2008年11月30日 (日)

読書日記 「なぜ富と貧困は広がるのか」後藤道夫、木下武男共著 旬報社

■「なぜ富と貧困は広がるのか」
--サブタイトル「格差社会を変えるチカラをつけよう」
  旬報社 2008年6月発行 2008年11月読了

後藤道夫教授、木下武男教授の新著です。両教授の著作は、常に読んできました。後藤教授の格差社会についての講演を二度ほど聞き、その実態を踏まえた熱意ある講演に感銘を受けたことがあります。さて、本書は、著者が現代の若者に向けて、社会のあり方への批判とそれを克服する道への呼びかけです。

■初歩的なマルクス主義解説本

マルクス主義の初歩的な解説があります(労働価値説、搾取理論、階級、生産力と生産様式、階級闘争、階級国家論など)。工夫はされていますが、ちょと古めかしい。いまどきの若者たちは、これを読んでどう感じるのでしょうか。おそらく今時の大学生には理解できないでしょう(森永卓郎氏は、講演で「大学で3ヶ月、マルクス経済を論じたが、学生は全く理解できなかった」って言っていました)。でも、ワーキング・プアの境遇で働かされている若者にとっては、腑に落ちるかもしれません。若者に是非、感想を聞いてみたいです。

■労働組合運動について

本書は労働組合運動について詳細に書かれているのが特徴です。木下教授(「格差社会にいどむユニオン」花伝社)が執筆されています。著者は次のような労働組合改革は次の三つです。

①組織を改革する-組織論
企業別組合の外に、個人加盟ユニオンを創造し巨大化していこうと提唱しています。「産別全国組織や地域組織のなかに、個人でも入れる受け皿として個人加盟組織をつくり、そこに組織の大きなリソース(資源)を投入し、組織化にあたることです。」

②新しいユニオン運動を展開する-運動論
職種別賃金の設定(同一価値労働同一賃金の原則)と企業横断的な団体交渉の設定に向けての取り組み

③福祉国家を戦略として掲げる-政策論
「日本の労働組合は、労働社会の構造転換に対応して、これまでの日本型雇用と年功賃金を前提とした企業内の賃金・雇用の運動から完全に脱却し、「制度的方法」を飛躍的に発展させることが求められている」
「今後、政策的には、終身雇用でもなく、有期雇用でもない、第3の道を模索すべきでしょう。それは、一つの企業に縛られず転職しても不利にならない正社員の制度です。ヨーロッパ型の国家に規制された横断的労働市場とそれを支える政策を構想すべきでしょう」

労働運動に夢を語ることが重要なのでしょうね。大企業の基軸ホワイトカラーに「労働運動の変革」を求めるのは到底、無理ですから、やはり周辺の労働者に期待するしかないでしょう。

■社会民主主義と共産主義の分裂の歴史環境は消失した

著者らは、従来の左派が規定していた社会民主主義論、福祉国家の理解を大きく修正します。結構、思い切った提言です(まあ、何を今さら・・・とも言えますが)。

従来の左派の社会民主主義や福祉国家に対する理解は次のようなものでした。

これまでの福祉国家は、労働者の生活を大きく改善し、資本主義経済を規制する手段・方法を発達させましたが、同時に労働組合の多くの労使協調派にかえ、社会民主主義政党から社会変革の牙をぬく役割をはたしました。階級闘争という観点からみれば、福祉国家は、資本家階級と労働者階級の「階級妥協」といって良いでしょう。共産主義を含む左派は、階級妥協の妨害物として抑圧されることが普通でした。・・・福祉国家群も、第3世界から種々の収奪体制を維持しようとする帝国主義陣営の一部という位置をもちました。

しかし、著者らは、新自由主義改革が世界的に行われた結果、事態は大きく変化したとして次のように述べます。

激しいグローバル競争は、労働組合の力を弱め、規制撤廃と社会保障の削減もあいまって、先進資本主義国でも貧富の差は急速に拡大していきました。福祉国家は、先進資本主義諸国の支配階級から敵視されるようになり、100年近くつづいた、帝国主義と福祉国家の蜜月時代は終わりをつげます。・・・社会主義運動を社会民主主義と共産主義へと分裂させていた歴史環境は大きく変わったのです

新たな歴史環境のもとで旧来の社会民主主義派と共産主義派、それに「市場の暴力」とたたかわざるえない様々な立場の人が共同して、福祉国家を再建し高度化することが求められています。

要するに、社会民主義だ、シャミンだとか、共産主義、アカだとかの対立はもはや無意味になったというのです。もっともなことです。

■日本の場合

日本の場合には、悲しいかな「社会民主主義」があまりに「脆弱」でした(渡辺治教授「基軸と周辺」)。日本のパターナリズム的福祉を支えてきた中道保守との連携ということになるのでしょうね。

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2008年11月23日 (日)

アスベスト補償・救済制度の国際比較 立命館大学シンポ

■立命館大学の国際シンポ

11月22日、立命館大学「アスベスト災害・公害の政策科学」研究プロジェクトとして標記シンポジウムが開催され、秋の京都に行ってきました。残念ながら、日帰りのため観光はまったくできでませんでしたが。

P1000008



創思館









「ritsumeiasubesuto081122.pdf」をダウンロード

ステファン・レビン氏(アメリカ・マントサイト医科大学准教授)
ベネデッド・テラッチーニ氏(イタリア・元トリノ大学教授)
ジャン・ポール・テソニエール氏(フランス・弁護士)
カン・トンムク氏(韓国・釜山国立大学医学部予防・労働医学科准教授)
森永謙二氏(日本・前独立行政法人労働安全衛生総合研究部長)

コーディネーター 森裕之(立命館大学政策科学部准教授)
コメンテーター 宮本憲一(立命館大学政策科学部客員教授)

レビン氏は、あのセリコフ教授の弟子で、セリコフ・センター医長です。

大変に勉強になったシンポジウムでした。各国とも、アスベスト被災者の多くが建設労働者であることが報告されていました。首都圏建設アスベスト訴訟は東京地裁、横浜地裁ではじまっています。

特に、レビン氏と、フランスの弁護士のテソニエール氏の話が印象に残りました。

■レビン氏の話し

レビン氏は、アメリカでも建設労働者に多くにアスベスト被災者がいること、9.11のワールドトレードセンターの被災により、レスキュー隊の多くがアスベストによる呼吸系疾患に苦しんでいることなどがデータとともに報告されました。アメリカでは、周知のとおりアスベスト訴訟が大規模に起こされ、アスベスト被害の補償制度がすすんでいるかと思いきや、公正な被害補償制度はないとそうです。

次の二つの話が印象的でした。

(1)アメリカの訴訟による解決のゆがみ

アメリカでは、訴訟による解決が大規模に行われたが、訴訟では被災者には十分で公正な補償がなされていない。特に、弁護士が金儲けにはしり、被災者に十分な補償がなされていないということです。弁護士が金儲けのために、法律事務所が医学検査もして、原告を募り提訴するが、被災者救済のシステムをつくらず放置しているそうです。アスベスト企業の方の弁護士も、企業を破産させて巨額の損害賠償請求から逃げるように指導し、企業側の弁護士も多額の報酬を得てもうけている。

