを言い出す輩が出るので、このあたりも曖昧にするというのも日本的です。

民主主義的な観点から見ても、米国占領軍の軍事権力を背景にして日本に押しつけられ
た憲法にほかなりません。米国は、連合国の対日理事会が発足する前に、自分に都合よい、「天皇制維持=象徴天皇制」、そして、その代替物としての「非武装9条」を押しつけた
というのが歴史的真実です。

対日理事会が、憲法を押しつけたら天皇制が廃止され、自衛隊(国防軍)が容認された憲法が作られたかもしれません。どっちの憲法でも、日本人は、敗北とともに受け入れたことでしょう(情けないけど)。

今の憲法が国民投票で制定されていないという事実を真面目に考えないのが日本人です。護憲派も改憲派も、日本国憲法の承認する国民投票制度を避けてきました。にもかかわらず、憲法96条改正手続を国民投票の3分の2か、2分の1かを論じているのを見るのは、何だか極めて滑稽であり、曖昧な日本人です。

(まあ悪いとは言いません。そこが日本人のいいところなんだし。)

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2013年4月11日 (木)

「労使双方が納得する解雇規制」はあるか?

 「労使双方が納得する解雇規制」とは何か

世界5月号に濱口圭一郎さんの「『労使双方が納得する解雇規制』とは何か」という論考が掲載されています。

前半で解雇規制を論じる場合の前提事実が論じられており、後半は、労使双方が納得する解雇規制として、解雇の金銭補償制度が提案されています。中小零細企業労働者にとっては、金銭補償はメリットがあり「福音」ではないかというのです。

日本の解雇規制は厳格ではない

この論文の前半部分は、そう異論はないのですが‥

ただ、日本の「特殊な正社員」の位置づけとして、経営側があえて自らの生産性をあげるために、そのような「正社員」を作り出してきたという面にも注目するべきだと思います。

確かに、日本の正社員は、職務は無限定であり、労働量(残業)も無定量の働かせ方をさせられています。いわば、正社員は企業に全生活、全人格を支配された「企業戦士」=「メンバーシップ型社員」です。

しかし、この職務を限定しない正社員は、経営側にとって多大なメリットがあったのです。高度経済成長の時代、特定の職種、特定の技術に限定されず、新たな技術や新たな生産方法に柔軟に対応できる「多能工」を育成してきたのは経営側でした。

例えば、特定の旋盤しか扱わないという狭い職務で限定して労働者を雇うことは、技術革新でどんどん新たなNC旋盤などの生産方法や生産組織を生み出す日本企業にとっては困るのです。新技術に対応、適応してくれる「多能工」が効率的なのです。

日本型正社員は、これはこれで高度経済成長の時代にマッチした経済合理性のある雇用のあり方であったわけです。職務を限定して雇って職務が古くなり、無くなれば解雇する。そして、新技術に対応する職務が生じたら、新たな職務に対応する労働者を雇い入れる、なんてことは実際にはできなかった。新生産組織や生産方法に対応した労働者を他から雇い入れることはできない話しで、自社の労働者を配置転換して対応せざるをえなかったはずです。

■多能工化が正社員のデフォルト・ルール

このような多能工的な「正社員」だからといって、残業を無限定に応じる義務が当然に生じるものではないと思います。ところが、これを支えたのが、残業拒否を理由に懲戒解雇を有効とした最高裁判決(平成3年11月28日判決、日立武蔵工場事件)です。この最高裁判決は、ハードワーク・スピリットが日本の製造業の強みだという思い込みと「残業を拒否して、企業や同僚に迷惑かけるとは、怪しからん!」との素朴な保守思想に貫かれた判決であり、ジョブ型雇用契約であっても、最高裁は、残業拒否したら懲戒解雇ができると判断したでしょう。

裁判までできる労働者は極めて少数なのはそのとおり

働契約法16条の解雇規制があっても、中小零細企業では、まったく法律の解雇規制は無視されているのが実態です。これは濱口さんが指摘するとおりですし、その労作によって詳細に明らかにされています。

このことは、労働弁護士にも分かっています。労働審判ができる前は、10件解雇事件の相談をうけても、本訴や仮処分を起こせるのは1件程度でした。費用よりも何よりも、裁判にかかる期間が長期なのが最大のネックです。本訴で1年から2年かかるといえば、普通の人は裁判なんかしません。

労働審判が創設されてからは、弁護士に相談にくれば10件のうち5件くらいが労働審判を含めて裁判所の場に出せるくらいに感じます。一方、行政の相談機関や弁護士にまでたとりつけずに労働者が泣き寝入りするものが圧倒的に多いでしょう。簡易裁判所の調停委員をやっていても、弁護士をつけないで調停を申し立てる労働者はけっこういます。

■解雇金銭解決制度(金銭補償制度)は中小零細企業労働者にとってお得か?

濱口圭一郎さんは次のように提案します。

スウェーデンでは、違法無効な解雇について使用者が復職を拒否したときは、金銭賠償を命じることができると定めているが、その水準は、勤続5年未満:6ヶ月分、5年以上10年未満:24ヶ月分、10年以上:32ヶ月分、である。このような金銭補償基準が法定されれば、ごく一部の該企業正社員を除き、アンフェアな解雇に晒されている圧倒的多数の中小零細企業労働者にとっては福音となるのではなかろうか。

しかし、スウェーデンの場合でも、裁判所が違法無効であると認定した上で、金銭賠償を命じるものですから、どちらにしても、中小零細企業労働者も裁判等の提訴が必要となります。裁判なしで、金銭賠償がされるわけではありません。

つまり、中小零細企業労働者は、裁判まで起こせないのが普通だから、金銭補償をうけられるほうがましだという理屈は成り立たないわけです。

■今の日本の制度のほうが労働者は保護されます

今の日本の裁判制度では、解雇が違法無効であれば、裁判所は、労働契約上の地位にあることを確認して、過去の賃金の支払いと裁判確定までの将来の賃金支払いを企業に判決で命じます。

敗訴した使用者は、労働者を復職させなくても、賃金はずっと払わなければいけません。ですから、使用者は、「復職させて働かせるか、それとも復職を拒否して毎月賃金を支払っていくか」を選択しなければなりません。

この場合、敗訴した使用者が、労働者に、どうしてもやめてもらいたいと考えるときは、1年どころか、「3年や4年以上の賃金相当分を払うから退職和解をしてくれ」といってきます。それを受け入れるかどうかは、労働者が自由に決めます。金銭和解を拒否して、あくまで復職を求めるのも労働者の自由なのです。

本訴で解雇が違法無効と判決になれば、少なくとも解雇されてから一年以上かかりますから、そのバックペイ分の支払いが命じられ、また判決確定まで毎月の賃金の支払いも命じられます。控訴審、最高裁の上級審の期間はおそらく2年くらいはかるでしょうから、労働者は裁判で勝てば少なくとも3年分の賃金は確保できます。さらに、最高裁で勝訴が確定すれば、復職あるいは将来の毎月の賃金の請求権も認められます。

ですから、裁判所で解雇が違法無効という判決を得る以上、何も金銭賠償を法定しなくても、過去無効による地位確認、賃金請求家認容判決で、労働者は十分(スウェーデン以上の)金銭を得ることが可能です。

ところが、スウェーデンの基準が法定されれば、解雇無効で勝訴しながら、勤続5年未満だと6ヶ月分という極めて少額な補償金で雇用を打ち切られてしまうことになります。2年分で3年分でも同じです。

どう見ても、中小零細企業労働者にとっても、福音とは言えません。

安倍首相や田村厚労相が言う解雇金銭解決制度は、裁判所で解雇が無効となった場合のものですから、濱口さんが紹介するスウェーデンの制度と似ています。

でも、上に見た通り、結局、中小零細企業労働者も、裁判を提訴して、違法解雇であるという判決をとらなければなりません。しかも、今の裁判制度より、どう計算しても経営側の負担は軽くなります。

労働者にとっては、せっかく裁判で解雇を違法無効としても、現状より少ないお金で雇用契約を打ち切られることになります。

中小零細企業労働者にとっては福音とは、とても言いがたいものとなります。

■セクハラ抗議をして解雇されても、お金で雇用を打ち切りが可能

しかも、セクハラに抗議をして解雇された場合でも、また企業の違法行為を内部告発して解雇された場合でも、正当な労働組合活動を理由に解雇された場合でも、それが違法無効と裁判で明らかにされても、使用者はお金を払えば労働者を企業から追い出せることになります。

これって企業のモラルハザードをもたらしますね。法律でそんなことを認めるのは「正義」に合致しますかねえ。

■実務的な使用者側弁護士の訴訟活動は

もし私が経営側の弁護士なら、解雇の金銭解決制度が導入されたら、勝ち目の薄い解雇事件では、解雇無効の請求をさっさと認諾します。そして、バックペイが少ない段階で、金銭を支払ってさっさとおわりにしますね、それが合理的な訴訟活動です。

こんな制度って変でしょう。

 

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2013年3月29日 (金)