アメリカでもアスベスト被害補償法制度がつくられようとしているが、政治的にはなかなか進まず、国民皆保険もないアメリカでは、オバマ政権になったからといって、実現は楽観できない。

アメリカの弁護士はとんでもない金の亡者です・・・。

(2)アメリカ民主主義

レビン氏は、セリコフ教授が常に言っていたこととして次のように語っていました。

セリコフは、政治をよく理解していた。彼は、科学的所見や医学的所見だけでは物事は解決しない。医学者や科学者は情報を得たら、それを労働組合に知らせ、マスコミに提供し、幅広く広めて、政府と行政を動かすよう政治的影響力を行使することを重視していた。

アスベスト問題を解決するためには、このような取り組みを強めていくしかない。その結果、一つ一つ改善ができる。

アメリカ民主主義の真骨頂ですね。労働組合とマスコミと共同していくというのですが、弁護士が入っていないのは仕方がないでしょうねえ。

■フランスのアスベスト基金-仏弁護士テソニエール氏の話

アメリカの弁護士の悪辣さを聞いて落ち込んだのですが、フランスのテソニエール弁護士の発言には勇気づけられ励まされました。

フランスでは、1995年にアスベスト被害者団体(ANDEVA)が結成され、1996年にアスベスト禁止する法律が制定された。2002年2月28日、破棄院・社会法部(最高裁にあたる)が、使用者の労働者に対する安全張り世義務の内容を、従来のように手続を踏んだか(手段債務)、というものでなく、結果の問題となった(結果債務)。この安全配慮義務を尊重せず、危険性を認識していた場合、使用者は「許されない過失」があったとして責任を認められた。

フランスでは、1995年から数万件近いアスベスト訴訟が提起され、この動きが裁判所の判例を変更させ、アスベスト被害者の全面的救済が一般化した。判例変更まで、1%程度の勝訴率が、判例変更後は99%勝訴するようになった。

2000年12月23日、法律によってアスベスト被害者賠償基金(FIVA)が創設された。労災職業病であろうとうなかろうと、あらゆるアスベスト被災者と遺族に賠償金を支払う基金である。この基金は社会保障制度から拠出されている。補償は2万~2万5千ユーロの年金。基金にアスベスト被災の申請をして、審査期間は約6ヶ月。もし却下されれば、その認定を訴訟で争う。

基金が出来てからは、被災者の4分の3は、基金への申請を選び、他の4分の1は訴訟を提起している。基金を選択しないで提訴する原告の動機は、金額について不満であるから。

フランスでは、被害者が団結して訴訟を提起し、労働組合の力、マスコミの力で、法律を作った。FIVA(基金)の理事会には、被災者の代表、労働組合の代表、使用者の代表が入っている。

■森永賢二氏の話

日本では、疫学調査が行われていない。厚生労働省は即刻、疫学調査を行うべきだが、逃げているとしか思えないと述べられていました。

■首都圏建設アスベスト訴訟の目標

東京地裁と横浜地裁で提訴された首都圏建設アスベストのたたかいが目指す構想と、フランスのFIVAは共通性があります。フランスのアスベスト訴訟と基金創設へのたたかいについて、是非、詳細に知りたいものです。

トンネルじん肺弁護団で、基金の内容及び経過を調べるために、フランスに是非、行きたいものです。アメリカは遠慮しておきましょう・・・。

蛇足

・・・はやく、こういう弁護士活動に完全復帰したい今日この頃です。

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2008年11月17日 (月)

読書日記 「間違いだらけの経済政策」榊原英資著 日経新書

元大蔵相国際局長、財務官で、現在、早稲大学教授。

■デフレ不況でなかった

21世紀になってのデフレ(ディスインフレーション)は、グローバリゼーション、経済統合の結果であり、デフレスパイラルと言われた不況ではなかったというのです。「2002年以降、物価安定の下での好景気が続いた」と。

日本のデフレの正体は、東アジアでの経済統合・生産ネットワークの進化による商品価格の下落であった(価格革命)。輸入の相手先は、80年代には5%前後であった中国のシェアが、2006年には21%になっている。逆に、アメリカの輸入シェアは85年の20%から、2006年には12%にまで下がっている。

東アジア諸国を結ぶ生産ネットワーク、サプライチェーン・ネットワークが形成されていくにつれ、自動車や機械部品などのシェアが圧倒的に増え、東アジアはハイテク製品の輸出国に変貌しています。

つまり、生産ネットワークの形成は日本の素材産業や部品製造業の輸出を急速に活性化させ、その結果、鉄鋼や自動車部品などの産業が日本の景気拡大のエンジンになっていったのです。他方、中国、香港、台湾など東アジア諸国からの輸入は日本の物価を押し下げ、物価が安定するなかでの景気回復を可能していいったのです。

竹中平蔵をはじめとしたエコノミストは、この新しい事態を理解できなかったので、デフレ脱却という誤った経済政策をとったといいます。このデフレは構造デフレだということです。

このような構造デフレ(好況下の物価安定)は、歴史上繰り返されていると言います。

1870年~1913年のいわゆるパックス・ブリタニカの次代にも怒っています。この時期は第二次産業革命とグローバリゼーションの時代とも言われ、世界の一人当たり実質GDPは平均1.3%成長しており、第二次世界大戦後の1950年~73年の2.9%に次ぐ高さでした。

■資源インフレ

他方で、資源・エネルギーは稀少となり、インフレとなっている。ハイテク商品がコモディティ化し、資源・エネルギーが稀少化するという事態が同時に進行していると言います。

この資源・エネルギーの高騰は、資源が稀少となり、中国・インドの経済発展により、大量消費することになり、あともどりしないだろう。

■アメリカの金融システム崩壊

アメリカの投資銀行を中心とした金融構造が崩壊し、世界の金融システムが商業銀行モデルにもどっていき、金融構造と金融監督が大きくかわり、実物経済を離れて肥大化した金融が、より実物に近いところに、おそらく戻ってくるのでしょう。

「ともかく、アングロサクソンに従っていれば間違いない」という岡崎久彦(元外交官)流のアメリカ原理主義や、「アメリカの市場主義が正しく遅れている日本」という竹中平蔵流の市場原理主義から脱却すべきとも言っています。

■新たな公的セクターを

で、著者は、資源・エネルギー省を創設して、公的セクターの役割を高めなければならないとしています。マクロ経済では、近代資本主義の構造の大変化の時代には対応できないというわけです。

■東アジアの経済統合と日本経済

これを読んでいて、企業主導の東アジアの経済統合、生産ネットワークが日本経済の構造までかえる状態になっているということが解りました。それを主導してきたのは民間企業だということも。

これからの世界同時不況の中で、どうなっていくのでしょうか。日本の労働者の賃金の低下は経済的には不可避のようです。

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2008年11月11日 (火)

読書日記 「合衆国再生」 バラク・オバマ著 

2007年12月発行、2008年1月読了 棚橋志行訳 ダイヤモンド社

合衆国再生―大いなる希望を抱いて

■オバマ新米合衆国大統領

今年の正月に読んだ本です。民主党大統領候補を目指しており、シカゴの貧困地域で活動する黒人弁護士。これを購入したときには、まさか本当に大統領になるとは思いも寄りませんでした。