有期契約を理由とする不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条) アンケートも

■4月1日施行の労働契約法新20条

(期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止)
第20条 有期労働契約を締結している労働者の労働契約の内容である労働条件が、期間の定めがあることにより同一の使用者と期間の定めのない労働契約を締 結している労者の労働契約の内容である労働条件と相違する場合においては、当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(以下この条において「職務の内容」という)、当該職務の内容及び配置の変更範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。
無期契約労働者(正社員)と有期契約労働者(有期社員)とに労働条件の格差があった場合には次の三要素を考慮して、不合理なものであると違法となるということです。
①業務の内容及び当該業務の責任の程度
②職務内容及び配置変更の範囲
③ その他の事情
■要素の説明
①は、業務内容は、担当業務の職種や作業内容を意味し、責任の程度は、業務遂行上の責任の程度、例えば残業に応じる責任や業務ミスの責任を負うかということです。
②は、担当職務や勤務場所が変更される予定か、昇進などがあるかなどです。いわゆる人材活用の仕組みです。
③は、採用手続や採用方法、勤続年数、労働組合との交渉などなど関連するすべての事情です。
■パート法との違い 正社員との同一性は要件でないこと。
パート法にも差別的取扱禁止規定がありますが、これは正社員とパート社員が職務内容ばかりでなく、配置転換や昇進などの人材活用の仕組みも正社員と同一であることが要件とされています。(そんなパート社員はいません)
しかし、労契法20条は、職務内容が同一でなくてもよいし、職務内容及び配置転換の範囲についても、正社員と同一である必要はありません。
したがって、労契法20条は、パート法8条よりも柔軟に解釈されるべきものです。パート法8条と同じ様に解釈してはなりません。
■対象となる労働条件は一切の処遇待遇
賃金、諸手当、賞与、退職金、労働時間だけでなく、安全規定、労災補償、服務規程、教育訓練、食堂利用などの福利厚生待遇も含まれます。
■具体例
労働条件は、それぞれの企業ごとに異なり、実態も違うので簡単に結論は出せないのですが、敢えて極単純化して私なりの結論を書いてみます。
○食堂利用
正社員は食堂利用できるが、有期社員は食堂利用ができないという格差は違法か。
→これは違法となります。
○慶弔休暇
正社員には慶弔休暇があるが、有期社員には慶弔規定がない格差は違法か。
→これも違法となります。
○安全装具の支給
正社員には、安全具(安全帽、安全手袋、防じんマスク等)が無償で支給されるが、有期社員には支給されない。
→これも違法
○通勤手当
正社員には通期手当がでるが、有期社員には通勤手当がでない。
→これも違法となるでしょう。
ただし、正社員と有期社員との通勤範囲の実態も考慮して差異がないかは確認すべきべきでしょう。
おそらく使用者は、正社員は長期勤続を想定して配転が多く長距離通勤が生じるから通勤手当を支給するが、有期社員は配転が予定されず勤務場所の近くの人しか雇わないのでで、通勤手当を払わないと主張してくることでしょう。この点は各職場の実態を見て反論する必要があります。
○住宅手当
正社員には月額2万円の住宅手当が出るが、有期社員には出ない。
→三要素を考慮して不合理として違法となる場合がある。
使用者は、住宅手当について、長期雇用を前提として配転などがある正社員への援助であるから、合理性があると主張するでしょう。
しかし、実際、正社員の配転の実態などを見て、有期社員と実質的に変わらないのであれば、少なくとも一定の勤続年数以上の有期社員との格差は違法となる可能性が高い。
例えば、実際には配転が多くないにもかかわらず、配転しない正社員にも住宅手当が支給されているが、5年~10年勤続してきた有期社員には一切、住宅手当は支給されないような場合には不合理な格差となるでしょう。
○賃金などについても
違法となる場合もあるでしょう。特に、正社員の昇進や配転が多い大企業よりも、中小企業のほうが格差の不合理性が明白になることが多いと思います。
■有期社員のアンケートの実施を
労働組合で次のような有期社員の労働条件について、アンケートを実施して、格差の是正を要求することが必要でしょう。
              有期社員の労働条件アンケート(案)
 
 2013年4月1日から労働契約法が改正され、有期契約であることを理由とした不合理な労働条件を設けることが違法となりました(同法20条)。そこで、有期社員の労働条件改善のため下記の質問をしたいと思います。よろしくご協力下さるようお願いします。
1 あなたの会社の業種は何でしょうか?
    □製造業、□販売業、□飲食業、□金融・保険業、□情報システム業、□福祉
2 あなたの会社の従業員数は、およそ何人ですか?
       (    )人  ※だいたいの人数で結構です
3 あなたの会社に有期社員(パートやアルバイト、嘱託等も含めて)何名ですか?
      (    )人  ※だいたいの人数で結構です
4 有期パート社員は何人ですか?
            (    )人 ※だいたいの人数で結構です
5  有期のパート社員の1日の労働時間、週の労働日数は何日ですか?
            一日(   )時間、週(   )日
6 フルタイムの契約社員・嘱託社員は何人ですか?
            (    )人 ※だいたいの人数で結構です
7 正社員に支給されて、有期社員に支給されていない手当はありますか?
 次の中から選んで下さい。
  □ 交通手当・通勤手当
  □ 食事手当
  □ 住居手当
  □ 営業手当
  □ その他手当(              )
8 賞与は有期社員に支給されますか?
  □ 支給されない
  □ 支給される
    → □正社員と同じ
    → □正社員より低い  → どのくらいの差ですか?(      )
9 休暇等で正社員にはあるのに、有期社員にはない休暇等の制度はありますか?
 次の中から選んで下さい。
  □ 育児・介護休暇、□慶弔休暇、□結婚休暇、□病気休暇、□休職制度
  □ その他(       )
10 正社員には利用できて、有期社員に利用できない制度はありますか?
 次の中から選んで下さい。
  □ 社員食堂の利用
  □ 安全具の支給(マスクや手袋、安全靴など)の支給
  □ その他(                )
11 有期社員として不満や不安に感じていることがあれば自由に記入下さい。
        差し支えなければ社名、ご氏名等を記載下さい 
        社 名(            )
        ご氏名(             ) 連絡先(           )
 ありがとうございました。

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2013年3月20日 (水)

福島第1原発での下請労働者の問題 厚労省への要請

■厚労省への申入れと要請に赴く

今まで幾度か、福島第1原発の下請労働者の安全対策問題と偽装請負問題について、個別に相談のあった下請労働者の代理人として、安衛法違反や職安法違反で事業者を申告や告発をしてきました。このことはブログにも載せました。
http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2012/11/post-f143.html

そこで、厚労省の担当部署に日本労働弁護団として次のような申入れをしました。

原発労働は重層的下請構造のもとで原発作業員の健康に対する配慮をおよそ欠く事件が複数明らかになっています。一方で、偽装請負等違法な就労形態が横行し、原発作業員の安全衛生に対する責任の所在が不明確となっています。かかる問題は構造的なものであり、最早個別事案への対応のみでは是正できるものではないと考えております。偽装請負等違法な就労形態の根絶及び原発作業にかかる施設・設備を管理する注文主東京電力による直接的かつ一元的な安全衛生管理が必要不可欠であると考えます。

 
そこで、①労働安全衛生法第31条1項の「特定事業」に原発作業を加え、注文主たる電力会社に対して労働災害発生防止義務を課すこと、②偽装請負等違法な就労形態による原発作業の横行という事態に関する厚生労働省の対策・見解についてお伺いしたい。

■厚労省のご回答

 その上で、昨日、担当部署の担当官と意見交換(陳情?)をしてきました。担当部署は、労働基準局の安全衛生課と職業安定局の派遣・有期労働対策部でした。

■①安衛法問題について

担当者の回答は次のとおり。

 「安全衛生法31条については、電力事業が現在の政令で定める特定事業(建設業、造船業)に当たらないから適用できない。」と回答。

この点はそのとおり。だから、政省令の改正が検討課題となるので申し入れたのです。

また、「同31条は、電離放射線対策などの労働衛生を規制対象にしておらず、物理的な倒壊や事故などを対象とする規定であり、現行法令では規制のしようがなく、せいぜい指導することしかできない」と回答。 

これはおかしいでしょう。安衛法は、労働災害(業務に起因する負傷、疾病、死亡)防止のためであり、31条は安衛法第4章の労働者の危険又は健康障害を防止するための措置の章に位置づけられ、物理的な危険だけでなく、衛生上の健康障害防止も含まれるはずです。まあ、官僚解釈で、素人を煙にまく論述です。

さらに、「安衛法31条は、注文者が自ら工事を行うということが要件となっており、福島原発での東京電力の作業は、設計監理はしているが、施工管理をしていないと聞いているから同条は適用できない」と回答。

福島第1原発の復旧・廃炉作業については、東京電力は「設計・監理」しか行わず、「施工管理」をしていないというのが厚生労働省の認識であり、東電からそのような報告を受けているということでしょう(もし本当なら、廃炉作業は、国直轄の事業で行うべきです)。