■印象に残ったエピソード-イリノイ州の死刑事件の自白ビデオ録画法案

オバマがイリノイ州の議員のとき、死刑事件の取調と自白にビデオ録画を課す法案の発起人になったとして次のようにことを書いています。

死刑制度はほとんど犯罪の抑止力にならないとわたしは思っているが、そのいっぽうで犯罪のなかにはあまりに極悪で常軌を逸していて、極刑を与えることで地域社会が最大限に憤怒を表現してしかるべきものもあると考えている。だが、当時のイリノイ州の死刑事件の裁きには、過失や警察のいかがわしい戦術や人種的偏見や不誠実な法の実務がはびこっていて、13人の死刑囚が容疑を晴らして釈放され・・・たほどであった。

死刑に反対する人々は人種差別や警察の職権濫用を繰り返し口にし、法を執行する側はわたしの法案は犯罪者を甘やかすことになるのではないかと言う。

話し合いのテーブルで、わたしは深刻な意見の相違には焦点を定めず、全員が共有しているはずの共通の価値観について話をした。つまり、無実の人はけっして死刑囚監房にいるべきではなく、死刑に相当する罪を犯した人は決して自由の身になるべきではないということだ。警察の代表からこの法案のどこが彼らの捜査の妨げになるのか具体的に指摘がなされたとき、わたしたちは法案を修正した。警察の代表から、録画するのは自白のところだけにしてはどうかと提案されたときには、この法案の目的は強要されて自白したのではないという確信を一般市民に与えることにあるのだと指摘し、断固譲らなかった。こういう過程を経て、最終的にこの法案は関係するすべての陣営の支持を得た。法案はイリノイ州上院を全員一致で通過し、署名を受けて成立した。

日本でも、現在、取調過程の可視化(録画)の法制化を日弁連が取り組んでいます。イリノイ州と同様に、警察・検察は反対しており、また、裁判員裁判反対勢力は取調の可視化の取り組みを批判しています。オバマ氏が直面した状況と似通っています。

■貧困弁護士(貧困者のための弁護士)

オバマ氏は、シカゴの市民権専門の小さな弁護士事務所で仕事をしていたようです。貧困者のための弁護士=貧困弁護士だったのでしょう。

ジョン・グリシャムの「路上の弁護士」という小説がありました。オバマは、このようなストリ-ト・ロイヤーズ(町弁)だったのでしょうか。

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あるいは、アメリカの著名な労働弁護士のアーサー・キノイ(「ある民衆の弁護士の物語」菅野昭夫訳)の末裔なのかもしれません。http://www.amazon.co.jp/%E8%A9%A6%E7%B7%B4%E3%81%AB%E7%AB%8B%E3%81%A4%E6%A8%A9%E5%88%A9%E2%80%95%E3%81%82%E3%82%8B%E6%B0%91%E8%A1%86%E3%81%AE%E5%BC%81%E8%AD%B7%E5%A3%AB%E3%81%AE%E7%89%A9%E8%AA%9E-%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%B5%E3%83%BC-%E3%82%AD%E3%83%8E%E3%82%A4/dp/4535579458/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1226417556&sr=1-1

■人間も、少しは進歩しているんだなあ

オバマ氏が大統領になっても、すべてがよくなるわけはありません。そうはいえども、あのアメリカで、黒人が、しかもビジネス・ロイヤーでない人権派弁護士が大統領になるなんて。人間も少し進歩するんだと久しぶりに感銘をうけました。アメリカでのお話しであって日本ではないのが、少し残念ですが。

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2008年11月 2日 (日)

韓国 国民参与裁判について

■韓国 ソウル訪問

P1000015 ソウル中央地方法院

先日、韓国を訪れてソウル中央地方法院(=ソウル中央地裁)に訪問して、法院長(地裁所長)、刑事部の主任法官(裁判官)や、韓国の弁護士から韓国の国民参与裁判の実施状況をお聞きする機会を得ました。

■韓国の国民参与裁判

ノ・ムヒョン大統領の下での司法改革作業で施行された陪審制に似た制度です。

9人の陪審員が一般国民から選出されて有罪・無罪を評議した上で、評決する。
裁判官(法官)は、この評議に関与しない。ただし、陪審員が全員一致に至らない場合には、裁判官の意見を聞いた後に、多数決により評決する。
・陪審員は量刑についても評議して意見を述べる。
陪審員の評決(有罪・無罪、量刑)は裁判所を拘束しない。
・裁判所は陪審員の評決と異なる判決をする場合には理由を述べなければならない。
被告人は国民参与裁判か、通常の裁判官裁判を選択することができる。
・参与裁判対象事件は、殺人、強盗、強姦などの重大暴力犯罪と収賄事件等。

陪審員制度に近いですが、評決に拘束力なく、被告人に参与裁判か通常裁判かの選択権が認められることが特徴です。

日本の裁判員裁判は、裁判官と裁判員がともに合議体をつくり評議し評決をします。被告人に選択権がありません。

■韓国国民参与裁判の運用について

ソウル中央地方法院で、法官から次のような説明を受けました。

・韓国では、10月までに全国で46件の参与裁判の判決が出された。
・参与裁判を選択する率は非常に少ない。
・実際には、200件の参与裁判申立がなされ50件が参与裁判となっている(対象外事件の申立だったり、排除されている)。
・今までの46件のうち2件が裁判官が陪審員の評決と異なる判決を下した。
・その2件のうち1件は、陪審員は、3訴因のうち、2訴因を有罪、1訴因を無罪としたが、無罪について、法律の解釈を誤ったとして有罪とした。もう1件は、量刑が重すぎるので、量刑を軽くした。
・控訴率は80%で、破棄率は25%。

■ソウル各裁判所での参与裁判

ソウルは人口約1000万人(韓国の人口は約4800万人)。ところが、ソウルの裁判所(中央、東西南北の5地裁がある)では2件しか参与裁判がない。他の地裁に比較しても、参与裁判率は異常に低い。裁判官は、その原因について、次のように説明していた。

①弁護士は参与裁判について否定的である。弁護士が被告人に参与裁判でないほうが良いと説得して取りさげたケースがある。

②弁護士が参与裁判を嫌う理由としては、手間がかかるからということがある。

③被告人が参与裁判を躊躇する理由としては、量刑が重くなると危惧していると思われる。

■韓国弁護士の意見

ソウル弁護士会の弁護士に、国民参与裁判を被告人が選択しない理由を聞いたところ、次のような感想を聞かせてくれました。

「量刑が重いという不安が大きいために被告人が参与裁判を選択しないのが真相」「弁護士が非協力的なのではない。」そうです。

陪審員の量刑は、それまでの裁判官の量刑よりも重くなることは、裁判所も弁護士も指摘していた。

韓国の弁護士の一人は、「韓国の司法改革は、アメリカ一辺倒で短絡的だ。日本の裁判員裁判は実施まで長期間議論されたが、韓国ではアメリカが陪審制であるということで、一挙に議論もなく導入された。僕は何でもアメリカが良いという改革は反対だ。僕はアメリカは嫌いなんだ」と言っていました。日本の裁判員裁判反対派と同じことを言うので、笑っちゃいました。民族主義者は、どこの国でも一緒じゃあ。