これは私の推測ですが、安全衛生法違反の聴取の際に、東電は、このように弁明しており、元請や下請への責任転嫁をしているのではないでしょうか(担当者は、いやに自信たっぷりに応えていましたので。)。それっておかしいって思わないのでしょうか。(法曹であれば、東電が責任逃れに言っている可能性を念頭において事情聴取しますけどね。)なお、今、福島第1原発で停電したが、東電は設計監理をするだけで、現場での施工管理をしていないことになりますね。

要するに、厚生労働省は、「個別的に申告されたら対応しますが、それ以上は何もできせん(指導くらいするけど)。現行法では無理(言外に、「そんなこともわからんのか。だから一般人は困る。この忙しいのに時間のとらせやがって」)ということでしょう。  

いや、ごもっとも(誠に、ご多忙のところ申し訳ありません)。

でも、だから厚労省が政策官庁として、法令の改正を求めたらどうか、というのが、こちらの意見というが要望です。

われわれは、「重層下請構造で安全対策が必要なのは、建設業や造船業とまったく同じ構造であり、福島第1原発の場合には、東京電力が発注者として管理することが、労働者の安全にとって重要であり、法令の改正が必要ではないか」と述べましたが、これについては黙して語らずでした。

厚労省(というか、旧労働省)は監督官庁から政策官庁へというのがスローガンになったこともあったそうですが、やはり監督官庁なのですね。

■次に、②偽装請負の対策についてです。

公式回答は、要するに「労使ともに対象として職安法や派遣法についての啓発活動に努力します。個別に申告があれば適切に対応します」ということです。

朝日新聞は次のように報道しています。厚労省の担当官も知っていました。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130312-00000008-asahi-soci

原発要員計画が破綻 福島第一、半数が偽装請負の疑い

政府と東電は昨年7月にまとめた工程表で、年間最大1万2千人の作業員が必要と試算し、2016年までは「不足は生じない見込み」と明記。福島第一で働く際に必要な放射線業務従事者の指定を昨年5月までに受けた2万4300人のうち、高線量を浴びた人を除く2万3300人を「再び従事いただける可能性のより高い母集団」と位置づけ、要員確保は十分可能と説明していた。

ところが東電が昨年9~10月に作業員4千人を対象にしたアンケートで、「作業指示している会社と給料を支給している会社は同じか」との質問に47%が「違う」と回答。

下請けが連なる多重請負構造の中で偽装請負が横行している実態が判明し、経済産業省は2万3300人を「母集団」とみるのは困難と判断して6月までに工程表を見直す方針を固めた。被曝(ひばく)記録より高い線量を浴びた人が多数いることも発覚し、「母集団」の根拠は揺らいでいる。舟木健太郎・同省資源エネルギー庁原発事故収束対応室長は「労働環境の改善は重要。工程表全体を見直す中で要員確保の見通しを検討する」と話す。

このようなアンケート調査の結果が出たが、厚労省では実態調査をしているかと聞いたところ、アンケートでは厳密な偽装請負かどうか判定できないとして、「朝礼で、元請の所長が挨拶しただけで、指揮監督を受けていると誤解して、アンケートに答えているかもしれない」ということでした。

まあ、これが厚労省の認識なんですね。

我々は、福島第1原発の廃炉事業は特別なケースだから、せめて二次下請までとして、原発作業従事者は、二次下請が全員を直接雇用するようにすべきではないかと述べたところ、担当者は、「重層下請構造自体は違法とは現行法では言えないので、十分な適切・適法な管理体制がないことを問題とする」ので、「重層下請構造自体を是正するように指導できない」と言う回答です。

■福島第1原発事故収束に対応した厚労省担当部署

最後に、朝日新聞報道によると、経産省には「原発事故収束対応室」があり、その室長が「労働環境の改善は重要」とコメントしているので、厚労省も、原発事故収束対応の部署があるのか、この経産省の対応室とどのような連携をしているのかを質問しました。これについては、承知していないというのが回答でした。

■歴史は繰り返され何も変わらない

30分の短い時間でしたが、要するに厚労省は、福島第1原発の安全対策や偽装請負問題は、一般の労災防止行政や労働監督行政の一つとして淡々と粛々とやるという姿勢であることが良く分かりました。

まあ、あと20年、30年はかかる廃炉作業の間に、下請労働者の労災事故、偽装請負、そして放射線障害の労災は、放置されて、将来に大きな問題になるのでしょう。そして、それは、国(厚労省)の責務ではなく、事業者や労働者がちゃんと法令を守らないからであって、国(厚労省)の落ち度でもなんでもないというスタンスなのです。

たしかに、建設アスベスト訴訟において、厚労省は、東京高裁向けの控訴理由書で、このような主張を提出しています。アスベストで肺ガン、中皮腫、石綿肺になるのは毎年なんと1000人も発症していますが、厚労省は、比率としては極めて僅かにすぎないとして、原告患者らは、自分で防じんマスクしなかった例外的な労働者であると言ってのけてますからね。さもありなんと思った一日でした。

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2013年3月17日 (日)

解雇自由化と解雇金銭解決制度 「解雇の沙汰も金次第」第2ラウンド

■民法627条の解雇の自由

長谷川閑史(武田薬品社長・1946年生)が、内閣にもうけられた産業競争力会議の第4回会議で、労働契約法16条を見直して、民法627条1項のいつでも解雇できると定め、また、解雇の金銭解決制度を導入するように提言しています。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai4/siryou2.pdf

これを朝日新聞も大きく報道していました。

http://www.asahi.com/business/update/0307/TKY201303060639.html

■規制改革会議の雇用ワーキンググループでも

鶴光太郎教授(慶応大学)も、解雇ルールの見直しを提言し、解雇金銭補償制度と正社員の多様化を突破口にすると述べています。

http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kaigi/meeting/2013/committee/130225/item10.pdf

■前にも聞いた歌

解雇の自由化と解雇の金銭解決制度は、小泉内閣の時にも、規制改革会議の福井秀夫氏やオリックスの宮内、八代教授らが大きな声で歌っていました。

小泉政権のもと、厚労省は、2006年、労働契約法で解雇の金銭解決制度を導入する一歩手前まで勧めました。

「解雇の沙汰も金次第?」というブログを2006年に書きました。

http://app.m-cocolog.jp/t/typecast/116589/104432/10859541

再度、登場でデ・ジャブみたいです。

■アベノミクスの三本目の矢は、相も変わらず規制撤廃の「新自由主義」

アベノミクスの一本と二本目の矢は、短期的な景気対策ですが、三本目の矢は、雇用流動化と解雇自由化です。

もっとも、この武田薬品の社長さんは民法627条のように解雇自由にしたいと言いながら、他方で、解雇金銭補償制度を導入すると言っています。解雇自由なら、解雇に金銭も支払う必要もないわけです。ですから、この社長さんは法律的なことは、ちっとも分かっていない方です。

同氏は、武田薬品のヨーロッパ現地法人の社長(ドイツ)もやった方のようですが、ドイツの労働法はまったく知らないのですね。世界標準の解雇ルールだと、解雇は正当な理由が必要とするのが世界標準ルールであり、解雇自由は米国のローカル・ルールでしょうに。

他方、鶴光太郎教授は、次のように短期的な具体策をあげます。

正社員の次の3要素(「鉄の三角形」のように相互の補完性が強い)のどれから
改革の「突破口」を切り開くのか

(1)無限定社員(将来の職務・勤務地等の無限定)⇒ 地域・職務限定型正社員
の雇用ルール整備

(2)期間の定めのない雇用(無期雇用)⇒ テニュア制度(数年の有期契約で能
力が認められれば正社員に転換する仕組み)の雇用ルール整備

(3)判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルール ⇒「解雇補償金制度」の創

この中で、鶴教授は、「判例に基づく解雇権濫用法理による解雇ルール」と書いています。まさか、この方が労働契約法16条があることを知らないわけはないでしょう。

ですから、この「判例法理に基づく解雇ルール」っていうのは、「整理解雇法理」を意味しているのかもしれません。この整理解雇を対象として、「解雇補償金制度」を導入しようとしているのでしょうか。

この規制改革ワーキング・グループの専門委員に、労働法学者の島田陽一教授、水町勇一郎教授が入っています。お二人は、労働政策審議会の公益委員となる方々です。

この方々は、2005年の厚労省のもとでの「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告書と同様の意見を述べることでしょう。次の意見書を再読したほうが良いようですね。

http://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/09/dl/s0915-4d.pdf

この報告書では、解雇の金銭解決制度が提案されていました。しかし、この制度は、男女差別や不当労働行為解雇のような場合にも「金で解決」するという不合理さが指摘され、また裁判所側の反対にあって、頓挫したものでした。

これがまたぞろ復活ですか。

■規制改革会議雇用ワーキング・グループへの抗議の行動を

内閣の規制改革会議で、大方針が決まれば、労働政策審議会は、その大方針に従い審議をすすめることになります。

したがって、特に規制改革会議の雇用WGで解雇規制の撤廃や解雇金銭補償制度を決めさせないように、労働組合は、抗議行動や運動を同規制改革雇用WGに集中させるべきです。もはや労働政策審議会になって具体化してからでは遅いです。労働者の代表も入れずに審議することが問題です。

しかも、この雇用WGの会議が非公開で傍聴もできないようです。今頃、非公開のワーキング・グループで議論を進めるなんて時代遅れもいいとこです。労働者・労働組合は、この規制改革会議の雇用WGの傍聴を求め、また、会議開催日には、デモや座り込みをして抗議行動をするべきでしょう。

しかし、ある種の経済学者って、本当に心から、私心なく、解雇を自由にしたら景気も経済も良くなるって思っているものなのですね。

仮に日本企業が不効率で衰退しているのであれば、誰よりも責任を負うべきは経営者・役員です。企業の業績悪化は経営者の無能の証。しかも、取締役は委任だから、短期に自由に解任しても全く問題はない(民法651条1項)。

が、そんなことは経済学者も誰も言わず、労働者の解雇自由は大声で言われるのはなぜでしょう?

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2013年3月 8日 (金)

有期労働契約の「更新上限の合意」への対応策

■労働弁護団 有期契約ホットライン 相談例

昨日3月7日、労働弁護団で有期労働契約についての全国ホットラインを実施しました。相談件数は、東京で39件でした。

ただ、改正有期労働契約に関して次のような相談が寄せられました。

今まで、有期で5年、10年働いてきたのに、会社の有期社員全員に、今年4月から、更新上限を5年と書かれた有期労働契約書を締結するように言われている

懸念された無期転換ルールを回避するために更新の上限を決める就業規則や契約書を提示するという動きです。

■法律解釈

従来、更新の上限が定められておらず、更新の可能であるという有期契約を締結してきた有期社員にとっては、当該有期労働契約の内容(労働条件)は、更新の上限なしです。

今回の改正労契法の18条(4月1日から19条)は、有期社員が従来の労働契約と同一の労働条件で更新を申し込むことができると定めています。使用者は、客観的合理的な理由及び社会通念上相当でなければ更新を拒めず、「従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件」で有期労働契約が更新されることになります。

したがって、有期社員が更新の申込みをすれば、従前の「更新上限なし」の有期労働契約の更新を使用者は承諾しなければなりません(客観的合理的な理由及び社会通念上相当と認められる雇止めの理由がないかぎり)。

この際、使用者が、当該有期社員が「更新の上限を定めることに同意しないから」として雇止めをした場合には、当該雇止めは、無期転換ルールを定めた労働契約法の趣旨及び労契法18条(4月1日から19条)に反し、違法となります。

■有期社員及び労働組合がとるべき対応

○準備行動

先ず、有期社員は、使用者に、もしこの合意をしなければどうなるかを質問する。

この場合、使用者は、「合意しなければ、すぐ3月末で雇止めをする」と回答するでしょうから、この回答をしっかりメモや録音しておくことが重要です。

○理想的な行動パターン

更新合意を締結することなく、従前の有期労働契約(更新上限なしの有期契約)を申し込む。使用者は、上記の法律解釈のとおり、これを理由に雇止めをすることはできない。

仮に、使用者が雇止めをしても、その雇止めは無効となります。

勇気のある有期社員で、労働組合が応援してくれる人は是非、この対応をとることをお勧めします。
都内の方であれば、私が代理人になって会社と交渉してもいいです。雇止めされたら労働審判でたたかいましょう。

○現実的な行動パターン

しかし、有期社員は雇止めされたら困りますので、不承不承でも更新上限の記載のある契約書にサインをしてしまうでしょう。

でも、この場合でもあきらめる必要はありません。

上記の準備行動をして、使用者が、合意しなければ雇止めをすると回答したことを記録しておくことが重要です(文書、録音、メモ)。

その上で、更新の上限を定められた有期労働契約書に署名した後、かつ、契約更新して、2,3日働いてから、労働組合があれば、労働組合が、次のような要求書を会社に提出しましょう。

○○株式会社  御中

今回の更新上限の合意は、労契法18条の潜脱(せんだつ)するもので、改正労契法の趣旨に反して違法無効であり、撤回を求める。

                                                        ○○○○ユニオン

もちろん、有期社員個人で、このような異議を述べることをしても良いのですが、一人では弱い立場なので、労働組合に応援してもらうのがベターです。

もし、この異議申入れを理由にして、使用者が「やっぱり雇止めをする」と言ってきても、これも違法となり、雇止めは法的に無効です。

会社に労働組合がない場合には、地域の誰でも入れる労働組合に相談することをお勧めします。または、日本労働弁護団の所属の弁護士に相談して下さい。

■就業規則の変更への対応

なお、有期社員向けの就業規則に、今まで更新の上限がないにもかかわらず、有期契約の更新の上限が新たに定められた場合には、労働条件の不利益変更(更新の上限のない労働条件から、更新上限のある労働条件への不利益変更)ですから、労働契約法10条違反です。従前からの有期社員(有期契約労働者)を法的に拘束することはできません。

労基署は、本来、このような就業規則の変更は、改正労契法新18条違反として、受理せず、変更を命令すべきですね。

■働く人のための「改正労契法等マニュアル」

日本労働弁護団は、労働者の視点にたってのマニュアルを作成して、頒布しています。我々、労働弁団所属の労働弁護士が、使用者の対応を睨んで、実践的な労働者・労組の対応を考えて、解説した本です。興味のある方は、日本労働弁護団のHPを参照ください。

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2013年3月 3日 (日)

債権法改正の中間試案(案)

■中間試案(案)のマスコミ報道

2010年10月から法務省法制審議会民法(債権関係)改正部会にて審議されてきた債権法改正の中間試案(案)が発表されています。正式な「中間試案」は3月中旬にも公表される予定だそうです。

マスコミも、大きく取り上げました。

○契約ルール、中小に配慮 民法改正中間試案(日経)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC2600G_W3A220C1EA1000/
○民法改正:中間試案 国民目線に立てるか(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/m20130227ddm012010063000c.html
○民法改正:「約款」の規定を新設 法制審の中間試案(毎日)
http://mainichi.jp/select/news/m20130227k0000m040051000c.html
○民法に「約款」規定 法定利率を変動制に 法制審中間試案(東京)
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013022702000132.html
○契約ルール、120年ぶり全面改正へ 個人保証制度など(朝日)
http://www.asahi.com/national/update/0226/TKY201302260403.html
○「約款」のルール新設=ネット売買などで消費者保護
-法制審部会が民法改正試案 (時事)
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2013022600903
○不当な約款無効、消費者保護強化…民法改正試案(読売)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130226-OYT1T01429.htm?from=ylist

■主な改正項目
○約款規制の導入(約款の法的根拠と不当条項を違法とする規制導入)
○個人保証の制限
○法定利率の見直し(5%から3%に)
○消滅時効の見直し(短期消滅時効の廃止と、10年の消滅時効の短期化)
○暴利行為の無効
○情報提供義務の要件
等々

もっとも、これらはあくまで「中間試案」であり、2013年4月から6月までパブリックコメントを募集し、あと1年間、法制審部会で審議される予定とのことです。早ければ2015年の通常国会に民法(債権法)改正法案が提出される予定。

■暴利行為の規定の新設

具体例として、公序良俗の暴利行為の案をご紹介します。民法90条は、公序良俗に反する契約を無効としています。これに関して次のような改正中間試案(案)を提案しています。

公序良俗(民法第90条関係)
民法第90条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は,無効とするものとする。

(2) 相手方の困窮,経験の不足,知識の不足その他の相手方が法律行為をするかどうかを合理的に判断することができない事情があることを利用して,著しく過大な利益を得,又は相手方に著しく過大な不利益を与える法律行為は,無効とするものとする。

(注) 上記(2)(いわゆる暴利行為)について,相手方の窮迫,軽率又は無経験に乗じて著しく過当な利益を獲得する法律行為は無効とする旨の規定を設けるという考え方がある。また,規定を設けないという考え方がある。

上記(1)は現行民法とほぼ同じ、(2)は新たに法律に定めるということです。消費者や高齢者、また労働法の知識のない労働者に不利益を与えた場合には、違法無効とするという規定です。

■労働契約での具体例

例えば、もう5年も同じ会社で働いてきた6ヶ月契約の有期契約労働者(有期社員)が契約期間満了の1週間前に、使用者から次の有期契約で最後にするとの合意をするように迫られ、「もし次回で最後という合意しなければ、今回は更新しない」と通告を受けたとしましょう。

有期社員は、1週間後に職を失うわけにいかないため、やむなく最後の契約という合意にサインして(不更新合意)、もう有期契約を更新しました。そして、6ヶ月後に期間満了として雇止めをされました。