■ソウルの裁判所宣伝ビデオ

ソウル中央法院で、裁判所の宣伝ビデオ(DVD)を見せて貰いました(日本語版)。

国民の皆さま、どうぞ、裁判所にお越し下さい。けっして無駄足だとは感じさせません。心配事を解決する道を提供します。がっかりさせません。

まるで、証券会社か農協の宣伝のようでした。

■日本の最高裁と対称的

以前、労働審判施行にあたって、日弁連が最高裁と協議をしたとき、「裁判員裁判に膨大な宣伝費を投入するのであれば、労働審判ももっと裁判所が宣伝して欲しい」と要請したことがあります。

すると、日本の最高裁担当課長は、「裁判員は裁判所に強制的に来て貰うのであるから理解を促進するために宣伝をする。他方、労働審判は紛争事件であるから、労働審判を宣伝するということは、事件を起こして裁判所に来てくれと言うことになるから、そのような宣伝はいかがなものか。」という旨を答えていました。

「お客さまに満足していただきます。」という感じの韓国の裁判所と、日本の裁判所とは対照的です。ちなみに、今は最高裁は労働審判を注目しているそうです。この手法を一般民事にも導入できないかと考えているのかもしれません。

■韓国の司法試験とサッカー事情

私は、2002年の日韓ワールドカップて韓国で試合を観たことがあります。ちょうど、光州市で、韓国対スペイン戦を観ました。ホン・ミョンボのPKをこの目で観たと、話したところ、韓国の弁護士とサッカー談義と司法試験の話になりました。

今年、「韓国では裁判官任官の7割が女性」であったとのこと。成績順に任官者が採用されるから女性の方が成績は良いから、任官者の7割が女性となるということです。2008年の任官者は、2006年のドイツワールドカップ年の司法試験合格者だとのことです。

韓国の弁護士は、「韓国ではサッカーのワールドカップがあると、男は試験勉強をせずに酒ばっかり飲み、サッカー応援にあけくれる。だから、ワールドカップイヤーは、女性が大量に合格し、必然的に任官者も女性が多くなる」と説明してくらました。

さらに、その弁護士は、「ワールドカップイヤーに司法試験に合格した男はダメだ」というのです。なぜかと問うと、「男の癖に、サッカーを応援しないで、司法試験の勉強をやっているようなヤツはダメ男だ」というのです。(笑い)

やはり、韓国人のサッカー熱はあついです。

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2008年10月28日 (火)

読書日記 「労働再規制」五十嵐仁著 ちくま新書

2008年10月10日 発行、2008年10月18日読了

■「財界」内の二つの流れ

「新自由主義」路線(宮内義彦オリックス会長ら)と、旧来型の「日本型経営」路線(今井敬新日鐵会長ら)の対立を軸としながら、労働に関する規制改革を概観しています。

財界内に、この二つの流れがせめぎ合ったのはそのとおりだと思います。

これは、「重厚長大」の重工業から「軽薄短小」の電機産業に移行して成長してきた「日本型経営」企業が、IT情報技術革命によって金融・情報産業が次世代の成長産業になり、このような「先進企業」(金融・情報産業)に交代していくプロセスなのでしょう。

もっとも、財界内部としては、どっちが勝ったということではないのではないかと思います。高度経済成長を支えてきた大企業連合は、グローバル経済と新自由主義路線を受け入れつつ変容しながら統合したのではないかと思います。

奥谷禮子氏のような新自由主義を「戯画化」した人物が主流になっていれば、労働側も攻めやすいのですが、財界総本山はもっと利口なようです。日本型経営を基本にしつつ、新自由主義的な労務管理を慎重に導入しつつあるように見えます。

■2006年の反転

著書は、その政治的現れが小泉政権であったとし、2006年を境に、新自由主義路線はほころびを見せ、「潮目」が変わり、労働再規制の反転攻勢がはじまりつつあると言います。

確かに、ここ数年のマスコミの変わりようは目を見張ります。それほど、日本社会が大きなダメージを受けているということなのでしょう。

■ある世論調査

同書に山口二郎・宮本太郎「日本人はどのような社会経済システムを望んでいるか」(世界2008年3月号)という世論調査の結果が紹介されています。結果は次のようなものです。

「アメリカのような競争と効率を重視した社会」を望む
   全体6.7% 民主支持者5.5% /自民支持者6.3%

「北欧のような福祉を重視した社会」を望む
   全体58.4% 民主支持者61.3% 自民支持者50.3%
 
「かつての日本のような終身雇用を重視した社会」を望む
   全体31.5% 民主支持者31.5% 自民支持者41.4%

高福祉高負担の北欧福祉型社会を、旧日本型より、多くの人が支持していることに驚きました。アメリカ型「競争」社会も嫌ですが、今までの日本型「企業談合」社会もゴメンということでしょう。なかなか興味深い調査です。

民主党の政策も、新自由主義政党から社会民主主義的な政策に変わりつつあるようですから。これは、政治的・風見鶏的「変節」であって、本心からではないのではと心配に思いますが・・・・。でも、総選挙の結果、大きな変化がおきることを期待しています。

■金融危機、そしてリストラの津波が

とはいえ、現在の金融危機により大不況がはじまるようです。1985年の円高直後、また、1990年のバブル崩壊直後のように、またまた人員削減の大リストラがはじまるでしょう。

1985年 ブルーカラーの中高年労働者が「雇用調整」されました。

1990年 全産業のホワイトカラーの中高年管理職が「リストラ」され、そして若者は正社員で雇用されなくなり、非正規労働者層が激増した。

2008年 この間、ふくれあがった「非正規労働者」が真っ先にリストラされるでしょう。つまり、若者たちの再受難です。彼ら・彼女らの「仕事」がなくなる。

この局面で、労働運動が頑張れば、労働運動が再活性化するチャンスなのかもしれません。労働組合には、不退転の決意で頑張って欲しいものです。

ワーク・シェアリング、積極的労働市場政策、そして同一価値労働同一賃金を実現する労働運動や労働政策が本当に求められる時期になったと思います。

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2008年10月25日 (土)

弁護人中傷による自白採取手法

■神奈川 競争入札妨害弁護権侵害を認め、国に賠償命令-横浜地裁

 検察官が取り調べ中に「弁護過誤だ」などと告げ、弁護権を侵害されたとして、妹尾孝之弁護士(横浜弁護士会)が国に150万円の賠償を求めた訴訟で、横浜地裁は24日、10万円の支払いを命じた。宮坂昌利裁判官は「容疑者との信頼関係を破壊する言動で、弁護士の接見交通権を実質的に侵害しており違法」と指摘した。妹尾弁護士によると、取り調べ中の弁護士批判を違法としたケースは「非常に珍しい」という。

 判決によると、妹尾弁護士は06年に競売入札妨害事件で逮捕された神奈川県秦野市元課長(52)の私選弁護人。受任後に元課長が自白調書の署名拒否に転じると、横浜地検の担当副検事は「弁護士は責任とってくれないよ」「洗脳されてるんじゃないの」と述べた。

 宮坂裁判官は「ルール違反と言わざるを得ない」と批判した。

  毎日新聞 2008年10月25日 東京朝刊http://mainichi.jp/select/jiken/news/20081025ddm041040051000c.html