このような場合であっても、多くの裁判所は、更新しないという合意をした以上、有期社員には、雇用継続の合理的な期待はないとして使用者の雇止めを有効としています(大阪地判平17.1.13・近畿コカ・コーラボトリング事件、東京高判平24.9.20・本田技研工業事件)。

しかし、改正労働契約法では、有期契約労働者は、従前と同じ労働条件(有期かつ更新が可能であるという労働条件)で、更新の申込みができると定めています。労働者に雇用継続を期待する合理的な理由があると認められる場合には、使用者は、客観的合理的な理由及び社会通念上相当であるという事情がない限り、更新を承諾したものと見なされます。

したがって、上記の場合では、有期社員は、不更新の約束をしないで、有期の申込みをすることができます。ところが、有期社員は、労働法などの知識の不足により、失職という重大な不利益を被りました。こういう場合には、その不更新の約束は、民法90条に違反して、違法無効となります。

この暴利行為の新たな規定は、消費者契約だけでなく、情報量や交渉力で使用者に圧倒的に不利な立場にある労働者にとっても、公正な契約を実現するために重要な規定になります。

■暴利行為規定に対して経営者と一部の弁護士会が反対

この暴利行為の規定については、日本経団連や経済同友会は反対をしているようです。そこで、(注)で、このような規定を設けない考えがあると書いています。

なお、驚いたことに弁護士会の中で、この暴利行為の新設に反対している弁護士会があります。なぜ弁護士会が、この規定に反対するのでしょうか? 理解に苦しみます。

「濫用の危惧」とか、「そもそも債権法改正は新自由主義的改革の延長であり、債権法改正を必要とする立法事実がない」などという理由のようです。

■雇用についての中間試案(案)

中間試案(案)では、雇用について、次のような提案がされています。

1 報酬に関する規律(労務の履行が中途で終了した場合の報酬請求権)
(1) 労働者が労務を中途で履行することができなくなった場合には,労働者は,既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるものとする。

(2) 労働者が労務を履行することができなくなった場合であっても,それが契約の趣旨に照らして使用者の責めに帰すべき事由によるものであるときは,労働者は,反対給付を請求することができるものとする。この場合において,自己の債務を免れたことによって利益を得たときは,これを使用者に償還しなければならないものとする。

2 期間の定めのある雇用の解除(民法第626条関係)
  民法第626条の規律を次のように改めるものとする。
(1) 期間の定めのある雇用において,5年を超える期間を定めたときは,当事者の一方は,5年を経過した後,いつでも契約を解除することができるものとする。

(2) 上記(1)により契約の解除をしようとするときは,2週間前にその予告をしなければならないものとする。

3 期間の定めのない雇用の解約の申入れ(民法第627条関係)
 民法第627条第2項及び第3項を削除するものとする。

上記1(2)は、従来は次のような案でした。

「使用者が労働者による労務の履行を妨害するなど,使用者の義務違反によって労務の履行が不可能になった場合には,労働者は,使用者に対し,約定の報酬の額から債務を免れることによって得た利益の額を控除した金額を請求することができる」

この案のように「使用者の義務違反」ということになると、現行法の「債権者(使用者)の責めに帰すべき事由」(民法536条2項)と異なり、賃金を請求することができる場合が極めて限定されるおそれがありました。工場が火災にあって、労務が履行できなくなった場合の賃金請求権の成否、解雇された場合、解雇が違法無効となった場合の賃金請求権の法的根拠などに大きな影響を与えることになります。

今回の中間試案(案)では、現行法を変更しない方向での案となっています。

上記2の(1)ですが、現行民法は次のように定めています。

民法626条
1 雇用の期間が五年を超え、又は雇用が当事者の一方若しくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。ただし、この期間は、商工業の見習を目的とする雇用については、十年とする。

2  前項の規定により契約の解除をしようとするときは、三箇月前にその予告をしなければならない。

労基法が適用されない家事使用人などの雇用契約には、民法の規定が適用されます。そこで、商工業の見習い10年という部分を削除するという内容です。

もっとも、労働基準法がほとんどの場合に適用されるので、労働者は労基法137条で一年過ぎたら何時でも退職することができることになっています。

まあ本当は、すべて労基法と同一の規制をすることのほうが良いのでしょうが。この雇用と労基法、労働契約法の統一(統合)は今後の課題です。

■今後について

約2年間にわたり、労働弁護団の意見書を法制審部会に提出したり、弁護士会の委員会を通じて意見を述べたり、また「連合」選出の法制審部会の委員もこの点について強く訴えていました。これらの努力の結果、上記のとおり、現行規定を踏まえた、より良い案が提案されています。

今後、債権法改正の中間試案を、さらに注目する必要があります。中間試案が提案されてから、少しずつ、このブログでも検討していきたいと思います。

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2013年2月24日 (日)

改正労働契約法20条の活用と菅野説批判

■2月24日に労働弁護団の労働法講座開催

改正労働契約法の活用について話をしてきました。
そのときのレジュメ(誤植などの訂正したもの)をアップしておきます。
当日、労働弁護団で作成した改正労契法・派遣法・高年法マニュアルも発行しました。

■改正労契法20条の有期を理由とする不合理な労働条件の禁止
4月1日から施行されます。

改正労契法20条は、無期契約労働者(正社員)の労働条件と、有期契約労働者の労働条件の相違が、職務の内容(業務の内容及び当該業務の責任の程度)、当該職務の内容及び配置の転換の範囲、その他の事情を考慮して、不合理であってはならないと規定されています。

例えば、無期契約社員(多くは正社員)には危険業務手当(例えば、除染作業危険手当)が支給されるのに、有期契約社員には同じ業務を担当しているにもかかわらず、危険業務手当が支給されないということは、不合理な相違ということになるでしょう。


これ以外にも、正社員には分娩休暇があるけど、有期社員には分娩休暇がないとか、正社員には労災の上積み補償があるけど、有期契約社員には上積み補償がないとか、いろいろ不合理な労働条件があると思います。

■パート法8条との違い
パート法8条は、正社員(通常の労働者)と、有期契約社員との間の職務内容や人材活用の仕組みが同一であることを要件としていますが、改正労契法20条は、その「同一性」を要件としていません。個々の労働条件ごとに、不合理であるかどうかが問題になるので、柔軟な解釈が可能になります。改正労契法20条をパート法8条の延長で解釈しては(させては)ならないでしょう。

■菅野「労働法」第10版批判
労働法学会のビッグネームの菅野和夫教授が、労契法20条について、不合理となるのは、格差が法的に否認すべき程度に不公正に低い場合に限定するとの見解を表明されています(菅野労働法第10版235頁)。

その論拠は、どうやら、正社員と有期社員との労働条件の相違が日本の雇用社会の在り方に密接にかかわっており、日本の雇用制度全体と労使自治に在り方にかかわっており、不合理であるかどうかという司法の介入は謙抑的であるべきという考え方のようです。

安西愈弁護士は、「菅野ショック」と称して、これを鬼の首をとったかのように、改正労契法を批判しています(労働新聞連載から)。

しかし、尊敬する菅野和夫教授の見解ですが(先生の労働法10版を御送付していただきながら批判するのは心苦しいところですが・・・)、この見解は、まったく時代遅れの見解だと思います。

■立法経過に反する
まず、労政審でも国会審議などの立法経過において、労使自治の尊重や日本型雇用制度の実態から、不合理な労働条件が「法的に否認すべき程度に不公正に低い労働条件」である必要がある」なととは何らも要請されていません。

■立法趣旨に反する
改正労契法の趣旨は、正社員中心(メンバーシップ型雇用)の日本型雇用システムが従来、有期労働契約を濫用的に利用(雇止めの不安及び低い労働条件)してきたことの反省から、改正労契法20条を総説したものです。この趣旨とは、研究会や労政審、国会審議からは明白です(菅野先生の高弟の学者たちも含めて)。

■メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の概念のイデオロギー的濫用?
メンバーシップ型雇用とジョブ型雇用の概念は、雇用社会の実態を説明するには、極めてわかりやすい概念です。日本型雇用制度を説明するには便利な概念です。

ところが、余りにわかりやすいために、このところ、正社員と非正社員との違いを「正当化」するイデオロギー概念になりはじめてはいないでしょうか。「メンバーシップ主義」という用語まで使う学者も出現しています。

「非正規社員は会社のメンバーの一員ではないから、労働条件が異なっても仕方がない。メンバーシップの正社員とジョブ型契約の非正規・有期の労働条件に相違があるのは当然えある」などとの論述も最近、とみに目にします。

■批判的概念こそ求められる
メンバーシップ型契約とはいえども企業に家庭を含めて全生活を包摂される(24時間戦える企業戦士)という生き方はおかしい。ジョブ型契約とはいえ、雇用の安定と公正な労働条件を補償されるべきだという批判的概念であるべきでしょう。

もともと、メンバーシップ型契約は、そのような批判的意味も含まれていたように思っていましたが(ヨーロッパでは、という「出羽の守」的な論調ですが)。


そこで、両者を統合する価値(批判)概念としては、今はやりの「ディーセントワーク」とか、「ワークフェア」とかということになるのでしょうか。

菅野先生の見解は、あまりに後ろ向きにすぎないでしょうか。

ちなみに、経営法曹の皆さんは、20条について、「あんな施行通達を出しやがって、だまし討ちだ」とか息巻いていましたから、菅野労働法10版の当該記述に大喜びして、改正労契法批判のボルテージをいっそうあげていました。
まあ逆に、私は、今回の労契法改正は20条があるからこそ、不十分とはいえ、成立には反対しなかったのですけどね。

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2013年2月17日 (日)

私は安倍内閣支持者?

私が、安倍内閣を支持して、労組を非難している?

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/02/post-c07e.html

アベノミクスについて書いた記事を読んで、私が、安倍内閣を支持し、労働組合を非難していると受け止められる方が、ツイッター等を見ると、結構、いらっしゃるようです。

私は、安倍政権の憲法改正や自衛隊の国防軍化などには反対ですし、基本的に右翼政権だと思っています。私は、私なりの基準で言えば、自分はどう見ても左翼(左派)だと思っていますので、安倍内閣支持者と言われると極めてショックです。

私の言わんとするのは、「インフレ目標2%」と「公共事業の大型補正予算」はデフレ不況脱出の経済政策として有効じゃないの(経済学の素人だけど)ということです。

アベノミクスの経済政策として有効な部分を、中道の民主党や左派の共産党と社民党が全否定するのはおかしいのではないかと言っているだけです。個々には不十分な点や政官業癒着の腐敗部分はあるとしても。

http://analyticalsociaboy.txt-nifty.com/yoakemaeka/2013/01/post-2a4e.html

■「労働者の賃上げの一次的責任は労働組合にある」というのは労組非難?

企業から賃上げを獲得するには、労働者が団結してストするしかないでしょう。

資本主義制度である以上、政府は企業に賃上げの命令はできない。賃上げを獲得するのは、労働組合がストライキをして企業と交渉するのが世界どこでも当たり前の姿です。

それが日本国憲法と労働組合法が本来予定している労使交渉です。

ところが、今は、労組にストを期待することが労組を非難するととられてしまうのですかね。「労働者側の弁護士なのに、労組に責任がある、なんて言うのか」という趣旨のツイッターを見ました・・・。

でも,誰が労働者の賃金を上げてくれるのでしょうか。

心優しい経営者が賃金を上げてくれるって? 
それとも内閣や著名な経済学者が企業に賃上げを要請すれば企業が賃上げしてくれる?

そんなわけないですよね。

安倍首相の日本経団連への報酬を上げる要請は政治的パフォーマンスとしては良策でしょう(政治家として世論へのアピール手段が巧みだ)。でも、安倍首相の要請も実際上の賃上げ効果はないでしょう。

■そうか。ストってみんな知らないんだ。

大規模なストは、この40年くらいないかも。

高校生時代に、鉄道のゼネストがあって、2週間くらい高校にいかなかったことが記憶に残っています。国鉄のスト権奪還ストがあったり、ストに怒った普通の乗客が、国鉄の駅舎を焼き討ちしたりしていた時代でした。1970年代前半だったと思います。

ということで、賃上げは、労組が全国的にストライキをして、労働者が自ら勝ち取るもんだという意識が国民の中では薄まっているのかもしれません。

で、「労働組合がんばれっ!」というエールです。

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改正労働契約法の労働法講座・集会のご案内

■有期労働契約に関する労働契約法の実践的課題は次の2点
 
(1)有期を理由とする不合理な労働条件の禁止を定める(改正労契法20条)をいかに活用するか。
 
 
(2)予想される使用者の対応策にいかに対応するか。
 
※予想される使用者の対応
 
    ① 5年を超える手前で雇止めをする
    ② 5年を超える前に労働条件を下げて更新する旨を申込む
    ③ 5年を超える前に「更新しない」旨を一方的に通告する
    ④ 5年を超える前に不更新とすることの合意書を締結する
    ⑤ 契約当初から、更新期間・更新回数の上限を設定する



昨日2月16日には、連合のセミナーで報告をしてきました。連合での各地方や各労組の取り組みも強まっているようです。
来週2月23日に、下記のとおり、労働弁護団の労働法講座で2時間枠で話します。

■労働弁護団 労働法講座

上記の2点について2時間お話をします。有料ですが、よろしければご参加を。

また、労働弁護団の改正労契法・高年法・派遣法マニュアルも当日には配布できると思います。

http://roudou-bengodan.org/topics/detail/20130110_post-60.php

○第1講座「有期労働契約に関する労働契約法改正」(10時~12時) 弁護士 水口 洋介(日本労働弁護団幹事長)

 
○第2講座「津田電気計器事件最高裁判決・高年法改正」(13時~15時) 弁護士 鎌田 幸夫(日本労働弁護団常任幹事)

○第3講座「職場いじめ問題への対応策」(15時~17時) 弁護士 棗  一郎(日本労働弁護団常任幹事)

■活かそう!改正労働契約法!!」集会

労働弁護団主催により、以下の日程で、「活かそう!改正労働契約法!!」を開催いたします。
今回の改正法は、不十分ではるものの、各労働組合などにおいて有効に活用し直ちに積極的な取り組みができるものですので、本年4月1日の施行前のこの時期に、積極的な活用方法と、危惧される副作用への対処法などについての、集会を企画いたしました。
ぜひとも、多くの皆様にご参加いただきたいと思います。
 日 程  2013年3月1日(金) 18時30分~20時(18時開場)
 場 所  連合会館2階大会議室
 参加費  無料(資料準備の関係がありますので、必ず事前申込みをお願い致します)
 内 容  予定 1 労働弁護団からの報告・開設
           2 各労働組合からの取り組みの報告
■実際の相談から


実際に、都内にしか事業所がない中規模(授業員200人程度)の企業の労働組合から、正社員には月2万円の住宅手当が出るのに、同じ仕事をしていてもフルタイム有期社員は5年、10年勤続していても、住宅手当が一円も出ない。とか、配送業の正社員と同じ仕事をしているフルタイム有期社員に年末年始業務手当が出ないとか、の相談が寄せられています。
それぞれの労働組合の取り組みも報告してもらいます。

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2013年2月14日 (木)

アベノミクス 「アメリカは日本経済の復活を知っている」(浜田宏一著)と「不況は人災です」(松尾匡著)

■アベノミクス

日銀が政府の圧力により、なんとかインフレ目標2%をかかげる。13兆円の補正予算が衆議院では成立。2割の円安の達成。株価の上昇。

麻生財務相が、何もしないでアゴをなでただけで円安、株高だと言ったと新聞に出ていましたが、そのとおりです。民主党政権が3年たっても実現できなかったことを2ヶ月で成果をだしました。これが今年の7月の参議院選挙まで続くのでしょうか。たぶん、続くでしょう。

■浜田宏一著「アメリカは日本経済の復活を知っている」

安倍首相のブレインの本を読みました。しかし、著名なアメリカの経済学者と著者の親密な関係にあることの披露が鼻につき、金融緩和策が有効な理屈は、経済学音痴の私にはよく分かりませんでした。唯一、ソロス・チャートの話が記憶にのこっただけ。

円・ドルレートは、日米の通貨の交換比率なので、日本の通貨量が増えれば円安になり、アメリカの通貨量が増えれば円高になる。

リーマン危機のあと、米英がいわば緊急避難として、めちゃくちゃに通貨量が増加させたが、日本銀行は無策のままであった。

■松尾匡著「不況は人災です」

これは2010年発行です。アベノミクス前のアベノミクスですが、経済学の素人にもわかりやすかった。著者は、置塩信雄(マルクス経済学)の弟子です(本人もマルクス経済学)。でも、いわゆる「近代経済学」(古いか)を駆使するマルクス経済学者のようです。

2002年が不況のどん底で、2006年まで実質GDPが良くなったという経済統計を用いて金融緩和とインフレ目標が景気を良くすることを説明しています。

この期間、設備投資が増えて、実質GDPが増加したそうです。

設備投資(企業の生産設備の投資)が増加するのは、収益率が利子率より高い場合である。

利子率が上がると設備投資は減る。利子率が下がると設備投資は増える。

2002年に前年比マイナス5.2%という落ち込みをを見せていた民間企業設備投資は、03年には4.4%の増加、04年には5.6%、05年には9.2%に拡大し、景気回復をもたらしたのでした。

なぜ、このような設備投資が増えたのか。

その理由は、予想インフレ率が上がるという予想が広がったことと、日銀の「量的緩和」という金融緩和策がはじまったからといいます。

これを実施したのは、福井敏彦日銀総裁です。ところが、この金融緩和は、2006年3月に打ち止めされて、その結果、不景気がさらに深刻化した。

英米は、積極的に金融緩和策に打って出たが、日銀は、消極的。

この本にも、ドイツの話がでてきます。

戦前のドイツで、大恐慌に際して、ドイツ社会民主党の蔵相ヒルファーディング(著名なマルクス経済学者)らが財政均衡にこだわり、失業問題を深刻化したことで、結果的にナチスの台頭を招いた