■検察官の常套手段(伝統的な自白採取手法)

警察官や検事は、被疑者に対して、「お前の弁護士は、人権派・革新系だからやめておけ」とか、「お前の弁護士だって、お前を無罪だなんて信じていないぞ」とか、「弁護士なんて金儲けだけが目的だから気をつけろ」とか言いたい放題です。私が、弁護を担当した事件での実際です。

もっとも、警察・検察なんて、その程度の連中だと思い裁判までやとうとも思いませんでした。(カスを相手に裁判するだけ労力の無駄)。ですから、横浜の妹尾弁護士の大いなる努力と成果に拍手を送ります。

弁護士が相手方当事者に対して、直接に「お前の弁護士の方針が間違っている」「マッチポンプで、お金をむしりとられているだけだ。」などと言ったら、弁護士倫理違反(弁護士基本職務規程71条、5条、52条)になります。

他方で、捜査の世界では、弁護人を非難して、被疑者と弁護人の信頼関係を破壊して、自白をむしりとるのは、捜査機関(検察官を含む)の伝統的な捜査手法です。

警察はそもそもその程度ですが、この手の検察官は法律家としての資質がないと言うべきですね。

とはいえ、岡山の弁護士(学者→副検事→検事を経験し、司法試験も受けず、司法修習もしていない「ヤメ検」です)が、国選の接見回数を水増しして実際よりも多くの国選料を取得していたという事件が発覚しました。残念ながら、弁護士にも、とんでもない人がいます・・・。

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2008年10月19日 (日)

読書日記「教育格差の真実」尾木直樹/森永卓郎 小学館新書

(2008年10月6日発行 10月15日読了)

尾木直樹氏と森永卓郎氏の対談集です。新書の対談集ですから、通勤電車の往復で読めてしまいます。

■尾木氏の発言で驚いたこと

それよりも驚いたのは教育評論家の尾木氏の次のような話です。

尾木 …学力観が変わったことが、学力低下の原因や背景として非常に大きいです。… 学力低下の中心的原因は、学力観が変わって「関心、・意欲・態度」がどのようであるかということが前面に出てきたことによると思います。それまでは、テストで中間も期末も満点をとったら、授業中の態度が悪くても、森永さんみたいに食らいついて嫌われていても、通信簿では「5」をもらうことができた。しかし、今はそれはあり得ないんです。…

森永 えっ ダメなんですか。

尾木 …「これは態度が反抗的だ。いちいち素直じゃない」と見る先生に当たると「3」になります。

尾木 …1993年、94年頃に中学校に入学した子が大学一年生に入ってきたときに、かなり変化を感じましたよ。やたら態度がいい。つまり、先生の前では態度を良くしているということが、今、中学校では当たり前になっちゃっているんですよ。…反抗的だと自分の内申点にひびくわけですから。だから先生に反抗するなんていうことはさらさら考えたことがない。これは実は、人間が精神的にいかにたくましく自立するのかという大きなテーマに対しては、深刻な問題なんです。

なんだか「にわかに措心しがたい」話しなのですが、都立校の先生の話を聞くと、こういう傾向にあるんだそうです。確かに、私の経験でも、最近の司法修習生はいやに素直で礼儀正しい人が多いですね。それに比較して、私たちの頃の学生や司法修習生、反抗的で生意気な人が多かったのは間違いない・・・・。

思春期に反抗を経験していないので、30歳すぎても、親をうらんで人を殺したなんて口走ったり、戦争になって丸山真男を殴りたいなんて言い出すヤツらが出てくるんでしょうね。

■自称「社会民主主義者」の森永氏の発言

森永氏の発言は、いままでいろんなところで発言したり、書いたりしていることと同じですが、いつものように真っ当なことを話しています。

森永 一夜にして何億円も稼ぐというような金融資本主義の時代は終焉を迎えるのではないか。真面目にものやサービスを生む時代が再びやってくると思うんです。

森永 ヨーロッパで同一労働同一賃金ができて、日本でできないわけがないと思っているんです。同一労働同一賃金の原則に違反したら、会社を罰すればいい。

森永氏の「罰すれば良い」という立論(労基法4条、119条1号にて既に男女同一賃金については罰則規定はあるのですが、これが実際に適用できない様々な問題があります。)は、いささか乱暴ですが、「格差社会」(本当は、「隔差社会」だと思います。)の是正のためには、同一価値労働同一賃金の原則を確立することが必要不可欠だと思います。

産業別・職種別賃金制度がない日本において、どのようにこの原則を広めて、妥当させていくのか。労働運動と労働法理論の緊急の大きな課題だと思います。

逆説的ですが、日本型雇用システム、年功序列賃金制度が崩れる、今からがチャンスなのかもしれません。

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2008年10月13日 (月)

読書日記 「入門 いまどきの経済」と「はだかの王様の経済学」 松尾匡著

「入門」は2001年5月発行(晃洋書房)。この副題には 「国家から市場へ、そして…… 」。「はだかの王様」は2008年6月発行(東洋経済新報社)。副題には「現代人のためのマルクス再入門」書かれています。

著者は、亡き置塩信雄教授の弟子だそうです。置塩教授は近代経済学が解るマルクス経済学者として著名でした。(置塩教授は、マルクスの「搾取理論」を数学的に証明したが、「利潤率の傾向的低下の法則」が成立しないことを数学的に証明したのだそうです。ちゅうことは、「資本主義は崩壊しない」ちゅうことでんな。)

一昔前(国家独占資本主義段階)には、右派の企業と左派の労働者が、どっちのために国家権力を使うのかを争ってきた。つまり、企業主義の開発体制か、社会民主主義的な福祉国家かという対立です。 ところが、1980年代半ば以降は、企業は市場化(民営化)を追求して、左派は国家の活用を追求して福祉国家路線を維持した。

労働者側は国家権力を労働者のために使おうとする。他方で、企業側は国家の規制(福祉国家)を解体して、市場化を推進しようとする。今は、こういう対立となっています。

でも、著者は世界自由資本主義(グローバル経済)になった現代において、国家権力を使って労働者のための経済政策を一国で実現することは不可能になったと考えているようです。

著者によれば、次の時代は、労働者は国家規制による保護ではなく、労働者=消費者=民衆が生産者とネットワークを作るという新しい社会経済システムが勃興してくると言います。 そして、IT技術の発達により、ニーズに基づく生産のネットワークが可能になったと言います。これと協同組合的生産事業体が合体すれば、「個々人が自分の判断で決定に参加して運営される、草の根の共同決定的参加型事業経済」ができあがり、これがマルクスの言うところの「アソシエーション」だそうです。現在でも、協同組合企業などで萌芽が生まれつつあるといいます。

亡き置塩信雄教授は、次のようにその著者で語っていました(「経済学はいま何を考えているか」大月書店・1993年発行)。

「あるものXが、社会的共有であるということは、そのXに関する決定が社会の全構成員によって掌握されていることでなければならない」

「ソビエト連邦をはじめとする「「社会主義」社会において、生産手段の社会的共有は実質的には存在しなかった。生産手段を用いての生産に関する決定は、社会の多数の構成員を排除して、一部の国家機関構成員によって独占的、集中的に掌握された。」