■インフレ目標、金融緩和と公共事業は日本の不景気を救うか

経済は、「消費」(家計)と「投資」(設備投資)と「政府支出」と「輸出」が基本(総需要)と言われています。

小泉改革以後、一貫して、労働者全体の給与取得は減少しています。企業の収益や内部留保、株式配当は急増してきました。

ですから、需要(消費)を増加させるために労働者の給与所得をあげることが必要です。

でも、労働者の所得を増加させるためには、企業が設備投資を行い収益をあげることができなければ、労働者の給与はあがりません。政府から給与は払われないのですから。

とすると、まず投資(民間企業の設備投資)と政府支出(公共事業)を増やす方法しかないのでは。

左派は、アベノミクスを批判して、「労働者の給与や所得をあげることが必要だ」と非難します。でもどうやってか。その方法論がありません(最低賃金アップくらいか)。

計画経済の共産主義国家であれば、政府が賃金あげろと企業に命令できるでしょうが、資本主義国家では、財政政策や経済政策を通じて行うしかないでしょう。

その方法論としては、インフレ目標と政府支出(公共事業)を増加させるしかないように思います。もちろん、政府支出は無駄な公共事業は回避し、本当に必要な社会基盤の国土強靱化や福祉に支出されるのか、自民党だから心配ですが。これは各論。

民主党は、この補正予算に反対するそうですが、民主党政権の3年間には増税が決まり、景気はまったく良くならなかった。アベノミクスは、現段階では結果を出しており、方向性は間違っていないことを証明しつつあるように思いいます。

民主党や左派が、補正予算を、財政均衡のためにだけ反対すれば、さらに参議院選挙では惨敗することでしょう。

■労働者の賃上げの第一次的責任は労働組合にある

ヨーロッパの社会民主義政権だと、こういうときには、政労使の円卓会議を開いて、賃上げについての合意を呼びかけるでしょうね。民主党はそれさえできず、決めたのは増税だけ。

安倍首相は、経営者団体に、労働者の報酬を増やすように要請しました。なかなかやりますね。

労働者の賃上げに、もっとも責任を負っているのは、労働組合でしょう。政府が、民間労働者の賃上げを直接、命令できない以上、労働組合が、ストライキをくんで賃上げを要求しなければなりません。

それもしないで、アベノミクスを非難する労働組合って、どうでしょうか?

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2013年2月11日 (月)

「沖縄独立」論

■琉球処分 琉球侵略 琉球の民族自決

日本は、1879年、琉球王国を侵略して沖縄として植民地化しました。いわゆる琉球処分です。琉球民族は、アイヌと同じように民族自治を主張できると思ってきました。

5年前に、沖縄に観光旅行に訪れたとき、偶然、首里城の近くにあった琉球王族の王墓を見学したことがあります。最近は、「テンペスト」というNHKドラマで撮影されていましたが、黒い御影石の大きな墓でしたが誰もいない寂れた様子で、やはり植民地化された国の悲哀を感じました。

■通販生活2013年春号

沖縄独立についての記事を掲載しています。

松島泰勝さん(龍谷大学教授)

NPO「ゆいまーる琉球の自治」は、「琉球自治共和国連邦独立宣言」(2010年6月23日)を発表しているとのことです。

2010年に国連人種差別撤廃委員会が、琉球人を独自の民族と認定し、米軍基地の押し付けを人種差別だとして、日本政府に琉球人を代表する人々との協議を奨励すること、義務教育の中で琉球語を用いた教育を支援するよう奨励することを勧告

この勧告は、まったく知りませんでした。国連の基準から見て、琉球人は、大和民族(おそらく関西中心の民族、蝦夷やアイヌは入らない)と独自の文化と伝統をもつ民族ということです。

伊勢﨑賢二さん(東京外大大学院教授)

独立運動を導くのはそろばん勘定ではありません。激情です。

まず、「沖縄独立」を掲げる地域政党を立ち上げ、沖縄を席巻することです。「基地反対」ではなく、「民族自決」です。全ての沖縄議会を「独立派」が完全掌握すれば、米政府は黙ってはいられません。日本政府を相手にする必要はありません。

ワシントンに政党事務所を開き、ロビー活動開始です。

伊勢崎さんは、東チモールの国連PKOに賛歌して、武装解除を指揮した方です。この方の沖縄独立の地域政党をつくり、米国でのロビー活動をするという提案はすごいですね。

■琉球自治、沖縄独立!

自民党政府をはじめとした本土の政府といくら話し合っても、沖縄への基地集中は変わらないでしょう。その意味では、沖縄独立、琉球自治共和国独立というインパクトがないかぎり、沖縄の解放はありえないのでしょう。

その独立派が力をもったときに、やっと本土の日本人が、琉球人への差別を是正することになるのかもしれません。カナダのケベック州の独立運動や、スペインのバスクの独立運動があるのですから、日本に沖縄の独立運動があってもちっともおかしくないですね。武装闘争はやめたほうが良いと思いますが。

独立しても大変でしょうが、昔の琉球王国のように、中国、日本、米国との間をうまくバランスをとって主権を維持することでしょう。

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2013年2月 4日 (月)

ロバート・キャパの写真

これですね。

http://toyokeizai.net/articles/-/12722

Photo

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2013年2月 3日 (日)

ロバート・キャパ スペイン市民戦争 「義勇兵が撃たれた瞬間」

沢木耕太郎 推理ドキュメント
運命の一枚
~"戦場"写真 最大の謎に挑む~

http://www.nhk.or.jp/special/detail/2013/0203/index.html
日曜日の夜に、途中から観ました。
■あの写真
ロバート・キャパの戦争写真。ファシストとたたかった義勇兵が、フランコ軍の銃弾に撃たれて崩れ落ちる写真として有名です。若かりし頃、世界史の教科書にものっているこの写真をみて感動したものです。国際義勇兵で、市民がファシストに銃を持ってたたかったのかと。
反ファシズムに立ち上がれと鼓舞する写真としてつとに有名な写真でした。ただ、この写真の兵士は、覆面をしたように顔が良く写っておらず、真偽不明という指摘は昔からありました。
でも、右翼ファシストが人民戦線の「国際旅団」をおとしめるための難癖だと思っていました。
スペイン市民戦争は、ファシスト(フランコ)が共和国政府軍(人民戦線政府)に反乱を起こし、ファシズム・ナチズムと、民主主義(自由主義も社会主義)の最初の対立でした。映画も「誰がために鐘は鳴る」、「カサブランカ」でも有名です。小説でもオーウェルの「カタロニア賛歌」などなど。
NHKスペシャルでは、あの崩れ落ちる兵士の写真は、実戦の映像でなく、義勇兵の演習中に、義勇兵がすべって転んだところの写真だということ、しかも、これを撮影したのは、ロバート・キャパではなく、キャパの恋人のゲルダ・タローという女性写真家だったというのです。
どうやら、写真の分析でこれは間違いないようです。
■キャパとゲルダ
ゲルダとキャパ(本名アンドレ・フリードマン)は、ユダヤ系のハンガリー人で、反ナチスの報道写真家。ゲルダは、ゲシュタポに逮捕されたこともある左翼活動家だったそうです。スペイン市民戦争当時、キャパ22歳、ゲルダ24歳。2人とも写真家だったが、売れないために、ゲルダのアイデアで、「ロバート・キャパ」という架空の写真家をつくって(まあ、二人のペンネーム)、2人の写真をその名前で発表し、通信社などに売り込んでいたそうです。
あの写真の発表直前、ゲルダはスペイン市民戦争で戦車にひかれて死亡。その直後に、この写真が報道されて、反フランコ、反ファシズムのたたかいの象徴となったといいます。
スペイン市民戦争で、人民戦線派に与したキャパは、これを訂正できなかったのでしょう。
キャパは、その後、本当の戦争写真を撮るために、ノルマディー上陸作戦の最前線に参加し、有名な会場の兵士という写真をとることになります。
その後、インドシナ独立戦争の取材で死亡。
彼が選んだスペイン市民戦争の写真集には、ゲルダに捧げると記載されており、例の崩れ落ちる兵士の写真は掲載されていないと。
本当に意外な真実です。
キャパとゲルダという20歳すぎの若者が命をかけてスペイン市民戦争に参加し、キャパは栄光の陰に挫折と苦渋を隠して、40歳でインドシナの戦場で死ぬ話し。……
栄光も、挫折も、苦渋も、理想も、恋愛も、すべて歴史の流れにとけこんで消えていく…
ゲルダ・タロー
「ゲルダ」って名前がいいですね(知る人ぞ知る高畑アニメの「太陽の王子」のヒロインがゲルダでしたが、何か関係あるのでしょうか?)
■横浜美術館 写真展示会
横浜美術館で現在、二人の写真展をしているそうですので、是非、行ってみることにします。
http://www.yaf.or.jp/yma/jiu/2012/capataro/

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2013年1月21日 (月)