「新しい社会においては、社会の全成員が生産に関する決定に関与するのでなくてはならない。資本家階級に代わって、一部の人びとが社会的共有物であるとされた生産手段の国家的管理者であるということで、生産に関する決定を排他的に独占する社会ではあってはならない。」

その弟子である著者は、民主的な共同決定による経済をIT技術による消費者と協同組合的事業の連合体による「ネットワーク型経済」に期待をかけているようです。

しかし、著者は「はだかの王様の経済学」では、このような新しいアソシエーション型経済が開花するのは100年後、200年後になると書いています。

となると、そんな先の話よりも、現在の日本においては、国家を民衆の側が自分のために使えるかどうかという、一昔前の「福祉国家」路線の方がわかりやすい。

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2008年10月 5日 (日)

日弁連人権擁護大会 - 「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」

■富山の人権擁護大会
10月2日、3日、日弁連の人権擁護大会が富山にて開催されました。
第3分科会にて、「労働と貧困~拡大するワーキングプア-人間らしく働き生活する権利の確立を目指して-」と題してシンポジウムがありました。

日弁連は強制加入団体であり、会員には使用者側の代理人となる弁護士が圧倒的に多い。ですから、労働者と使用者が対立する労働・雇用問題を正面から取り上げることはあまりありませんでした。

しかし、年収200万円以下の働く人が1000万人を超え、「ワーキング・プア」が深刻な社会問題となったため、労使の対立を超えた、人権問題として、認識されはじめています。

■派遣労働問題は一部の問題か
経営側は、「派遣労働者の問題は、非正規労働問題のごく一部であり、非正規労働者の多数は家計補助的な主婦パートである。」とか、「日雇い派遣によってしか働けない労働者がおり、日雇い派遣を禁止すれば、失業してしまう。」との主張をしています。

女性の派遣労働者が、次のような報告をしていました。

「世界的大企業の電子部品工場に派遣で働いていた。同じ精密部品組み立て作業を続け、派2,3ヶ月すると頚肩腕となる。多くの派遣が身体を壊し、数ヶ月で辞めていく。しかし、その後、次々新しい派遣労働者が送られてくる。労災の防止する対策は何もとられない。派遣は消耗品扱いとされている。」

首都圏青年ユニオンの河添誠氏が、シンポの中で次のように強調していました。

「若い派遣労働者は、毎日長時間が働きながら寮費等が給与から天引きされて、月6,7万円にしかならない。期間が来れば、雇用が打ち切られる。多くの若者が誇りを奪われ、貧困に苦しんでいる。しかも、何万人という若者が、このような状態にいる。これを不安定雇用労働者の一部でしかないという言い分はおかしい。この実態こそ、すぐに改善すべきだ。」

今、若者の40%が不安定雇用にしか就職できていません。派遣労働者の問題は、一部の問題ではありません。このような派遣労働者の問題を放置しているシステムこそおかしいのです。派遣労働者の現状を改善せずして、「格差社会」や「貧困問題」を解決することができるはずがありません。

■満場一致の決議採択
日弁連人権大会では、満場一致で、「貧困の連鎖を断ち切り、すべての人が人間らしく働き生活する権利の確立を求める決議」が採択されました。労使対立が激しい、この問題で「満場一致」で決議されたということは特筆に値します。(第一分科会の憲法9条問題でさえ、満場一致にはなりませんでしたから。)
    
http://www.nichibenren.or.jp/ja/opinion/hr_res/2008_3.html

  1. 国は、非正規雇用の増大に歯止めをかけワーキングプアを解消するために、正規雇用が原則であり、有期雇用を含む非正規雇用は合理的理由がある例外的場合に限定されるべきであるとの観点に立って、労働法制と労働政策を抜本的に見直すべきである。
    特に、労働者派遣については、日雇派遣の禁止と派遣料金のマージン率に上限規制を設けることが不可欠であり、派遣対象業務を専門的業務に限定することや登録型派遣の廃止を含む労働者派遣法制の抜本的改正を行うべきである。
  2. 国は、同一または同等の労働であるにもかかわらず雇用形態の違いによって、賃金等の労働条件に差異が生じないよう、労働契約法を改正して、すべての労働契約における労働条件の均等待遇を立法化し実効的な措置をとるべきである。
  3. 国は、すべての人が人間らしい生活を営むことのできる水準に、最低賃金を大幅に引き上げるよう施策を講ずるべきである。
  4. 国は、偽装請負、残業代未払いなどの違法行為の根絶を図るため、これらを摘発し監督する体制を強化し、使用者に現行労働法規を遵守させるための実効ある措置をとるべきである。
  5. 国及び地方自治体は、社会保障費の抑制方針を改め、ワーキングプア等が社会保険や生活保護の利用から排除されないように、社会保障制度の抜本的改善を図るとともに、利用しやすく効果の高い職業教育・職業訓練制度を確立させるべきである。
  6. 使用者は、労働関連諸法規を遵守するとともに、雇用するすべての労働者が人間らしく働き生活できるよう、雇用のあり方を見直し社会的責任を果たすべきである。
    当連合会は、貧困の拡大に歯止めをかけるためには、労働問題と生活保護等の生活問題に対する一体的取り組みが不可欠であるとの認識に立ち、非正規労働者を始めとするすべての人が、人間らしく働き生活する権利を享受できるようにするため全力を尽くす決意である。

以上のとおり決議する。

      2008年(平成20年)10月3日  日本弁護士連合会

非正規雇用と正規雇用の格差を是正するためには、就労形態を超えて、「同一価値労働同一賃金の原則」を拡大することが求められていると思います。これが具体的にどのよう立法が考えられるのか。欧州のように産業別職種賃金が一般化していない日本の雇用社会でどのような法律が考えられるのか。今後の大きな課題だと思います。

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2008年10月 1日 (水)

17万件のアクセス

おかげさまで、アクセスが17万件を超えました。ありがとうございます。
5月から9月までの間でアクセスのトップ20は次のとおりです。


1) 日本マクドナルド店長残業代請求事件判決
2) 首都圏建設アスベスト訴訟提訴 08.5.16
3) 松下PDP事件-大阪高裁判決全文
4) 会社分割・労働契約承継法と「在籍出向」
5) 「蟹工船」と、秋葉原通り魔事件
6) 「左翼小児病」
7) 「風月堂」セクハラ事件判決と裁判官の「セクハラ感覚」
8) 成果主義賃金による降級・減額措置を違法とした東京高裁判決-マッキャンエリクソン事件
9) 法曹人口3千人増員の見直し
10) 合唱団員の労組法上の労働者性を否定
11) 共産党と社民党の「裁判員裁判」延期方針
12) 日本の自殺率-驚愕の国際比較
13) 労働審判制度施行1年
14) 労働者性に関する紛争(2)-手間請け大工労災事件、新国立劇場合唱団員地位確認事件
15) 裁判員裁判 模擬裁判での無罪
16) 首都圏建設アスベスト訴訟
17) 弁護士大増員時代-ドイツ弁護士事情
18) 労働審判と個別労働事件数が急増
19) 読書日記「裁判員制度の正体」西野喜一著
20) 裁判員裁判と労働者の「公休」

労働法関連と司法改革(法曹人口と裁判員裁判)へのアクセスが多いようです。


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2008年9月29日 (月)

中山成彬(前)国土交通大臣の「日教組ぶっ壊せ・ガン」発言と日教組の憲法理解

中山成彬という人は、何がそんなに日教組が憎いのでしょうか。

何でもかんでも日教組が悪いという観念を抱くというのは、ちょっと頭が偏りすぎて、まったく説得力がない。この人物は、物事を冷静に見ることができない人としか思えない。よくもこんな人物を大臣にしましたね。

このあたりの発言は、右派保守政治家が、ウケ狙いのパフォーマンスをしているのだと思っていました。が、彼らは、本気で、心底、そう思っているのですねえ。(せっかくなった大臣の椅子を棒にふったり、内閣にダメージを与えたりするのもじさないのですから。)
この人たちは、固執癖というかパラノイア的というか、病的な感じがして、これがキモイって感じですかね。

まったく、おつむが偏りすぎていて、「北朝鮮(共和国)」のイデオローグと同じに見えます。。。。まあ考えてみれば、同国は、戦前の神権天皇制・軍国日本のできの悪いコピーのようですから、両者の発想が似ていることに驚くこともないのかもしれません。

■他方、もっと驚いたのは、日教組の書記長が、テレビで、中山発言を批判して、「憲法21条の集会、結社の自由や表現の自由に反している」という趣旨の話していたことです。(ちなみに議員個人としては、中山センセイも一応、表現の自由を享受できます。大臣は国家機関ですから制約を受けて当然ですが。)

書記長は、なんで憲法28条の団結権保障と99条の公務員の憲法尊重擁護義務を言わないのでしょうか?

第28条 勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

こっちの日教組の書記長の発言の方がよっぽどビックリしました。日教組の憲法理解はどうなっとんじゃ? 

・・・ なんだか、中山センセイが心配されるほど大した組合でもないんじゃないかい?

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2008年9月17日 (水)

「風月堂」セクハラ事件判決と裁判官の「セクハラ感覚」

■毎日新聞 2008年9月11日 東京朝刊

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20080911ddm041040031000c.html

東京風月堂店長のセクハラ:2審は賠償命令、会社に170万円

菓子メーカー「東京風月堂」(東京都中央区)の契約社員だった20代女性が男性店長から言葉によるセクシュアルハラスメントを受けたとして、同社に約650万円の賠償を求めた訴訟で、東京高裁は10日、請求を棄却した1審・東京地裁判決(3月)を覆し、約170万円の支払いを命じた。宮崎公男裁判長は「店長の発言は受忍限度を超えている」と違法性を認定した。

 「キスされたでしょ?」などの店長発言について、判決は「性的に辱めるだけの言動で、名誉を公然と害した。女性は店長の下で働くことに恐怖を抱き、就労意欲を失った」と指摘した。女性は同社の経営店で販売を担当していたが、06年7月から休職し、今年3月に退職した。【銭場裕司】
 ◇東京風月堂の話
 内容を確認しておらずコメントできない。

■地裁判決と高裁判決の読み比べ

友人の石井逸郎弁護士(ウェール法律事務所)が被害女性の代理人を担当されていました。同事件の東京高裁判決と東京地裁判決を読ませて貰いました。東京地裁判決がどんな事実認定をしたのか興味を持って読みました。事実認定が違えば、結論が異なるのは当然ですので、東京地裁はどんんな事実を認定したのかを興味をもって読みました。

■東京地裁の非常識

東京地裁民事第16部の裁判官(単独)は、原告のほか、原告(女性19歳)の同僚であったパート従業員(女性)の2名と、加害者とされた店長を証人尋問した上で、次のような事実を認定しています。

店長は、「頭がおかしいんじゃないか」、「遊びすぎじゃないか」等の言い方で、原告に対し仕事上の注意、叱責をしていたことが認められるが、上記言動は、原告が店長の指示に従わなかったときの叱責、遊びすぎると勤務に差し支える、あるいは店舗で無駄話をしないようにとの注意、指導であって・・・

店長が原告の面前でエイズ検査を受けた方がいい旨の発言をしたことがあったことは認められるものの、職場における雑談の域を出ないものであることは明らか・・・

○証人(同僚の女性パート従業員)の証言及び陳述書には、店長は、原告に「秋葉原で働いた方がいい。」と言い、その後、別の従業員ことを指して「あの子の方が似合うか。」と言った旨の部分があるが、他方で、店長は、原告と同期の他店舗の従業員のことを指してその旨を言ったことがあるが、原告のことを指して言ったことはない旨証言していることに照らすと、店長の上記発言が、職場における雑談、軽口の域を出ないものであることは明らかである上、原告を特定して断言したものとは認めがたい・・・

○居酒屋で飲食した際に、店長が、原告について、「純粋そうに見えて何でも知っている。」と言い、他店の男性従業員のことで、店長が原告に「何かあったんじゃないの、キスされたでしょ。」「俺にはわかる。」と言い、原告が目に涙をうっすらためることがあり、同僚の女性パート従業員がその場をとりなしたことがあったことが認められる。

原告は下ネタを言っても大丈夫な人物であると判断しており、1月2日の打ち上げは、参加者全員が和気あいあいと飲んでおり、原告は、普通に話に乗ってきており、原告に目に涙を浮かべるという場面もあったものの、気まずい雰囲気になったことはなく、会合自体は悪い雰囲気ではなかったと・・・

○これらの発言は、酒席において、店長が職務上の注意や説教をする際に、それに関連して店長らの話が原告と近隣店舗の男性従業員との関係等に及んだものと推認されるのであって、発言の内容や態様が適切なものであったとまでは言えない部分があるとしても、酒席における上記発言が直ちに原告に対する損害賠償義務を生じさせるような違法性を帯びるものであるとまでは認めがたい。

以上は、実際の判決文の抜粋です(店長やパート従業員の実名はもちろん伏せています)。

■裁判官「セクハラ研修」の必要性

原告は、契約社員として高校卒業して入社したばかりの20歳代の女性です。彼女に対して、店長が、「エイズの検査の話し」をしたり、「近隣店舗の男性従業員との肉体関係を話題」にしたり、「秋葉原のメイド喫茶で働くのがどうだこうだ」などの発言をしていること、他の同僚の証言により、「原告が涙をためていた」という事実を、この裁判官は認定しているのです。

これを、「職務上の叱責や注意だ」とか、「酒席の上での軽口だ」などとして、違法性を否定した、この裁判官の感覚は常軌を逸しています。(被害者と同じ年頃の娘を持つ父親としては、これをセクハラでないとして損害賠償を棄却したこの裁判官に怒り心頭・・・と個人的感情を交えてはいけませんが・・・)

どうしても、あのストーカー判事のことを思い浮かべてしまいます。裁判官は大丈夫かと・・・。 裁判所にも多数の女性職員が勤務していますからねえ。

こんなセクハラ許容判決が東京地裁通常部で出てしまうのですね。ひょっとして、裁判官らは、セクハラ研修を受けていないのではないでしょうか。

裁判官は、全員、セクハラ研修を受けたほうが良いですね。

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2008年8月23日 (土)