大鵬 逝く 「巨人 大鵬 卵焼き」

大鵬さんが、亡くなりました。

私が子どものころ、大鵬の現役時代を白黒TVで観ていたことを思い出します。
大鵬は、本当に強かったですね。格好良かったですし。
「巨人、大鵬、卵焼き」っていうフレーズが新聞やテレビで流されています。
人気が代表的であったと肯定的なニュアンスで報道されています。
確かに、そういう側面はあります。
しかし、実際は、これには「前置き」がありました。

「女子どもの好きなもの」 巨人 大鵬、卵焼き。
これは野球や相撲の本当の面白さを知らない者(女子ども)が、ただ強いということで、巨人や大鵬が好きだという風潮に対する揶揄の言葉でした。
だから、豪勢なビーフステーキとか高級料理のフォアグラとかの本格的な料理でなく、料理のうちに入らない「卵焼き」なんですね。
もっとも、今時、「女子ども」なんて言葉は典型的なジェンダーバイアス的な禁句です。こんな用語を使ったら、フェミニスト警備隊から摘発されます。
揶揄のフレーズが、今では、単なる賛辞の言葉になっちゃうんですね。

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2013年1月 6日 (日)

”アベノミクス”とP・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」

■アベノミクス
安倍晋三総理の経済政策は、デフレ不況脱却のための金融大幅緩和とインフレターゲット2パーセント、そして、国土強靭化と銘打った公共事業の拡大です。これってまさに、ケインズ政策であり、左派の経済政策ですよね。

■P・クルーグマン
年末年始は風邪で寝込み、家人にノロウイルス罹患を疑われて一週間ほど自宅で隔離状態におかれておりました(幸い、ただの風邪でしたが)。その間、昨年末に購入したKindle PaperwhiteでP・クルーグマン氏の「さっさと不況を終わらせろ」をネットで購入して読みました。この本に書いてあることは、”アベノミクス”と同じじゃないですか!
アメリカ民主党左派の論客であり、ノーベル賞経済学者のP・クルーグマン氏の政策と安倍晋三総理の経済政策が一緒なんでね。

■デフレ不況脱出できるか
この安倍総理の経済政策は悪くはないように思えます。この間の「均衡財政」重視の政策によりデフレ不況は悪化し、失業率は高まり、社会的不安が増大してきましたからね。日本では、消費需要が低迷し、設備投資も沈滞化して、企業の海外進出で「産業の空洞化」が進む。先の見えない状況です。
とすると、素人的には、ニューディール政策のように、公共事業を増大し、そのお金は金融緩和で出すしかないと思ってしまいます。世界最大の借金国「日本」ですが、国内の持ち合いですし、一応、世界最大の金融資産を持っているのだから、当面は大丈夫との意見を信じて。
インフレになっても、直ぐには賃金は上がらないという問題はあるものの、今のデフレ不況が続けば、どんどん賃金は目減りし失業が深刻化するのだから、景気回復を優先させるしかないと思います。

■自民党「土建屋・利益誘導体制」の復活

ばらまき公共事業で、伝統的な自民党の利益誘導政策、土建国家体制が復活する面もありますが、震災対策や復興、インフラの整備に公共投資をすることで、需要喚起するほうが合理的な経済政策のように思えます。願わくば、有効な公共事業にお金を投資して欲しいものです。

■ヒトラーの経済政策
この政策を右派である安倍晋三総理が推し進めるというのは、何となく、ヒトラーがアウトバーン(高速道路)をはじめとする大型公共事業を展開し、また軍事費増大させて失業と不況を克服したという歴史を思い出します。なお、この手のヒトラーを持ち出す論法は、P・クルーグマンの本によれば、「ゴドウィンの法則」と言うのだそうです。

ちなみに、当時のドイツでは、ヒルファルディング大蔵大臣(ドイツ社会民主党員で「金融資本論」を書いたた著名なマルクス主義者)が均衡財政を行っていたのです。

■参議院選挙まで成功するか
最近の円安や株価の上昇を見ていると、少なくとも今年7月の参議院選挙までは、アベノミクスが成功するかもしれません。そうすると参議院選挙でも自民党が勝利。安倍内閣が本格的な長期政権として確立し、憲法改正の道に踏み出すことになるでしょう。
失業問題や不景気を克服するには、安倍内閣の経済政策の成功を願いたいところですが、右派政権の下での「憲法改正」と「国防軍」化は願い下げな私としては、悩ましいところです。

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2012年12月27日 (木)

2012年12月の衆議院選挙結果に思う

■自民党の圧勝?

自民党の議席は294議席(小選挙区237[得票率43%]、比例代表57[得票率27.6%])で圧勝です。もう民主党と組む必要はなくなりました。自公政権が参議院で過半数を持たなくとも、3分の2で再議決できますから。

ただ、この自民圧勝は小選挙区効果による結果です。この議席占有率が「民意」を表しているとはとは言えません。

投票で示された「民意」が反映しているのは、比例代表での結果です。

自民党  27.60%(前回26.73%)
維新   20.37%(前回 -    )
みんな   8.67%(前回 4.27%)
公明党  11.80%(前回11.45%)
民主党  15.90%(前回42.41%)

共産党   6.10%(前回 7.03%)
社民党      2.30%(前回 4.27%)
未来の党  5.60%(前回 -    )


投票率  59.3% (前回69.2%)

自民党の比例代表での得票率は、前回を1%程度上積みしただけにすぎません。ですから、自民党が圧勝したわけではない。しかし、維新の会が大躍進で、20%を超えました。みんなの党も倍増して8%です。この三党で56.7%もの支持を得ているのです。

■憲法改正派が過半数を超えた

この3党の基本政策は、ほぼ同一です。憲法改正について積極派です。つまり、憲法改正派の合計が56.7%で過半数を超えた(前回は30.1%)。これが今回の総選挙の最大の特徴だと思います。

安倍自民党総裁は、「憲法改正」、自衛隊の「国防軍」化、「日米関係の修復」、「原発維持」を強調していました。また、デフレ脱却を目指す金融緩和策とインフレ・ターゲット政策、10兆円補正予算による公共事業増大を唱えていることも大きく報道されていました。

維新の石原慎太郎代表による対中国強硬策、憲法改正(破棄)、原発容認の姿勢は明瞭です。みんなの党も、憲法改正派でした。

そして、三党に共通するのは、「小さな政府」志向と、官僚・公務員叩きです。
国民は、このような争点を理解した上で、自民党、維新の会、みんなの党を選択したと考えるのが素直な見方でしょう。

■「民意」=多数の内容

その「民意」が示すところは、「憲法改正・国防軍化の容認」、「日米同盟への支持」、「官僚(公務員)支配の打破」だと言えます。

特に、「憲法改正、国防軍、日米関係の修復(強化)への支持」に関しては、この間の尖閣諸島での中国の攻勢、北朝鮮の核兵器開発・ミサイル実験などのアジア情勢の緊迫化が大きく影響しているのでしょう。

国民は、中国の経済的・軍事的な脅威に対して、平和主義・協調主義路線では安心できず、米国との軍事同盟と自国の軍事的強化を容認したと言って良いでしょう。

そうでなければ、比例代表での自民党の微増、維新の会やみんなの党の躍進は説明できません。

■戦後民主主義消滅の区切りの選挙

共産党、社民党の得票率は、前回11%あったものが、今回8%に減少をしています。未来の党の5.6%を加えても、13%程度にしかなりません。

もはや戦後民主主義の論理では、中国の経済的・軍事的な急成長、北朝鮮の核武装という東アジア情勢の根本的変化に対して、憲法9条を念仏のように唱える共産党や社民党の


政策では、国民に受け入れられない状況になったと思われます。
今回の総選挙によって、戦後民主主義を国民自ら葬り去った区切りの選挙だったと後世の歴史家が評するように思えます。

■今後

第二次安倍次内閣は、当面は経済政策を集中することでしょう。10兆円規模の公共事業拡大、金融緩和インフレターゲット政策で、少なくとも来年7月までの短期間なら、日本経済を上向きにする可能性は高いでしょう。

その勢いで参議院選挙で、自民党や維新の会、みんなの党が参議院で3分の2を超える勢力になる可能性も高いことでしょう。そして、憲法改正が着手されます。

中国と日本の間で、尖閣諸島衝突は日常化し、軍事衝突に至る危険性が高まっています。数年以内に両国間にて武力衝突が起こるでしょう。これが国防軍化を促進します。
また、中東ではイスラエルがイランの核武装を阻止するために、イランを攻撃する可能性が高まっています。イランが核兵器開発を断念しない限り、この一、二年以内にイスラエル・イラン戦争が勃発する可能性が大。国防軍化した自衛隊は、第二次安倍内閣の下で、イスラエル・イラン中東戦争に派兵されることになるのでしょう。

このような事態を想定して戦後民主主義の遺産を少しでも残すような方策は何か。
個人的には危機感を覚えています。

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«零細企業経営者或いはブラック企業経営者の労働法知識の誤り