裁判員裁判と労働者の「公休」

■裁判員となった労働者の「公休」について

共産党の市田書記長は裁判員に選出されると裁判に拘束されるとして次のように裁判員制度の実施延期を求めています。

裁判員になれば、最低でも三日間から五日間、場合によっては一週間や十日以上にもわたって、連続的に裁判員として裁判に参加しなければなりません。…「原則として裁判員を辞退できない」とされています。しかも、会社員の場合、それが「公休」扱いされるかどうかは、個々の企業の判断に委ねられることになっています。

この公休扱いされるかどうかは、「個々の企業の判断に委ねられる」という発言は法律的には誤りです。

■労基法7条

「公休」とは、普通は、いわゆる「休み」(休日)を意味しています。労働法的に言うと労働義務を免除された日ということです。
労働基準法7条は次のように定めています。

労基法7条
使用者は、労働者が労働時間中に、選挙権その他公民としての 権利を行使し、又は公の職務を執行するために必要な時間を請求した場合においては、拒んではならない。但し、権利の行使又は公の職務の執行に妨げのない限り、請求された時刻を変更することができる。

しかも、この労基法7条に違反した使用者は、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます(労基法119条1号)

「公の職務」とは、民事訴訟や刑事訴訟の証人、あるいは労働審判の労働審判員としての裁判所への出頭がこれにあたります。したがって、裁判員として裁判員裁判に参加することも「公の職務」になります。

ですから、労働者が、裁判員裁判に2日から3日かかることを理由に休日を請求すると、使用者はこれを拒むことができず、これを拒むと労基法違反として刑罰に処せられるのです。

■裁判員法100条

裁判員法は、労働者が裁判員に職務を行うために休みをとったことを理由に不利益取扱いをすることを禁止してます。

裁判員法100条
労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したことその他裁判員、補充裁判員若しくは裁判員候補者であること又はこれらの者であったことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

また、裁判員には日当が支払われます(裁判員法11条)。日当は1万円以下の範囲で定められると言われています。使用者が有給を保障する必要はありません。

■裁判員制度の円滑な実施のための行動計画

平成17年8月、裁判員裁判関係省庁等連絡会議でも、上記のような労基法7条や裁判員法11条の趣旨を徹底する具体的施策をとることが確認されています。

この行動計画の実施状況について毎年、報告されてますが、厚労省が通達を出したことや法務省や最高裁が労使関係者を対象とするシンポジウムでパンフレットを配布していると報告されています。

この広報活動がまだまだ不十分であるということですね。共産党のような労働者政党でさえ、労基法7条の存在を知らないのか、それとも意図的なのかは判りませんが、「公休扱いにならない」などと喧伝するくらいですから。

■労基法7条等の労働者の参加保護が知られていないことが裁判員裁判の延期理由になるか。

答えは簡単です。上記のとおり、労基法や裁判員法は、裁判員裁判への参加をする時間の活動を保障しているのですから、この趣旨を徹底することで解決するべき問題であって、延期の理由にはならないということです。

共産党の上記市田書記長の発言は、労働者は企業が認めない限り、裁判員裁判に休みをとって参加できないとの誤解を広げることになり、極めて不適切・無責任は発言だと言えましょう。

■「建前だけだ」との批判について

これに対して、「実際の使用者や労働者は、このような法律知識もなく、裁判員裁判に参加すれば使用者に嫌がらせをされる」という批判があります。

確かに、年次有給休暇さえ申請すると嫌がらせをされるのが日本の中小企業の現実であり、妊娠したら他の事由をこじつけて退職させられる女性労働者も珍しくないのが日本社会です。

でも、だから裁判員裁判は、「日本人や日本社会には向かない。」「日本の風土にあわない」かのような主張は、本末転倒だと思います。努力する方向が逆さまだと思っています。

■小沢民主党「裁判員は日本の風土にあわない」

予想したとおり、民主党も、裁判員裁判の見直しを言い出しました。小沢党首が、裁判員裁判は「日本の風土にあわない」と発言しています。

小沢民主党にとっては、「面倒な刑事裁判は裁判官にまかせておけば良い。自分は死刑判決なんかに関与したくない。TVのワイドショーで犯罪報道を見て、『極悪人は死刑にしろ』と喚く」のが「日本の風土」ということなのでしょうね。

しかし、民主党は、自らは裁判員法に賛成しながら、今さらこんな低レベルの放言をするなんて、無責任な政党です。こういう3野党には政権担当能力はないと判断せざるをえません。もっとも選挙では、こんな些末なスジ論なんてどうでも良いのでしょうが。

予想したとおりの総選挙向けての民主、共産、社民の放言と党利党略の顛末はいかに。。。。。

10月15日には、裁判員候補者予定名簿が地裁に送付され、11月頃には30万人に一斉に裁判員候補者予定者名簿に掲載されたとの通知が届きます。これと前後して、マスコミは、日本風土に合致した「怒濤」の「過熱」報道をはじめることでしょう。マスコミの本音は、裁判員裁判に反対(有罪前提報道や過熱報道が抑制しようとするのが司法関係者だから)ですから、これらの野党と一緒に、反対のネガティブ・キャンペーンをはることでしょう。

お粗末なことです。

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2008年8月16日 (土)

労働審判と個別労働事件数が急増

■裁判所の労働審判を含めた個別労働事件数の増加

最高裁が個別労働紛争事件数の推移について、労働審判を含めた速報を発表しています(2008年6月30日)。これによると次のとおり、裁判所の労働審判を含めた個別労働事件数が4000件を超えました。

■掘り起こし効果

労働審判が施行され、減少気味であった事件数が3000件から4000件に急増しています。労働審判について、仮処分や本訴が労働審判に移行しているだけだとの指摘もあったようですが、この統計数値から見れば、労働審判の掘り起こし効果は明確になりました。使いやすい司法制度を導入すれば、司法も利用されるということが証明されたと思います。

(件数)
年 度  H15  H16  H17  H18  H19
本 訴 2433 2446 2317 2006 2150
仮処分 704 627 626 424 377
労働審判 0 0 0 1163 1563
合 計 3137 3073 2943 3593 4090

Toukei

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2008年8月11日 (月)

「労働契約」問題解決・労働法第1巻 旬報社

■問題解決・労働法シリーズ・第1巻「労働契約」

8月11日、旬報社から問題解決・労働法」シリーズ第1巻として、「労働契約」を出版します。私が書いた第1巻は、労働契約法の制定を念頭においた本で、労働契約の成立、変更を扱うものです。

Roudoukeiyaku2

http://www.junposha.com/catalog/product_info.php/products_id/467

このシリーズは、10巻物です。労働弁護団の弁護士が著者になっています。

http://www.junposha.com/catalog/news.php/news_id/15

労働契約法は、労働側でも賛否両論があった法律です。私は、公正な働くルールを形成する一歩として評価する立場から論じています。労働契約法は、即効性はないが、労働契約法理にボディーブローのような形でじんわり効いてくる法律ではないかと思います。労働契約法を生かすも殺すも、法律をいかに実践で活用できるかにかかっています。

■変更解約告知と「労使対等合意原則」(労働契約法3条1項)

労働契約法の活用例として、「変更解約告知」に影響をあたえる条文があると思います。労働契約法3条1項の労使対等合意原則(「労働契約は、労働者及び使用者が対等の立場における合意に基づいて締結し、又は変更すべきものと